とある碧空の暴風族(ストームライダー)
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幻想御手
Trick19_“轢き潰す”ことは決定だな
「信乃にーちゃん! 佐天さんが運ばれたって!?」
「琴ちゃ、御坂さん病院では静かにして下さい」
佐天は幻想御手で倒れた後、救急車で病院に運ばれた。
到着後に御坂と白井に信乃が連絡をして、2人は急いで病院に駆け込んできた。
信乃も少し動揺していたみたいで御坂を昔の呼び名で呼びかけてしまった。
到着した2人が見たのはベットに横たわる佐天。
周りには医者と看護士が数名いて検査をしている。
「・・・佐天さんも・・・幻想御手を・・・」
その光景を見て御坂がやっとのことで呟いた言葉だった。
「信乃さん、初春はどちらに行きましたの?」
「絶対に幻想御手を解析して佐天さんを助けるって・・木山先生のところに
行きました。私は佐天さんをお願いされたので、ここに・・」
いつも笑顔を浮かべている信乃も、さすがに今は無表情だ。
誰もなにも言えずに、ただ沈黙だけが過ぎていった。
数分間、そのままの3人に声をかけてきた人物がいた。
「君達、ちょっといいかい?」
声の方向を3人は振り向いた。
そこにいたのはカエル顔の医者。
「リアルゲコ太!?」
「「いやいやいや、違うから」」
御坂に信乃と白井が同時に突っ込んだ。
「きみたち、風紀委員だろ? 幻想御手について話したいことがあるよ?」
カエル顔からの話は、患者の脳波についてだった。
個人で違う脳波だが、幻想御手の被害者には共通の脳波パターンがあることが
わかった。
つまり、強制的に脳に干渉されているために被害者たちは昏睡状態になっている。
同時に、この脳波の正体が分かれば犯人に近づくことができる。
「共通の脳波。これは犯人の手掛かりになりそうですね。 待ってろよ・・」
信乃は解決に近づいた喜びと、もう少しで会える犯人への殺意をつぶやいた。
最後の方はだれにも聞かれないように。
「わたくしは支部に戻って脳波について調べてみますの」
話しの後、白井と御坂はすぐに風紀委員支部に行くと言った。
「私は残っています。佐天さんの検査がまだ終わっていないですし、初春さんに
佐天さんのことを頼まれましたから、せめて検査が終わるまでは」
「わかった、佐天さんをお願いね信乃にーちゃん」
「お願いしますわ」
白井と御坂は急いで病院をあとにした。
「さてさて、見つけた犯人は請け負ったことの他にも、“俺”の友達にひどい事を
したのも含めてどんな目にあわせてやろうかな。
殺して解してなr・・ それはやりすぎか」
思わず知人の口癖で決め台詞を言いかけたが内容を実行すると過激なのでやめた。
「でも、“轢き潰す”ことは決定だな」
自分の背中に隠し持っている“ケースの中身”を思い出して呟いた。
**************************************
風紀委員支部に戻ってきた白井と御坂はさっそく書庫から脳波の
検索を開始した。
ちなみにPCの操作は固法がしている。
「特定の脳波パターンがはっきりしているなら、それが犯人の脳波である可能性が
高いわね」
「でも固法先輩、書庫にデータがなかったらどうします?」
「大丈夫ですわ。学生はもちろん、病院の受診や職業適性テストを受けた大人の
データも保管されてますの。心配には及びませんわお姉様」
「出たわよ! 一致率99%!」
「だれ(ですの)!?」
画面に写っていた人物
『木山 春生』
写真と名前、両方とも自分たちの知っている木山と同じ。
顔が似ているわけでも同姓同名でもない。
間違いなくあの木山 春生だ。
そして、今、初春が会いに行っている人物でもあった。
「「! 初春が危ない!」」
白井は急いで携帯電話を操作した。
「初春さんがどうかしたの?」
一人だけ状況がわからない固法が質問した。
「さっき、その木山先生のところに行くって言って」
「なんですって!?」
「だめですわ、繋がらないですの!」
「白井さん! 警備員に連絡! 木山春生の身柄確保!
ただし、人質の可能性あり!」
「はい!」
白井は再び携帯電話を操作した。
数分後、警備員からの連絡が来た。
木山の研究施設に行ったが、木山と初春はいなかった。
すでに移動した後だったのだろう。初春が人質にされた可能性が高くなる。
御坂はじっとしていられず
「固法先輩! 学園都市内のカメラから木山の足取りを掴めませんか?」
「たぶん、できると思うけど・・」
「まさかお姉様! 木山を追いかけるつもりですの!?
お姉様は一般人です! お姉様が行くくらいなら私が行」
「そんな体で動こうっての?」
御坂は言葉を遮って白井の肩に“軽く”手を置いた。
「うっぐ!!」
白井は顔を歪ませて痛さに耐えている。
ここ数日、幻想御手を持つスキルアウトを相手に戦闘を繰り返していた。
昨日もトリックと呼ばれていた偏光能力者と戦って肋骨を痛めている。
「お姉様、気付いて・・」
「当たり前でしょ。あんたは私の後輩なんだから、こんなときぐらいお姉様に
頼んなさい」
御坂は笑顔で、頼りがいのある笑顔をして部屋を出て行った。
御坂は電話で固法と白井から教えられて、タクシーで向かっていた。
木山はすでに警備員が先回りしていると電話で聞いた。
あとは捕まえるだけのだったはずだが、
警備員と戦いが始まる。
タクシーの窓から見えた、大規模な爆発によって御坂は戦いの開始を知った。
「おつりはいいわ! 早くここから逃げてください!」
タクシーを急いで降りて、御坂は爆発の場所へと走った。
「黒子、どうなってるの? 黒子!」
片手には電話。電話先の白井に疑問を怒鳴る。
白井たちは学園都市のカメラから現場を見ていた。
『・・・・木山が・・警備員と交戦してますの・・・
それも能力を使って』
「彼女、能力者だったの!?
『書庫には彼女が能力開発を付けたという記録はないわ。
でも、これは明らかに能力だわ・・それも複数の能力を使っているとしか」
電話の向こうからは固法の声も聞こえる。同じように戦闘を見ていたので
木山について急いで調べたようだ。
「そんな!能力は一人に一つだけ!例外はないはずでしょ!?」
『もしかして、幻想御手ではないでしょうか? 一万人もの能力者をネットワークで
繋いだシステムは、いわば一つの巨大な脳。
もしそれを操れるのなら人間の脳ではありえないことを起こせますの。
それが正しいなら、今の木山は実現不可能と言われた幻の存在・・
多重能力者・・デュアルスキルですわ!』
白井の推測を聞いたタイミングで御坂は現場に着いた。
そこにあった風景は
「警備員が・・全滅・・・」
全ての警備員が倒れていた。
「初春さんは!?」
御坂は近くを見渡した。
すぐに止めてある車の助席に友人を見つめて駆け寄った。
気を失っているだけ。よかったと安堵を漏らしたその時
「安心していい。戦闘の余波を受けて気絶しているだけだ。命に別条はない」
爆発の土煙の中から声が聞こえた。
土煙が晴れてゆき、その中に立っている人物が一人だけ。
木山 春生
御坂はすぐに木山に体を向けた。
「御坂美琴。学園都市に7人しかいないレベル5。さすがの君も私のような相手と
戦ったことはあるまい。
きみに一万の脳を統べる私を止められるかな?」
*****************************************
「どれも繋がりませんの!」
「こっちもだめみたい」
時は同じころ。風紀委員177支部で白井と固法は学園都市のカメラを操作していた。
しかし、戦闘のせいで木山と、彼女に接触した御坂を映すカメラが全て壊れてしまった。
「どうしましょう・・わたくしも行きますの!」
「だめよ白井さん! その怪我で何ができるっていうの!」
「しかし・・」
白井の体は怪我だかけ。助けになるどころか足手まといだろう。
「しかし、相手は多重能力者ですわ!
そんな相手にお姉様一人なんて・・
あれ? 多重能力者?」
「? どうしたの白井さん?」
「いましたわ! 一人だけ、多重能力者のような人が!!」
白井は急いで携帯電話のアドレス帳からある人物の名前を探す。
つづく
後書き
“轢き潰す”のキーワードで信乃が持っているのが何かを
予想してみてください。
エア・ギアのファンなら簡単です!
作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。
皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。
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