万華鏡
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第三十二話 呉の街その十三
先輩達はもう浴衣姿だった、その浴衣姿で五人と同じく顔も身体も真っ赤にさせていてそのうえでこう言って来た。
「お帰り」
「どうじゃった?呉」
「楽しかったやろ、あそこも」
「商店街行ったけえ?」
「はい、行きました」
美優が部屋の椅子にそれぞれ座っている先輩達に答えた。既に部屋に布団は敷かれている。先輩達は椅子に脚や胸をかなり見せて座っている。
その真っ赤な脚や胸、そしてそのけだるい感じの顔を見てだ、美優は戸惑いながら先輩達に今度はこんなことを言った。
「あの、それよりも」
「それよりも?どうしたん」
「何かあったけえ?」
「ちょっと服と姿勢なおしてくれませんか?」
かなりダイレクトに告げた。
「今の格好は」
「あっ、ちょっと涼んでたんよここに座って」
「飲んでお風呂入ってじゃったけえ」
「気付いたらこの格好やったわ」
「すぐになおすわ」
脚を組んだりだらりと出していたり、浴衣姿でそうしていたのだ。
だが先輩達も二人に言われて姿勢を服をなおした、そのうえで布団の上に女の子座りになってあらためて五人に言った。
「で、どうやったん呉」
「何処行ったけえ?」
「商店街に行きました」
琴乃が答えた。
「それでお好み焼き食べました」
「そうなんじゃ。じゃあ今度はな」
「今度はですか」
宇野先輩の言葉に応える。
「今度呉に来た時はですか」
「他の場所に行ったらええけえ、例えば駅の傍にある百貨店な」
「あそこですか」
「あそこも結構ものが充実してるさかいな」
だからだというのだ。
「行くとええけえ」
「あそこもですか」
「他にもじゃ。海自さん観に行くのもいいけえ」
「海自さんですか」
「事前に連絡してたら気前よく通してくれるんじゃ」
自衛隊は何処でもそうだ、海上自衛隊も然りである。
「あそこは潜水艦もあるし見応えあるんじゃ」
「潜水艦あるんですか」
「うん、あそこにはな」
「そうだったんですか」
「何でも日本の潜水艦はあそこと横須賀しかないらしいんよ」
「へえ、そうだったんですね」
琴乃は先輩の今の話に目を丸くさせて応えた。
「あそこと横須賀だけですか」
「そうなんじゃ、凄いじゃろ」
「じゃあ行けばよかったわね」
「そうよね」
五人でこう話す。
「海自さんの基地にもね」
「時間があったかどうかはわからないけれど」
「まあ、見てもふうん位で終わるものじゃな、あれは」
宇野先輩は腕を組んで潜水艦について言った。
「実際のとこは」
「ふうん、ですか」
「潜水艦って」
「そうじゃ、普通の船よりずっと小さくて」
「小さいんですか、潜水艦って」
「そうなんですか」
「そんで黒くて艦橋だけがあるんじゃ」
先輩はこのことも話した。
「ただそれだけじゃ」
「そうなんですか」
「何か面白くない外見なんですね」
「まあうちは大和とかの写真見てそっちの方が好きじゃからな」
個人的な好みもあるというのだ。
「そんでも潜水艦って言う程面白くはないわ」
「けれど見るのもええで」
高見先輩も五人に言う。
「見ると見んで全然ちゃうさかい」
「そうですか」
「そんなに違いますか」
「そや、見て来るとええわ」
こう言ってだった、そしてだ。
五人もだ、顔を見合わせてこう話した。
「じゃあ今度はね」
「来年でもね」
「海自さんの基地に行って」
「それでよね」
「潜水艦観させてもらうか」
「言っとくけどほんま小さいけえ」
宇野先輩は右の人差し指を立ててこのことは念を押した。
「護衛艦に比べたら全然違うわ」
「そんなに小さいんですか」
「何でも原子力潜水艦やとかなり大きいらしいんや」
高見先輩は酒が残っているが真顔で語った。
「アメちゃんのとかはな」
「原子力の潜水艦は大きいんですか」
「日本の潜水艦と違って」
「みたいやな、どうやら」
そうした話をするのだった、そして。
先輩達は自衛隊から話を変えてきた、その話はというと。
「で、今度は広島行くけえ」
「史跡研修でな」
「別に問題はないけえ」
「楽しむんやで」
ここではこうした話をした、そしてだった。
広島市の話もしていく、合宿はその中で終盤に入ろうとしていた。
第三十二話 完
2013・4・29
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