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カレーのちライス

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第六章

「ちょっとね」
「一回作ってみる?」
「そうね、白い御飯に麦入れるだけよね」
「お店にあるね」
「それじゃあね」
 こうしてその週の金曜日に早速麦飯を炊いてそこにカレーをかけて食べてみた。すると。
 いけた、少なくともまずくはなかった。一緒に食べていたお父さんとお兄ちゃん外食関係以外の場所で働いている二人にも好評で。 
 お母さんもだ、こう言った。
「いけるわね」
「ええ、そうよね」
 私もお母さんに頷いて答えた。麦飯のビーフカレーを食べながら。
「これもね」
「麦飯は冷えたらべちゃべちゃするらしいけれど」
「じゃあお店には出せないかしら」
「出しにくいかもね、けれどね」
「それでもね」
「美味しいわ」
 お店に出せるだけのものはあった、確かに。
「それに白米と違ってね」
「栄養もあるわよね」
「それも大丈夫よ」
「だったら」
 それならだった、私にしても。
 麦飯のカレーもありだった、けれど麦飯はお店には出しにくい。それでどうするべきかと考えていた。 
 そのうえで家の夕食の食材を買いにスーパーに出ていた時にだ、その麦のところを見た。そこには麦だけではなかった。
 餅米に他には雑穀と言われるものもあった、麦だけではなく稗や粟まで入った所謂五穀や十六穀だ。それを見てだった。
 私はそうした雑穀が栄養の塊であることも知っていた、やはり大学で学んだことだ、それで今度はだった。
 その十六穀を入れた御飯でカレー、これまたビーフカレーで食べてみた。これもだった。
 美味しかった、しかもだ。
 麦飯と違って店にも出せた、八条フードの加工した十六穀ならだ。
 それでだ、私は美沙子にこう言った。その十六穀の御飯のカレーを食べてから。
「いいカレー見つけたから」
「ひょっとして総務部長の前のお話の?」
「そう、それね」
 それからくることもだ、私は話した。
「それ作ってみたのよ」
「それどんなの?」
「ちょっとお昼開発部門に来てくれる?」
 私が働いているそこにだというのだ。
「そこでそのカレー出すから」
「そう、それじゃあね」
「ええ、食べてみて」
 こう言って彼女を誘ってだった、私はそのカレーを食べてもらった。するとその感想は。
「いいじゃない、このカレーも」
「そうでしょ」
「しかもこれだと栄養もあるしね」
「でしょ?それじゃあね」
「このカレーいけるわよ」
 美沙子は私に笑顔で言ってくれた。
「お店に出してもね」
「美味しくてしかも栄養満点でね」
「そうよね、白い御飯だと澱粉しかないけれど」
「これならね」
「他の栄養もあるから」
 美沙子は満面の笑顔で私に言う。
「いいじゃない」
「じゃあ総務部長にも食べてもらってね」
「それでね」
「うん、お客さん達にもね」
 美沙子とこう話してだ、そしてだった。
 総務部長も笑顔になった、そして商品としても好評だった。私が開発したカレーの中でも最大のヒットになった。
 ここで私はわかった、カレーライスは確かにカレールーも大事だ、これがなくてはカレーライスにはならない、絶対に。
 しかし御飯も大事なのだ、それもなのだ。
 そのことをだ、高校生の時に話したことも踏まえて家でお母さんに話した。
「カレーライスてどっちもなのね」
「あんたが高校生の時に話してたことよね」
「うん、カレーだけじゃなくてね」
「御飯もね」
「あの時はどっちがより好きかって話だったけれど」
 そうした意味では違っている話だ、だが根は同じだと思って言った。
「どっちも同じだけ大事なのね」
「だからカレーライスなのね」
「カレールーがないとカレーじゃないしね」
「ライスがないとカレーライスじゃないから」
 そうした意味でもだ、両方共だった。
 私はこのことがわかってだ、こう言った。
「どっちも大事なのね」
「栄養の意味でもね」
「そうなのよね、それがわかったわ」
「カレールーだけでも不完全で」
「御飯だけでもね」
「そうよね、どっちもね」
「欠かせないものよね」
 お母さんと話してこのことを確認した、カレーライスはカレーだけで、御飯だけで成り立つものではない。それは味のことでも栄養のことでもだ。このことがよくわかった、子供の頃からカレーを食べて大人になって働いてようやく。


カレーのちライス   完


                 2013・8・3 
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