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万華鏡

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第三十二話 呉の街その九

「どうしてもな」
「馴染みがないのよね」
「山羊のミルクもね」
「そうそう、山羊のミルクだってさ」
 それもだというのだ、美優は山羊のミルクについても話す。
「あれも美味いのにさ」
「こっちじゃ飲まないし」
「チーズとかも」
「山羊のチーズもあるけれどね」
「そっちも」
「あれ匂いと味に癖があるけれど美味いんだよ」
 美優はそういったものについても言った、美味いというのだ。
「ワインにも合うしさ」
「それでもなのね」
「日本じゃ馴染みないのね」
「ほら、ハイジあるだろハイジ」
 美優は今度は人の名前を出した。日本人の名前ではない。
「アルプスの少女な」
「あっ、山羊さん出て来るわよね」
 里香はお好み焼きを食べながら応えた。
「そのお乳も」
「あれな、美味しそうだろ」
「ええ」
「美味いんだよ、山羊ってな」
「それが日本ではよね」
「残念だよ、本当に」
 沖縄出身としての言葉だ、顔も実にそうなっている。
「心からな」
「そうなのね」
「八条学園じゃ沖縄料理も出て山羊料理もあるけれどな」
 それが美優の救いだった、だがそれでもこう言うのだった。
「もっと沖縄料理メジャーになって欲しいな」
「地元の料理って誰もそう思うわよね」
 琴乃は美優のその言葉に頷いた、そしてお好み焼きを食べてそれからサイダーを飲んでこう言ったのだった。
「ふう、いいわ」
「お好み焼きとサイダーね」
「いい組み合わせよね」
「たこ焼きでもそうだけれど」
 もう一つの大阪名物の炭水化物もの、これもだというのだ。
「お好み焼きもね」
「サイダーとかコーラが合うのよね」
「それも抜群にね」
「そう、これはないっていう位に」
 お好み焼きと一緒に楽しみながらの言葉だ。
「合うのよね」
「ビールが一番だけれどね」
 彩夏はにこりとしてこれを話に出した。
「あれがね」
「そうよね、けれど今はね」
「そう、飲めないからね」
 学校の方で禁止されたからだ、飲酒について緩やかなのは八条学園がある八条町と八条グループだけだ。
「だから今はね」
「こうしてよね」
「サイダーで我慢して」
「それでよね」 
 こう話して食べていく、そして。
 景子だ、サイダーを楽しみつつ言った。
「まあ広島でも大阪でも」
「サイダーは合うわね」
「炭酸系が」
「それを考えたらこだわらなくてもいいかしら」
 こう言うのだった。
「やっぱりね」
「まあ美味いことは美味いよな」
 美優も味自体は悪いとは言っていない、問題は呼び名である。 
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