グラールの神機使い
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1-3
「俺に何の用だ?」
「うわぁっ!」
角を曲がった瞬間、剣を構える男の姿があった。
向けられた刃からは、ひんやりと冷気が感じ取れる。おそらく、今までの原生生物の惨劇も、この男の仕業だろう。
そう分かった途端、エミリアは男に食って掛かった。
「何の用だーじゃないわよ! あんた、自分が何したか分かってるの!?」
エミリアは声を張り上げる。が、男はその言葉に眉をひそめた。
「アラガミを殺して何が悪いってんだよ? なんだ、新種だからサンプルが取りたかったってか?」
「アラガミ?」
聞き覚えのない言葉に、シズルは聞き返す。
「……アラガミを知らないのか?」
すると男は目を見開き、そして突然笑い出した。
「ハハハハ! この御時世にアラガミも知らないって!」
男は、笑いすぎと思える程笑う。エミリアは更に表情を険しくするが、男は笑うのをやめない。
「ハハハハハ……ハハ、いてて、腹いてぇ」
苦しくなったのか、男は剣を地面に突き刺してもたれかかった。
そこまで笑うかと思った時、シズルは男の右腕を見て、心臓を殴りつけられたと思う程驚いた。
その男の右腕の腕輪。その腕輪の小さな穴に、剣から伸びた管が刺さったのだ。
そして……手の血管の中を、どす黒い液体が流れていくのが見えた。
エミリアは気づいていないようだったが、シズルは言葉を失ってしまった。
「お前らさー、なに? 温室育ち? だからってアラガミがいないわけじゃないけど、世間知らず過ぎだろ! ハハハ……」
そして男は、何事もなかったように剣を持ち上げた。
その時シズルの脳裏を、ある仮説がよぎった。
「まさ、か」
「……シズル?」
エミリアが心配して覗き込むが、シズルは考え込むばかりだ。
そして彼は、まさかと思いながらも口を開いた。
「ま、まぁ僕達には、シールドラインやテクニック、フォトンアーツなどがあるからね」
自分達の所謂「常識」、それを彼にぶつけてみたのだ。
「なんだ、それ。新しい品種のレーションか?」
そして、その反応はシズルの予想通りの物だった。
「まさか、本当に」
「シズル? 1人でぶつぶつ言ってないで、説明してよ!」
「……君、名前は?」
「俺? 荒鋼リュウジ」
「じゃあリュウジさん。まさか君は、亜空間に……」
その時、とてつもない轟音がシティに響き渡った。
「っ! なんだ!?」
声の方向に全員で振り返る。と、重い足音がゆっくりと近づいてきた。
そして建物の陰から、巨大な生物が姿をあらわした。
カマキリのような外見のそれを、エミリアとシズルは即座に理解した。
「グラス・アサッシン!」
「なんだこいつ……こいつも新種のアラガミか?」
リュウジと名乗った男は動揺しているようだったが、シズルとエミリアの2人は、落ち着いて武器を構える。
「お、おい! 何する気だお前ら!」
「何って、戦うに決まってるでしょ!」
「ハァ!? 何言ってんだテメェら! それは神機じゃねぇだろ!」
「何言って……」
「そんなチカチカの棒っきれで何ができるってんだ!? 下がってろ!」
そしてリュウジは大急ぎで2人の前に立ちはだかり、武器を向けた。
「言うことを聞かないなら俺がお前たちを殺す。下がれ、これは命令だ!」
「何を……何の権限でそんなこと言ってんのよ!」
「あぁ!? 第九部隊隊長の権限だボケ!」
睨み合う2人。呆れて仲裁しようとしたシズルだったが、リュウジの背後に迫る影を見て、声を張り上げた。
「あ、危ない!」
「ッ!」
振り返るリュウジ。そこには、腕の鎌を振り下ろすグラス・アサッシンの姿があった。
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