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ヘタリア大帝国

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TURN77 虚脱状態その五

「東郷と話してみます」
「あの長官さんとだな」
「はい、そうします」
 こうフランスに述べる。
「ではその様に」
「それで頼むな」
 宇垣のアステカ戦線への参戦も検討されることになった、そうした話が次々に為された外相会議だった。
 会議は全体的に順調であり各国の独立の維持と太平洋経済圏の意義が宣言され連合国との対決が謳われた。
 その他にも伊勢志摩との外交交渉に入ることも決定した、だがだった。
 問題はレーティアのことだった、彼女のことはだった。
「とにかく何とかしないといけないぞ」
「全くある」
 かつての敵国だったアメリカと中国の言葉だ。
「あの人の力があれば枢軸は今よりずっとよくなるからな」
「是非共復活して欲しいある」
「何とかなって欲しいけれど無理かい?」
「どうにかならないあるか」
「正直打つ手がない」
 ドイツも深刻な顔で返すばかりだった。
「どうしたものかな」
「勢力で言うとこっちの方が優勢だけれどな」 
 フランスは枢軸と連合の今の力関係を述べた。
「北アジア以外のアジア全土に北米、オセアニアだからな」
「そうだよね、欧州よりもずっと大きくなってるよ」
 イタリアもそのことを言う。
「ソビエトとエイリスがまだあるけれどね」
「こっちの方が国力も艦隊数も技術も上なのは間違いないぜ」
「うん、それも結構向こうに差を開けてるよ」
「油断大敵です」
 だがここでこう言ったのは日本だった。
「国力差にして二倍の差がありますが」
「それでもなんだ」
「はい、やはりあの方の力が必要です」
 そうだというのだ。
「あの方がおられれば決定的です」
「アステカとの戦いも有利に進められますね」
 シャルロットは当面の相手のことも述べた。
「艦艇のさらなる技術革新も行えますし」
「その通りです。何とか復活して頂きたいです」
 議長役の宇垣もそのことは言う。
「是非共」
「そうしてもらいたいものだ」
 特にドイツが切実に願っていた、枢軸にとってレーティア=アドルフの復活は絶対必要条件にさえなっていた。
 だがレーティアは相変わらずだった。黒のジャージ姿と冴えない三つ編みのままで日々を過ごし猫背になっている。
 虚ろな表情で焦点の定まらない目でその場にいるだけだった。
 その彼女に今日もグレシアとエルミーが声をかける。
「レーティア、何を食べたいの?」
「あるものを」
「チョコレートあるけれど」
 グレシアはレーティアの大好物を出した。
「パスタも苺もあるわよ」
「別にいい」
 好物を出されてもこうだった。虚ろな顔のままだ。
「食べられれば」
「パスタはイタちゃんが作るのよ」
「イタリア君に有り難うと伝えてくれ」
 やはりこれだけだった。
「頂くけれど」
「そうなの」
「総統、いい本があります」
 エルミーは読書家でもあるレーティアの趣味を衝いた。
「哲学書ですが」
「どの哲学者のだ?」
「中帝国のものです」 
 エルミーはレーティアを気遣いながら答える。
「孔子のものですが」
「論語か?大学か?」
「中庸です」
「もう読んだ」
 既にだというのだ。 
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