連邦の朝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第31話 動乱
特に危険な事はなく、平和に時間は進み、ワイアットは、22才になった。
マリアンヌは20才になり苛烈に、ワイアットに迫っていた。
ワイアットとしては、18才を越えた為に、母体の安全や地球連邦法の未成年を越えた等の理由で、世継ぎを作るべきなのかと考えつつも、ワイアットの心のなかでマリアンヌは、少ししつこく甘えてくる娘や孫の様な感覚で手を出す存在には、思えなかった。
つまりは、女性として余り認識していなかった。
肉体年齢は、ともかくとして精神年齢では、60才以上な彼、ワイアットは前世からも余り好色では無った。
そんな暇があれば、ただただ、政治活動や裏工作等に明け暮れていた。
“あの子”が来てからは、結婚もしていなかった為に、彼が面倒を見ていた。
次第に警戒せずともよい彼女の存在は、ワイアットの中で、巨大化していった。
そんな彼にとって、恋愛は政治的駆け引きの為に必要なモノで、財界の大物や政治家、富豪の娘と交遊関係を持ったり、財界のパーティーに出たりした。
しかし、純粋な好意を寄せられるというのは、彼をとまどわせた。
打算ばかりの関係に馴れていたのだ…。
私はこうも恋愛や人間関係が、親密になると尻込みする。
フフッ…私は、知らなかったが、臆病者のようだな。
蛮勇よりはましか戦術、戦略、戦争などでは臆病者が、最終的に勝つことが多いからな。
同じ慎重な、悪く言えば臆病者のエルランやゴップとは、だからよき友人になれたのやもしれぬ。
マリアンヌは、可愛いがな…この様な私を何故ここまで慕っているのだ?
タルブに行く時に渡したものが気に入っているのか?
ワイアットがタルブに行くときに渡したものを受け取った。
そのマリアンヌの反応を少し時間を戻して見てみよう。
「陛下!グリーン様!何処へ行ったの?あの女も居ないし…ハッ、これが浮気なのですか?お母様!」
マリアンヌは、凄く騒いでいた。
浮気などする暇もなく政務、兵器開発、各種研究、他国への謀略などをしていた。
王としての仕事で、日々、忙しいワイアットがするわけが無いし、出来ないのだが、なまじ書類などは、直ぐに片付けるワイアットの才能が、この発想を生んでいた。
マリアンヌの父フィリップは、政治下手であり、フィリップが半日かかる書類をワイアットは、二時間程度で片付けていた。
マリアンヌの目には、ワイアットが浮気の暇が有るように見えていたのだ。
そして、少し内心では、乙女の好奇心からか、宮廷や社交界等の噂の影響からか、浮気される事や捨てられそうになることに興味があったのも彼女をより暴走させた。
マリアンヌがここまでの考え方になったのは、主にマリアンヌの侍女になり、常に側には喋り好きの由緒正しい貴族令嬢や富豪の娘がいて、その娘たちが話す噂話を真面目にうけとめているせいだった。
その時に、ワイアットの電撃タルブ訪問である。
妄想女化してしまったマリアンヌは、とても、王族に見えなかった。
ワイアットの好きな淑女では決して無かった。
そんな少し話しかけるのに王族と言うのを抜きにしても躊躇される彼女に話かける者がいた。
「マリアンヌ様!ワイアット様がマリアンヌ様にこれをと…」
マザリーニは、ワイアットに言われた通り、マリアンヌに包みを渡した。
「これをグリーン様が私に?」
マリアンヌは、その包みを開いた。
その包みの中には、一対の人形が入っていた。
その人形は、ワイアット渾身の力作で、イギリスの陶磁器を作るために製作していたボーン・チャイナの技術を使ったビスク・ドールに、ワイアット人形に、金糸を使って作った髪を一本一本を丁寧に錬金で植え込み、眼にはエメラルドを加工、唇の色はルビー等を組み合わせた染料で、丹念に色付けした。
その他の色を錬金と染料で付け、服は最新の裁縫技術を使い作り装飾も細かくして、ワイアットのこだわりが感じられる。
もうひとつのマリアンヌ人形は、大部分の材料や工程は同じだがしっかりとワイアットとの身長差を再現しつつ赤い髪は、ワイアットが昔、ライと退治しに行った赤い鬣の猛獣の鬣を使っている。
この一対の人形は、固定化で強化されており壊れずらくなっている。
この自慢の人形を作り上げてマリアンヌに、プレゼントして機嫌を良くすると言う目的があったのだ。
マリアンヌはというと
「グリーン様ったら、こんなに可愛らしく私を作ってくれて…」
恐ろしいぐらい人形とそれを作ったワイアットにときめいていた。
自分が確かにワイアットの事をベタ誉めして、ワイアットを好きになるようにしたがここまで好きになるとは…
とマザリーニは、自分自身の才能かそれとも、ワイアットが凄いのか、マリアンヌがアレなのか考察をしていた。
ワイアットの贈り物は、大体そんな感じでマリアンヌの部屋に宝石箱(ワイアットの贈り物)にしまわれて毎晩寝る前に出して可愛いがられ手入れされているのだった。
何時の間にか、時間は流れて、ワイアットは、日々の激務から眠っていたのだ。
ワイアットは、自分で淹れた紅茶が冷めているのを見て、若干顔を歪ませて、その冷めて渋く成った紅茶を胃に流し込んだ。
その時に、扉が叩かれ聞き覚えのある声がワイアットの耳に入った。
「ワイアット様、会議にご出席をお願いします。」
マザリーニの声にワイアットは、書類をそこそこに開き廊下を進む。
ワイアットは会議室まで、聞き忘れていたマリアンヌの反応を聞いた。
マザリーニは、覚えていた印象に残る記憶から、多分話して自分が怒られない範囲を上手く繋ぎ合わせて、ワイアットに報告した。
ワイアットのため息が、廊下に響いた。
後書き
ご感想よろしくお願いいたします。
お読み頂いている皆様遅れて、すみません。
ページ上へ戻る