八条学園怪異譚
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第三十四話 眼鏡とヘッドホンその五
「保育園にいる用務員の家族がいて」
「その家族の子供ですか?」
「子供が見てですか」
「そうなの、それが昭和三十年代の話で」
そこでだというのだ。
「座敷わらしと校庭とかで遊んだ子供もいてね」
「それ先輩もですよね」
「そうですよね」
「ええ、そうよ」96
その通りだとだ、茉莉也は二人に答えた。
「よく遊んだわ」
「その頃は見えてたんですね、座敷わらし」
「ちゃんと」
「皆子供の頃は見えるのよ」
真剣な顔での言葉だった。
「けれどそれがね」
「成長するとですね」
「見られなくなるんですね」
「そうよ、大体小学五年まで見えてたわ」
茉莉也もこう話す。
「その頃まではね」
「じゃあやっぱりお赤飯食べてからですね」
「それからは」
「そう、見えないのよね」
「じゃあ先輩もですね」
「その背丈でも」
「小柄なのは事実だけれど」
茉莉也は自分の背には特に何も思っていない、むしろチャームポイントとさえ思っている。それでこのことはお互いに気兼ねなく言えた。
しかしその背は意識していてこう言うのだった。
「関係ないのよ、この場合は」
「身体が大人なら、ですね」
「座敷わらしは見えないんですね」
「そうよ、あんた達と同じよ」
二人を少し見上げて答える。
「そこはね。けれどあんた達も背は」
「そんなに高くないです」
「私はっきり言って小さいですよ」
聖花は一六〇あるかないか、愛実は一五五だ。今の基準ではとても高いとは言えない背丈であることは二人共自覚している。
「ですから特撮の俳優さんとかの背丈聞いてびっくりします」
「普通に一七五超えてる人多いですよね」
「仮面ライダーとか戦隊の人は皆大きいわよ」
茉莉也もそのことを知っていて言う。
「私なんかつむじ見られるわよ」
「そこまで大きいですよね」
「それが普通ですからね、あの世界は」
「細川茂樹さんも大きいわよ」
かつて仮面ライダーの主役を務めたことがある、歴代主役ライダーの中で演じた当時の年齢で最高齢だった。
「あの人もね」
「そういう人の背を聞いたらちょっと」
「びっくりします」
「野球選手はもっと大きいわよ」
「ですよね、一八〇普通ですから」
「助っ人で二メートルの人いますし」
「アメフトやバスケはもっと凄いわよ、ラグビーもね」
こうしたスポーツは実際に野球選手よりまだ長身の選手が多い、アメフトやラグビーはそこに体格も加わる。
「まあそういう人達は特別で」
「普通の人は、ですね」
「やっぱりそこまでは」
「そうよ、まあ話を座敷わらしに戻すけれど」
ここでだ、茉莉也は境内の方を見た、そして二人にこう言うのだった。
「ねえ、今からね」
「今から?」
「今からっていいますと」
「あんた達時間あるの?」
二人に顔を戻して尋ねもしてきた。
「部活あるの?」
「はい、ちょっと位なら」
「ありますけれど」
「折角だしお茶飲んでいく?お抹茶ね」
茶はこれだった、茶といっても色々あるが本格的である。
「それ飲む?」
「あっ、お茶ですか」
「それをですか」
「どう?私お酒だけじゃなくてお茶も好きなのよ」
二人に誘う顔で尋ねる。
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