転生者が歩む新たな人生
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第16話 麻帆良での日々
前書き
教育実習生としての日々と「先んずれば人を制す」という感じでイベント
さて、オレこと遠坂暁が転生して9年と半年が経った。
「ネギま!」と「リリカル」なクロスした世界っぽいが、何の因果かネギ・スプリングフィールドの双子の弟に生まれたオレは、第一の死亡フラグである「悪魔襲撃事件」中に、ご同様な転生者に襲われ、命を失いかけた。
幾度かの奇跡を越えて助けられたら、運良く「念」能力に目覚めた。
途中、符術を学んだり、神鳴流を学んだり、リニスというチートな使い魔を拾ったりした後、何故か「魔法少女リリカルなのはA's」の悲劇のヒロイン八神はやてを結果的に助けたりもした。「闇の書」の被害を未然に防げたのは、この2回目の人生の第二の死亡フラグをへし折ったと言えよう。
残った死亡フラグはと言うと、父ナギ・スプリングフィールドがらみの魔法世界での「英雄」の息子としてのしがらみ。母アリカ・アナルキア・エンテオフュシアがらみの主にメセンブリーナ連合の元老院がらみの「災厄の女王」の息子としてのしがらみ。あとウェスペルタティア王国の末裔としてのしがらみもある。なおこれには王国再興以外にも「黄昏の姫御子」のスペアの可能性も含まれてたりする。もっとも王国を再興する気もそれに関わる気もまったくないのだが。
一応心情的にも法的にも親の遺産は放棄しているが、誰もが納得してくれるとは思っていない。
それと次元世界からの死亡フラグとして、ユーノ・スクライアが回収しに来るであろうジュエル・シードも忘れてはいけない。関与しなければ良いと思えるが、月村家が海鳴のセカンドオーナーであることと、リニスがオレの使い魔であることから、巻き込まれるのは既に必然であると言えよう。
忘れちゃいけないのは、現在教育実習生として潜り込んでいる麻帆良の生活も、主人公であるネギ・スプリングフィールドに巻き込まれると、真祖とのバトルから修学旅行でのスクナの復活、雨の日の悪魔の襲撃、麻帆良祭での超一味との対決、と原作では誰も大した怪我すらしていないが、現実なら一歩間違えれば即死亡という死亡フラグが乱立するということだ。
さて、長々と死亡フラグの考察をしていたのは、先程2年A組の絡繰から「招待状」をいただいたからだ………。
現実逃避とか言わない。
☆ ★ ☆
教育実習が始まり、女子寮の管理人室に住むという生活も、最初に寮生全員を集めて挨拶をしたことから、特に変なこと(イベント)も起きず、無難にこなしている。
管理人室は2DKに加え、浴室・トイレが別に付いており、まぁまぁ満足のいく部屋である。
もっともどうしようもなければ、持ってきた魔法球の工房に入れば済む話しだが、緊急時の来客に対応できないこともあり、できれば入り浸るのは極力避けたい。
授業の方も、2年B組の担任で、A組からD組の4クラスの数学を担当している瀬流彦先生の指導の元、精力的にこなしている。もっとも教育実習生なので、毎回の授業をメインで担当しているわけではないが。
時折、同じ数学担当の先生方の空いている時間に、授業の進め方なんかも相談したりする。
一部(主に魔法に重きを置いている魔法先生)を除いて、皆生徒のためにどういう授業をすればいいかと真剣に応対してくれる。
たまに2年B組で、朝の出欠席の確認やホームルームなんかも任せられてたりもするのも教育実習生の醍醐味か。
銀髪オッドアイという少々イタイ外見だが、9歳児ということもあって、「カワイイ」という評価程度でB組からD組までは修まっている。
2年A組については、正直関わり合いたくない。原作では「微笑ましい」程度で済ませられるが、現実に相対するとやってらんねぇ。
最初の授業で原作のネギと同じ悪戯をしかけられたが、もちろん全て躱した。躱してから気付いたが、バケツに水が並々と入ってた。
服はもちろん、持っていた授業の道具やプリントが濡れて使いものにならなくなったら、どう責任取るつもり何だろう? それとも授業がつぶれてラッキーとでも言うつもりか?
ちなみに、直ぐに悪戯をしかけた生徒を自主的に名乗り出させ、その時間中、椅子の上で正座をさせて授業を受けさせた。
体罰? ナニソレオイシイノ?
最初はすっとぼけるつもりだったようだが、「名乗り出ないなら連帯責任で全員正座だ」と告げたら、皆の視線が集中して春日と鳴滝姉妹が名乗り出てきた。
それ以後意地になったのか、手を変え品を変え、悪戯を2~3回続けやがったので、首謀者の正座に加え、宿題を全員に出したら、ようやく止めるようになった。宿題は結構な量を出したので、きっと他のクラスメイトが止めたんだろう。
なんせ「宿題を提出しなかった者がいたら、連帯責任でクラス全員にさらに倍! 出す」と言っておいたから。
なお、採点には工房内で分身も使うので、どれだけ量が多くても問題ない。
とにかく、小学校低学年でもこんなに騒がしくないわ、と思うほど五月蠅い。
春日以外の裏の関係者は値踏みするような視線で睨んで来るし。
古菲や長瀬楓らバトルマニアどもは、「「戦うアルヨ(でゴザルヨ)」」とか言って来るし。
まあ、「数学の試験か小テストで9割取れたら考えてやる」と答えたら、凹んでいたが。
委員長の雪広がショタコン気味で協力的なのや、那波や近衛、意外なところで朝倉が所々締めてくれるので何とかなっている感じだ。
朝倉はパパラッチだが、ちゃんと空気を読める人間だ。オレがキレそうになる前に上手くクラスメイトを誘導しやがる。
ただ、バカレンジャー+1(神楽坂、綾瀬、佐々木、長瀬、古菲、桜咲)の6人の数学の成績は余程がんばらないと駄目そうだが。
まぁ、そんな生活を送る中で絡繰から届けられたのが、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル通称「闇の福音」からの招待状だ。
☆ ★ ☆
一応念のため、高畑先生(あえて学園長ではなく)に電話で確認し、原作との齟齬もなさそうなので、リニスを連れて、同封の地図を見て、エヴァンジェリン宅のログハウスを訪れる。
出迎えた絡繰にリビングへ通される。
そこには、600年を生きている真祖の吸血鬼が椅子に座って待ちかまえていた。
なかなかプレッシャーが尋常じゃない。
鶴子さまとの修行がなければ、プレッシャーに押し潰されていただろう。
プレッシャーを気にしないオレを少しは認めてくれたのか、挨拶を交わし、絡繰お手製の夕食を御馳走してくれる。
美味しい。
ノエルさんやリニスに勝るとも劣らない美味しさだ。
なお、リニスは使い魔だと紹介し、今は膝の上だ。
おとなしく、猫用として出されたミルクや魚を美味しそうに食べている。
食事を終えると、食後のティータイムということで、別室に誘われ、ふかふかのソファーに座らせてもらう。
で、ようやく本題。
「貴様は、父親が私にしたことを知っているか?」
あー、登校地獄のことだよな。
「えー、大体のことは高畑さんとネットのほうで。ただ、」
「ただ?」
「これを見ていただくとわかるんですが、ナギ・スプリングフィールドとは縁も切っており、遺産なども放棄してるので」
と言いつつ無関係だと主張し、それらについての書類の写しを渡す。
「な、なんだ、これはー! 納得できるかー!!」
とまぁ、当たり前だが納得もされず、書類も破り捨てられる。
「デスヨネー。そうだ、絡繰さん。小さなワイングラスかなにか持ってきてください」
そう頼むと「わかりました」と言って、取りに行く。
「貴様、なんのつもりだ」
「まぁ、少しお待ち下さい」
ほとんど待つこともなく絡繰がワイングラスを持ってきてくれる。
「ありがとう、絡繰さん。さて、」
と言って、左手首にすぱっと傷を付け、自分の血をワイングラスに貯める。
「な、な………」
意外だったんだろう、エヴァンジェリンが面白いように狼狽える。
ワイングラスに満ちるのを待って、傷を治療符で癒す。
さて、ここまでは想定内だが。
「とりあえず、新鮮なナギ・スプリングフィールドの血を引く者の血です。ご招待のお礼というわけではないですが、ご笑納下さい」
そう、自分の血をエヴァンジェリンに勧める。
「ふん。まぁいい」
狼狽えたのを誤魔化すつもりか幾分高圧的な感じで、ワイングラスの血を一気にあおる。
「む」
「どうです? この血で呪いは解けそうですか?」
「ちっ。無理だな。見たところナギと同じくらいの魔力は有りそうだが、この程度の血では浴びるほど飲んでも解けそうにないな」
まぁ、想定内か。3歳になったかならないかぐらいで父親の魔力量を超えたネギならともかく、オレの血では解呪は不可能だろう。
「まぁ、そうでしょうね。で、「闇の福音」殿としては、憂さ晴らしにでもオレを襲って血を求めますか?」
「ふふん。そういうことか。まぁいい。その度胸に免じて、貴様の血はほかっておいてやろう」
ふぅ。物怖じしないで行動したんで、そこそこ友好的にはなったか。
「ありがとうございます、というのもこちらとしては変ですが。ところでエヴァンジェリンさんは、オレのことはどこまで知っていますか?」
「ふん。貴様のことか。ナギの双子の息子の弟で、そこそこの成績で魔法学校を卒業して、日本で育ったから首席の兄より先に赴任して来たぐらいだな」
「なるほど。ならエヴァンジェリンさん、取引しませんか?」
「取引だとぉ!」
「ええ、格は違えど魔法使い同士の対等な取引です」
「ふん。別に今すぐ引っ捕らえて口を割らせることも雑作もないが?」
「ご冗談を。「闇の福音」とも呼ばれた「悪」が、正統に持ちかけられた対等な取引をご破算にするとは思えませんが」
「ふん。まぁいい。で、取引内容は? それによっては考えてやっても良い」
を、食いついてきた。少し持ち上げとけば、悪さすることもなさそうだな。
「そうですね。対価として求めるのは、いわゆる魔法の知識、とりわけ、石化解除や解呪、時空間系の魔法の知識と魔法具ですね。」
「ほほぅ。大きく出たな。確かにそれらを私に求めるのは正解だろう。一般では既に遺失した呪文やマジックアイテムが、我が屋敷にはごろごろしてるからな。だが、それらに見合う対価が貴様に支払えるのか?」
「そうですね。こちらが対価として支払うのは貴方が求めているだろうと思う情報や知識になります」
「私が求めている情報と知識だと! 貴様! 情報はともかく私が求める知識を貴様ごときが持っているとでも言うのか!?」
ありゃ。なんか地雷踏んだ?
真祖の地雷はよくわからん。
「まぁ、あくまでこちらが求めていると考えている情報と知識なので。当然、それが的はずれだった場合は、対価に含まれなくて結構です」
「当たり前だ!」
「それと」
「それと?」
「今から話すことはエヴァンジェリンさんとその従者である絡繰さんに話すんであって、メンテナンス等で他の人にばれるのは好ましくないので、絡繰さんの方で情報封鎖するか、席を離れて欲しいのですが」
「なっ。まぁいい。茶々丸、可能か?」
「イエス、マスター。秘匿領域に記憶し、その他のフォルダから消去することにより可能です」
「だ、そうだが」
「了解です。では、ここから以後は対価を求める取引として話すので、それに見合った対価を「闇の福音」の名にかけて求めます」
「わかった、わかった。いいから話せ」
さて、「闇の福音」とまで呼ばれる真祖と言葉を駆使しての駆け引きだ。
後書き
会話が思ったよりも長くなってしまった。次話に続きます。
主人公は会話という戦場を選択することにしました。
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