ストライクウィッチーズ1995~時を越えた出会い~
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第九話 アドルフィーネ・ガランド
前書き
BF3の戦闘機操作は難しい・・・背後をとって機銃を当てるのがいかに大変か。
ウィッチはいとも簡単にやってますが、ある種神業的なテクニックなのかも。
ところで艦これを始めようとしたら新規受付を中止せざるを得ないほどアクセスが集中してるとか。
ドンだけ人気なのやらw拙者も早いところ島風ちゃんペロペロしたいれす^p^
――アドルフィーネ・ガランド
カールスラントはもとより、扶桑においてもその名を轟かせる大エース。
世界各国のエースらと比較しても決して遜色ない戦果を持つだけでなく、現場の意見や状況を的確に判断できる優秀な指揮官として数々の激戦を戦い抜いた。ジェットストライカーに対して並々ならぬ関心を抱き、一線を退いた後も自身の創設した部隊で積極的に試験を行ったという、後世における影響も大きかった偉大なウィッチ。
まさに雲の上のような存在が、今和音の目の前に立っていた。
「久しぶりだね、ミーナ。それに坂本も。魔眼の扱いが随分巧くなったみたいじゃないか」
「お久しぶりです、ガランド少将」
「その節は大変お世話になりました」
それだけではない。
かの有名な501部隊の隊長格2名を前にして、緊張するどころかまるで自室のようにリラックスしているではないか。まるで友人と雑談でもしているかのような気負いの無さに、和音は驚きを通り越して眩暈さえ覚えたほどだ。
「紹介が遅れたわね。こちらはアドルフィーネ・ガランド少将。私と同じカールスラント空軍のウィッチで、501の再結成にも力を貸してくれたの」
「お、沖田和音であります! 扶桑皇国出身で、階級は少尉です!」
「あっはっは! 元気があっていいじゃないか。噂通り、面白そうな素材のようだ」
快活に笑うガランド。とても軍の上級将校とは思えない。
この気さくさと、経験に裏打ちされた指揮能力こそが、彼女を人望ある将校へと押し上げている。
「……ふぅん、話に聞いたときは宇宙人か何かを想像したんだが、案外かわいい子じゃないか」
「へっ!?」
興味深そうにしげしげと和音の顔を覗き込んでいたガランドはそう言うと、パンパンと手を叩いてミーナを呼んだ。さすがに少将というだけあってその態度も堂に入ったものだ。
「あー、沖田。今日ガランド少将に来てもらったのは他でもない。お前と、お前のユニットの処遇についてだ」
「なにか、決まったんですか?」
咳払いをした坂本が言う。上層部に話が言っているという事なら、なにがしかの処遇が決定され、それを伝えに来たのだろう。和音はそう思った。
「それについてはガランド少将から直接お話してもらう。……少将、よろしいですか?」
「ああ、かまわないよ坂本」
普段はミーナが座るソファにどっかりを腰を沈めてガランドは言った。おもむろにジャケットのポケットを探って煙草を取り出すと、ちらりとミーナに視線をやってからマッチの火を近づける。大きく一服して紫煙を吐き出したところで、ガランドはようやく和音に向き直った。
「――さて、沖田和音少尉、だったかな?」
「はい」
「君の事は一応ミーナと坂本から聞いているよ。未来から来たウィッチ、だとね」
「………………」
泰然と座るガランドに向き合う和音。ただ向き合っているだけなのに、感じるプレッシャーに押しつぶされそうだった。
「正直なところ、君の処遇に関して私も取るべき道を決めかねている」
「――――っ!!」
「なにしろ、君が未来人であるという決定的な証拠はないんだ。……ただ一つ、あのユニットを除いてはね」
「……ジェットストライカー、ですね」
「その通り。機体に関しての報告も受けているが、アレだけはどう考えても現行技術の産物ではないだろう。そもそも、ジェットストライカーだってようやくエンジンの開発にめどがついたところだ」
口元の煙草をくゆらせながら言うガランド。何か言いたげなミーナを視線だけで黙らせると、やおらガランドは身を乗り出してこう和音に持ち掛けた。
「そこで、だ。わたしから君に提案がある」
そう言ってガランドは一旦言葉を切ると、和音の反応を窺うように言った。
「――君の処遇を、君自身で決めてみる気はないか?」
「はい……?」
これには流石の和音も瞠目した。どんな通告をされても受け入れる覚悟を固めていたつもりだったが、まさか逆に自分自身で処遇を決めろなどとは……しかし、そこまで考えた時に和音は気がついた。
結局のところ、自分はこの時代でどうしたいのだろうか――
何よりも大切な筈のそれを、思えば一度も考えていなかった。
だから、和音はガランドの提案に対し咄嗟に答える事ができなかった。
「おや、まさか自分がこの先どうしたいのかを考えていなかったわけかい? そんなことはないだろう?」
「そ、それは……」
まるで和音を試すように鋭く追及してくるガランド。
坂本とミーナは依然として何か言いたげな表情だが、ガランドは決して口を挟ませない。
(わたしは……わたしは……)
みんなを守りたくて、自分はウィッチになった。
だけど、この時代に、和音が守ろうと思った〝みんな〟はいない。
同時に、ともすれば未来を変えてしまいかねないイレギュラーでさえある。
「君のこれからは君自身が選ぶんだ。わたしは、何も強制するつもりはないよ」
「う…………」
だけど、本当にそうだろうか?
和音はこの時代に来て出会った〝みんな〟を思い出す。宮藤も、リーネも、ペリーヌも、501の誰もが和音の仲間だ。それを守ろうと思うのは、ウィッチとして当然のとこではないだろうか?
未来を変えてしまうかもしれない――だけど、それを言うなら自分はもう何度も過去に干渉している。そもそも、この時代にやって来てしまった事自体がイレギュラーなのだ。
――ならば。
ウィッチとして、自分が取るべき道はただ一つだ。
「……ガランド少将」
「なにかな、沖田少尉」
「一つだけ、お願いがあります」
「――いいだろう、言ってみなさい」
依然として鋭い眼光を向けたままガランドは言った。
その瞳を正面から見据え、和音は大きく深呼吸してから大きな声で願いを口にする。
「どんな仕事でも引き受けます。だから、私をウィッチでいさせてくださいっ!!」
ウィッチでいたい。誰かを守れる存在でいたい。それが、和音の本心だった。
すると――
「あっはっはっはっは!! 合格だ、沖田少尉」
「えっ……?」
「うむ、さすがは扶桑のウィッチだな!」
「ふふっ、沖田さんらしい良い答えだわ」
突然、痛いほどの緊張に包まれていた司令室に笑い声が弾けた。
和音はわけがわからず慌てるばかりで、ようやく息をついたガランドがタネを明かす。
「いや、君を試すような真似をしてすまなかった。まあ座ってくれ」
「はぁ……」
示されるまま椅子に座ると、ガランドは話し出した。
「君の処遇に関しての心配はいらない。既に坂本が手を回しているからね。だから君は、誰に何を憚ることもなく此処――第501統合戦闘航空団の一員として居ていいんだ」
「あ、ありがとうございます!!」
「今日私がここに来たのは、一つは君が信頼に足るかを確認するため。そしてもう一つがジェットストライカーについてだ」
一旦言葉を切ったガランドの後を坂本が引き取って続ける。
「一応、お前の原隊は横須賀の海軍ウィッチ部隊にしておいた。そこから私と一緒に501に来たことになっている。痛くもない腹を探られることはないから安心しろ」
どうやらすでに身元についての根回しは済んでいるようだった。
残る懸案事項はジェットストライカーのみとなったが、今回の案件がどうもそれらしい。
「単刀直入に言おう。あの機体をカールスラントでテストさせてくれないか?」
「私のF-15を、ですか?」
「ああ。今後の開発に少しでも弾みをつけたいんだ」
この提案に、和音は戸惑った。たしかに、機体のテストによって得られる情報があれば、開発に大きな弾みをつけることは可能だろう。しかし、そう簡単に渡してしまっていいモノなのかどうか。こと先端技術、それも未来の産物とあっては、利権や特権欲しさに飛びついてくる輩だって多い筈なのである。
「――知っての通り、欧州は激戦区だ。先立っての戦闘で504部隊が大きく被害した今では、501が欧州防衛に大きな役割を担っている。わたしは、使えるものならなんだって使いたいんだ」
「ガランド少将……」
和音はしばし黙考する。この時代において、扶桑空軍の隊規や機密保持などの制約は全て意味を持たなくなってしまっているが、おいそれと渡すことはできない。理屈云々を抜きにしても、愛機を他人の手に預けるのはやはり気が引ける。ガランドを含む三人が注視する中、考えをまとめて和音は口を開いた。
「一つだけ、条件があります」
「なんだい?」
「ガランド少将が直接ご自分でテストをなさってください」
これには流石のガランドも驚いたようだった。身を乗り出してワケを問う。
「それはつまり、わたしの部隊でテストしろ、ということかな?」
「もちろんそれもありますが、ガランド少将自身にもテストして頂きたいのです」
「……それはなぜだ?」
「一つには、直接体験したほうが得るものが多いと言う事。二つ目は、誰とも知らない人に機体を預けたくないこと。そして三つめが――」
そこまで言って和音は少しばかり遠慮がちに言葉を継いだ。
「その、ガランド少将はやっぱり空が好きなんじゃないかなぁ、って思ったので……」
途端、キョトンとして成り行きを見守っていたガランドが腹を抱えて爆笑する。
「はははっ!! そう来たか! うん、いいよ。私が直接テストしよう。ただ、ここでは無理だな。一度、本国の実験部隊に持ち帰らんことにはどうにもならない。なに、上の連中は私が黙らせるさ」
どうやらガランドも納得がいったらしい。
さっと席から立つと、煙草を灰皿に押し付けてドアの方に向かう。すぐにでも機体を持ち帰りたいのだろう。どこの馬の骨とも知れぬ将校に機体や情報を渡すのは嫌だったが、この人なら信頼できる――和音はそう思った。
「さっそくで済まないが、機体を貰っていくよ。テストが終わって、そうだな……2週間後にはひとまず君の下に返還する。それでいいかな?」
「構いません。ただ、万が一壊れた際には整備も修理も不可能です。それを理解しておいてくださいね?」
胸に刻んでおくよ、と言い残して、ガランドは司令室を出ていった。視察や訪問に長ったらしい時間をかける文官寄りの将校とは違う、何事にも行動的な彼女の性格がそのまま表れているようでもあった。
「……渡してしまって、良かったのか?」
「はい。どのみち、いつまでも隠しては置けないでしょうから」
坂本の問いに答える和音。
「そうか、お前がいいならそれでいい。以後の訓練では紫電改を使うとしよう」
「了解です」
かくして、未来の産物であるF-15は、一時的にカールスラントの手に渡ることになった。
その成果が目に見える形で和音たちの目の前に現れるのは、もう少し先の事である――
後書き
ちゃんとユニットは帰ってくるのでご安心を。
多分おまけつきで帰ってきます。
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