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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第17話 真祖との契約

 
前書き
「(    )」内の会話は念話となります。 

 
 さて、ここからの話しは重要だ。
 600年生きている真祖と渡り合わなければ。

「まずエヴァンジェリンに一番最初に理解して欲しいのは、オレが魔法使いではないということだ」

「どういうことだ?」

「簡単なことだ。魔法使い、正確には魔法使い見習いというのは麻帆良に入るために必要な身分であって、俺自身は符術師であり、神鳴流剣士でもある魔術師なわけだ。まぁ、エヴァンジェリンが魔法使いであり、人形遣いであり、合気道の達人でもあるのとご同様だ」

「(本当はそれに念能力者と魔導師が加わりますよね)」

「(まぁ、そうなんだけどね、リニス。そこまで今言う必要はないし)」

「なるほどな。それで、何が言いたい」

「つまり、巷で言う「立派な魔法使い(マギステル・マギ)」に夢を見ていないと言うこと」

「なっ。ハハハハッ。これは笑える。「英雄」の息子が「マギステル・マギ」を否定するか」

「あぁ、その「英雄」についても一言伝えておきたい。エヴァンジェリンがどう思っているのか知らないが、ナギ・スプリングフィールドはオレにとって、「育児放棄」の「ロクデナシ」の「疫病神」でしかない」

「はぁ?」

「この件に関してはプライベートなことになるから話すつもりはないけど、オレがそう思っていると言うことだけは知っておいてもらいたい」

「ふーん、まぁいい。死んだ男のことなんてどうでもいい。それで、何が言いたい?」

「まず第一の情報として、ナギ・スプリングフィールドは生きている」

「なに! どういうことだ!?」

「落ち着け。恐らくエヴァンジェリンは9年前(※現在は原作の1年前です)に死んだと聞いているんだろうが、最低でも5年前、オレ達兄弟は会っている」

「そんな………。やつが。サウザンドマスターが生きているだと?」

「5年前までは生きていたと言うのが正確か」

「ふ、ふふふ………。そーか、生きておったか。殺しても死なん奴だと思っていたが。そーか。そーか」

「(嬉しそうですね)」

「(だな)」

「ついでに幾つか情報を。って、おーい、聞いるか~、エヴァンジェリン」

「ハハハッ。なんだ、まだあるのか」

「ああっ、こんな嬉しそうなマスターは初めてです」

「まだというか、補足の情報だな。オレは会った時に直ぐに日本に跳ばされたが、兄の方には形見として杖を渡している。ずっと使ってた杖らしいから、見ればわかるんじゃない?」

「そうか」

「さらに今も生きているかどうか確実にわかる方法が」

「な、なんだと!?」

「まぁ、これは簡単な方法だ。ナギ・スプリングフィールドが紅き翼の面々と仮契約(パクティオー)していたのは有名だ。つまり」

「そうか、契約カードを見れば!」

「まぁ、そういうこと。後これは未確認情報だが、仮契約(パクティオー)の相手の1人「アルビレオ・イマ」が図書館島の最奥にいる幻の司書長だという情報もある」

「なんだと! あいつがいるのか!!」

「まぁ、未確認情報なんで暇があったら図書館島にでも潜ってみれば?」

「ふん。まぁいい。なかなか貴重な情報だったと褒めてやろう」

「それはそれは。ただ、学園長には秘密にして行くんだな。最悪、連絡が行って逃げられるぞ」

「なんだと! どういうことだ?」

「どういうことだと言われても、登校地獄の魔法が解除をされる可能性があるのに、学園長がそのままにするわけ無いだろうが?」

 大丈夫か? この吸血鬼?

「何を言っている貴様………」

「どうも認識の違いがありそうなんでちょっと整理しよう」

「ああ」

「まず、エヴァンジェリン、貴方は14年前膨大な魔力で適当に「登校地獄」の魔法をサウザンドマスターにかけられた」

「あぁ、そうだ!!」

「で、その登校するのに都合が良いからとこの麻帆良に連れて来られ、ついでに学園警備の任もやらされている」

「あぁ、その通りだ!!!」

 うわぁ、威圧感ハンパねぇ。
 オレに向かって怒んなよ。確認してるだけだろうに。

「で、3年経って卒業できたのにサウザンドマスターが魔法を解きに来なかった、と。そして中学1年生からまたやり直し。それが5週目と」

「あぁ、そうだ、その通りだ」

「で、ここでおかしな点が幾つかある」

「どういうことだ?」

 あら。本当に気付いてなさそうだ。それか認識しないように誘導されてんのか?
 ああ、もしかすると麻帆良結界か?
 魔法使いに都合の良いように認識されるようになってるのか?

「まず、「登校地獄」という魔法は、本来登校拒否児童にかける魔法で、登校拒否が改善されたら自然と解除される魔法だ。つまりわざわざ解除しに来るような魔法じゃない」

「なっ。だが、(ジジイ)は」

「まぁ、まずは聞いてくれ。サウザンドマスターがわざわざ解除しに来ると言ったのなら、そういう風にアレンジした可能性はある。だが、その場合、純粋に魔力に任せて解除する方法とあらかじめキーワードを決めて解除する方法が考えられる」

「なっ、確かに」

「で、魔力まかせにする場合は、ぶっちゃけ1人だけでするならともかく、多人数でリンクして儀式魔法を行えば解く気があるならどうとでもなる」

「そうだな」

「キーワードを決めていた場合、サウザンドマスターが誰にも伝えていない可能性と誰かに伝えていた可能性がある。聞いてる性格だと誰にも伝えていない可能性が高いけど、誰かに伝えるとしたら、伝えられた人間というのは」

「爺か」

「だろうね。次点として高畑さん始め、紅き翼の面々というのもあり得るけど、どっちにしろ麻帆良に(くく)られたエヴァンジェリンが会えないか、爺の意向に逆らえない面々だ」

「そうか、爺か」

「まぁ、そもそも日本でも有数の陰陽師でもある近衛家の人間が呪いを解けないとか言ってる時点でおかしい。それに」

「なんだ、まだあるのか?」

「素朴な疑問として中学生を繰り返していること自体おかしい」

「(なんで気付かないんでしょうね?)」

「(なんでだろうね?)」

「どういうことだ? 私が登校地獄で………」

「いや、サウザンドマスターの性格的に、例え学園長から都合の良い腕の立つ警備員を捜していると聞いていても、登校地獄の条件に「学校」あるいは「麻帆良学園」ぐらいの大まかな設定ぐらいしかしないはず。なら、中等部卒業したなら高等部、高等部卒業したなら大学部、大学院と麻帆良学園内なら進学してもかまわないはず」

「しかし………」

「まぁ、見た目云々あるかも知れんが、それこそ、卒業生・在校生・一般教師全員にエヴァンジェリンのことを忘れるように魔法をかける手間を考えれば、どっちが楽なのかはわかるはず」

「なっ、それは」

「(ここで、本来なら最初の年にできた友達に忘れられる必要はなかったというのはアレだな)」

「(当たり前です! 鬼畜過ぎます!)」

「(デスヨネー)」

「何と言ったらいいか、ご愁傷様です」

「クククククッ。そうか。そうだったのか。クソ爺め」

「とまぁ、これが事情を聞いた中でのこちらの認識だ。なお、エヴァンジェリンが個人的に詠春殿の伝手で解呪を頼んだこともあったかも知れんが、詠春殿は学園長には最初はどうこう言っても、何故かまったくの言いなりなんで、徒労なだけだね」

「クククククッ。そうかそうか。詠春め」

「で、まぁ、ここからが本題なんだが」

「なんだと、どういうことだ?」

「その呪いを解けるかも知れない方法が3つある」

「………。なるほど、ここからが情報ではない知識というワケか」

「ですです。1つめは、優秀な陰陽師集団による解呪。相応な対価は必要になるが、学園長が解呪に手を抜いていただけならまず確実だ」

「確かに。先程の話しを聞いた限りでは可能性は高いが、爺に逆らってでもということなら、西の組織になるんだろう? なら麻帆良に来れないんだから無理だな」

「まぁ、そうかもしれんね(方法はあるけど)。次にそこそこの符術師による呪いの移し替えですね。幸い、エヴァンジェリンは優秀な人形師なんで移し替え先の人形については考える必要もありませんし」

「人形を使うということは、あれか、「送り雛」とか言うようなやつか」

「なかなか古風なことを知っていらっしゃる。詳しい説明は必要なさそうだな。ただ、問題点は呪いを解いたのではなく、移し替えるだけなんで、移し替え先の人形になんかあったら元の木阿弥だ」

「………、なるほど。で、最後のは?」

「うーん、これは推測に推測を重ねるわけなんだが」

「ああ、それでいい。とっとと話せ」

「はい、はい。さっきアルビレオ・イマの話しをしたよな」

「ああ、それがどうした」

「アーティファクトだ」

「アーティファクト?」

「そう。モノは知っているよな?」

「あぁ、「イノチノシヘン(ハイ・ビュブロイ・ハイ・ビオグラフィカイ)」のことだな」

「知っているなら話しは早いが、彼がナギ・スプリングフィールドの人生を収集していると思わないか?」

「そうか! 奴がナギの人生を収集していれば、ナギ自身に解かせれば良い!」

「まぁ、図書館島にいる、ナギ・スプリングフィールドの人生を収集している、言うことを聞いてアーティファクトを使ってくれる、というのを全部クリアーする必要があるワケだが」

「ククククッ。そうかあの古本め! たまには役に立つではないか!!」

「それと呪詛返しで呪いを返すというのも手かもね」

「成る程なぁ。よかろう。確かに対価に値する話しを聞けたと認めよう。我が屋敷にある呪文書の閲覧の許可と気に入った魔法具(マジックアイテム)を余程のモノでなければ幾つかやろう。それと、お前にはエヴァと呼ぶことを許そう」

「それは重畳。では、エヴァと呼ばせていただこう。さっそくだが、ダイオラマ魔法球を頂きたい。時間差はそこまでこだわらないが、人形師(ドールマスター)としてのエヴァのドールにより球内の整備とかもしてくれるモノが希望だ」

「そうか。ダイオラマ魔法球は幾つか造ったから、別荘扱いの2~3個以外から1つくらいはやろう。ただ、倉庫の奥にあるので少し時間をくれ」

 おぉ。てか、ダイオラマ魔法球を造れるのか。さすがは真祖だ。

「わかった。その際はよろしく頼む」

「あぁ。しかし爺め………。どうしてくれようか」

「まぁ、あれだ。一筋縄で行くモノじゃないから、復讐するなり、解呪するなりする時は、万全な態勢で挑むんだな」

「ククク。勘違いしているな、サギ・スプリングフィールド。人生なんてものはそもそも準備不足の連続だ」

「そりゃそうですけど、対策できるのにしないのはただの怠慢でしょう」

「む、まぁその通りだ」

「じゃぁ、切りが良いところで今夜は帰るわ。それでは、また」

「あぁ、屋敷の方は私か茶々丸がいる時なら、いつでも呪文書を見に来るが良い。精々、爺に怪しまれん程度にな」

「ありがとうございます。それではまた」

「ああ、また(・・)」

 最後にそう挨拶してログハウスを出た。





 次の日、高畑先生から事情を聞いたんだろう、学園長室に呼び出され、根掘り葉掘り聞かれた。

 当たり前だが、詳しいことは話さず適当に煙に巻いた。
 なお、馬鹿な父親のせいで解呪できないエヴァに同情して血を吸わせたが、魔力が低くて解呪できなかった、とも説明しておいた。

 やっぱり何故かいる高畑先生が「何故、そんな無謀なことを!」とか言ってきたが、「3年で解放する契約が馬鹿な父親が解呪に来なかったせいで履行されずに、その後11年、無能な魔法使いが解呪も緩和もできなかったんだから、一応血を引く者として、できる範囲で協力するのは当たり前だ」と返してやった。

 無能と言われてカチンときたのか、「無能とは言い過ぎじゃないかの。明石くんをはじめ、みんな努力しておる」と学園長がほざいたので、「離縁した父親の負債を支払わされたのに、無能と言う権利もないんですかね? それとも実は解呪できるんですか?」と聞いてやった。

 黙り込んで答えなかったんで、会話は終了したとして、適当に挨拶して、業務に戻った。

 はてさて、エヴァはどういう手段を取るのかな? 
 

 
後書き
こんな感じで、エヴァにはちょっと気に入られた程度。
原作通り吸血鬼事件が起きるなら多分そこで介入します 
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