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戦国異伝

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第百三十話 南蛮具足その六

「既に浅井の大殿は押さえてある」
「あの大殿を動かす」
「ではその様に」
「お願い申す」
「うむ、ではな」
「そうさせてもらおう」
 このことは彼等の中でまとまった、だが。
 四人とは別の声がしてきた、その声が言うには。
「しかし気になるのは」
「うむ、松永だな」
「松永久秀だな」
「織田信長と共に出陣しているのはいい」
 松永も織田家の家臣の一人として扱われている、まだ殆どの者が信じていないが信長は色々と仕事をやらせている。
 今は信長に従い越前に攻め入ろうとしている、だがだちうのだ。
「しかし何も言って来ぬからな」
「あれは何かあるのでは」
「松永めは何かと考えの読めぬ男です」
「闇の中で動くのが我等にしても」
「それでもですな」
「この数年ここには全く来ておりませぬ」
 闇の中にだというのだ。
「一度もです」
「織田家に入ってからというもの」
「一体何を考えておるのか」
「わかりませぬな」
「それじゃ」
 その声はさらに言う。
「あ奴、何を考えておる」
「十二家の一つの棟梁でありますが」
「それでこの議に出ぬというのは」
「まさかと思いますが」
「我等を」
「裏切りはあるまい」
 声はこのことは否定した。
「あ奴も我等の一族、血は裏切れぬ」
「普通の血ならともかくですな」
「我等の血は」
「まちろわぬ血は他のどの血よりも強い」
 それ故にだというのだ。
「我等を裏切ることはない」
「ではこの数年ここ来ぬのは何故でしょうか」
 ある声がその声に問う。
「それは何故でありましょうか」
「気まぐれであろう」
「気まぐれでありますか」
「あの者の気質は知っておろう」
「はい、まさに」
 その気まぐれだと、その声も闇の中で頷く。
「あれで気まぐれなところが強いです」
「昔からわしの言葉も聞かぬ」
「そうですな、長老のお言葉も」
「聞かぬ時は聞かぬ」
 松永はそうした者だというのだ、尚織田家においては信長に対して素直である。ほぼ誰も素直とは思っていないにしても。
「だからじゃ」
「ここは、ですか」
「放っておくべきですか」
「動く時になれば向こうから来る」
 その松永からというのだ。
「だから待てばよい」
「ではここにいる者達だけで」
「そのうえで手を打っていきますか」
「そうする。では織田信長が越前に入った時じゃ」
「その時ですか」
「その時に浅井を動かしますか」
「浅井は楽じゃ」
 こうした言葉も出て来た。
「あの家はな」
「父親ですか」
「あの父親を動かせばよい」
 そうすればというのだ。 
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