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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第二六幕 「イカれた現実へようこそ」

 
前書き
ちょっと自分でも何やりたかったのか分かんない回
それはそれとして、総合評価が200点を超えました。みなさんに感謝! 

 
前回のあらすじ:イケメン降臨


「・・・よう、みんな。遅くなってゴメンな?」
「い、い、一夏・・・!!」
「・・・このタイミングでの登場とか、おいしすぎるでしょ。親友ながら憎い男だね?」
「しょうがないだろ?あの通路通るのに時間かかっちゃったんだから・・・ま、遮断バリアは“零落白夜”でパリンと割れたがな」

軽く笑いながら肩にかけた雪片を構え直した一夏に鈴は瞳を潤ませる。自身の絶体絶命の危機にさっそうと現れた意中の人、みたいなシチュエーションに感動しているのかもしれない。と思っていたら・・・

「・・・このドアホ一夏!!もっと早く来なさいよ!!こちとら大変だったんだからね!?」
「おぉう、手厳しいな・・・すまん鈴。それにユウと更識さんも」
「今度こそ助かったってことでいいんだよね・・・?」
「・・・流石に真っ二つになったら、動きようがない」
「・・・・・・はぁぁーーー・・・まさかこんなことになるなんて、犠牲者が出なかったのは本当に運が良かったよ・・・」

そんな独り言を漏らし、安心したように息を吐くユウ。機体の試運転をしたその日に命の掛かった戦闘に巻き込まれると思っていなかったユウは、どっと疲れが出たのか深い深いため息を漏らしてその場に座り込んだ。鈴はもはや重荷でしかないISの展開を解除して自分の足でアリーナに立ち、一夏に意味もなく突っかかっている。よく見ると眼元が潤んでいるため余程先ほどの絶体絶命の状況が怖かったと見える。
そんな中、その隣にいる簪はアンノウンの残骸を険しい顔で見つめている。
緊張から解き放たれたことで残りの3人は気付いていないが、曲がりなりにも学園の暗部と関わっている簪はそのISの異常な点に気付いていた。

「・・・やはり、無人機」

生命反応が全くなかったことと戦闘中で少し“ハイ”になっていたせいか今まで気にしなかったが、インフィニット・ストラトスは本来人間の女性が触れなければ起動できない兵器である。無論、無人機など見たことも聞いたことも、噂さえ耳にしたことは無い。だが、それは現に目の前に現れた。
この無人機がどこから来て、誰が造り、何のために学園を襲撃したのかは分からない。
だがもしも、これがどこかの組織で運用されているものならば。もしこれが量産されたならば。もしこの機体の残骸から、無人ISを製造するノウハウが得られてしまったら。
おそらく男性のIS適性者など話にならないほどの大事件になる。間違いなく世界のパワーバランスが崩れ、各国が無人ISの開発に躍起になる。そして行き過ぎた兵器を持った人類が進む道は・・・


―――ズキッ


「――ッ!?」
「え?」
「――な、何!?」


そこまで考えた瞬間、突然簪の頭に軽い頭痛が起きる。ほぼ同時に一夏が誰かに呼ばれたように後ろを振り返り、鈴が唐突に混乱する。アリーナから見る佐藤さんとユウは何が起きたかわからずそんな3人を不思議そうな目で見つめる。
3人が見た先にあったのは破壊されたIS・・・だったもの。


バキッ、バキバキ、ミキッ・・・

ガシュッ、ガコン!ギギギギ・・・ガキャン!!

ガシャーン!ガシャーン!ガキーン!


「な、な、な、な・・・」
「どうし・・・・・・何だ、アレ!?」
「な、何じゃこりゃぁぁ―――!!」
『・・・・・・・・・きがくるっとる』

皆の目に映った物・・・それは装甲がひとりでに動きだし、目まぐるしく装甲をスライド・展開・格納させパーツがあらぬ方向に回転したりしながら急激に形を変える、二つに割れたアンノウンの姿だった。

その非常にインチキ臭い変形の後に・・・真っ二つになったアンノウンは――

≪警告!敵性ISの再起動を確認!≫

――何と、それぞれ2機のISとなって立ち上がっていた。


「プ、プラナリアかお前はーーー!!」
「むしろイス○フェルだぁぁーーー!?」
「いや、どちらかというと、○竜人・・・!!」

割と余裕あるだろお前ら、と言いたくなる会話だが、彼らには全く余裕はない。
無人機というだけでも国際問題急な上に規格外の火力を持ったIS。しかも頭から真っ二つになった後のそれが突然動き出したら。いきなりマグロの解体ショーもびっくりなほどに素早く、かつどこがどう動いているのか訳の分からない動きで変形(というか最早変態)し、分裂したかのように2機になったら。

・・・ぶっちゃけ、非常にシュールである。恐らくあの2機は元々二つで一つのISであり、左右対称な形で変形合体する構造だったのだろう。というかそうでなかったらどこぞのデビルな細胞が使われていることになる。
言うまでもないが合体機構及び合体機構のあるISなどこの世には存在しないどころか発想すらない。そもそも人が乗ってるんだから変形や合体ができてたまるかという話である。

そんな馬鹿馬鹿しい存在が質量を伴って目の前に居たら、誰だってパニクる。実際みんなパニクっている。というか展開についていけず、正常な判断が困難な心理状態に追い込まれていたのだ。

「ちょちょちょっと!?どうすんのよ!?どうすんのよ!!」
「ごめん一夏、風花にはもうエネルギーが・・・」
「下がって。弐式には、まだ盾になるくらいの余裕は・・・」

そんな様子をあざ笑うかのように、2機は駆動音の唸りを上げる。その音が、既に一夏以外満身創痍なメンツを見て勝ち誇っているようだった。

既に鈴はエネルギー切れでISを展開することさえできず、ユウも密度の高い戦闘の所為で残存エネルギーは心許ない。簪と打鉄弐式は若干余裕があるが、最大火力であるマイクロミサイルは元々テスト発射する分しか積載していなかったためほとんど残っていない。白式もエネルギーに余裕があるが、射撃タイプ2機相手に残りのメンバーを守りながらの戦闘は厳しいと言わざるを得なかった。

「大丈夫だって」

だが、一夏は全く慌てた様子を見せなかった。なぜなら―――



――2機の背後に奔った2つの影が、敵を打ち払ってくれると確信していたからだ。


「一意専心――」

「電光石火――」


二つの影は、その身の丈に合わない大きな刀を握りしめ、残像すら見えそうな速度で踏み込む。ISの瞬時加速染みた速度で踏み込んだ二つの人影は―――


「「チェェェストォォォォォォォォォ!!!!」」


―――先ほど変形したばかりの2機のISを、今度は横一線に叩き斬った。
程なくして、斬られた上半身と共にバランスを失った下半身が地面に転がる。派手な金属音を立てて落ちたそのISは、今度こそ二度と動き出すことは無かった。



「・・・最後まで油断をするな、馬鹿者共。手痛いしっぺ返しを受けたくなかったら、な」
「あー、やっぱ刀は性に合わねぇなー。長物(ながもの)があればよかったんだが・・・っと、ユウ!それとその他全員。怪我はねえか?」

そこに立っていたのは千冬とジョウの二人だった。千冬は静かにブレードを降ろし、ジョウは不満そうにブレードを眺めた後、それを地面に突き刺して(主に)弟の安否を気遣う。

一瞬、一夏と佐藤さん以外の全員が何が起きたか理解できないままポカンと口をあけ・・・
やがて、その光景に違和感を覚え、更に一時してその違和感の正体に気付いた。
一夏と佐藤さんも他のメンバーほどではないものの顔を引きつらせる。
状況を整理するとこうだ。

①よく見なくてもこの二人、IS装着してない=生身の人間
(さっきの二人はISのハイパーセンサーでもはっきり捉えられない速度で踏み込んでいた)

②二人の持っている得物=IS用ブレード、推定重量40㎏超。
(人間にはただ持ち上げる事さえ大変。構えるとなるともはや論外) 

③2人の足元にあるもの=詳細なスペックは不明だが、現行最強の兵器の端くれ
(もし「生身でISを倒せますか?」と聞けば「寝言は寝て言いやがれ」と返ってくること請負)

ややあって、全員は自身の生存も先ほどの油断も激しい戦いの事もすべて忘れ、心の底で人生最大の絶叫をする。


((((この二人、 人 間 じ ゃ ね ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !?!?!?))))


こうしてIS学園を揺るがす大事件のラストはこの認識を持って締められた。
『ブリュンヒルデと残間承章は同レベルの世界に住んでおり、多分その世界を“魔界”と呼ぶのだろう』、と。



 = = =



もう説明するまでもないが、一応説明しておこう。
あの後すぐに白式の“零落白夜”で突破が可能であることに気付いた千冬は、一夏とジョウを引きつれて生徒の救出に向かった。・・・待機中の打鉄からブレード2本をぶんどって。
当然他の職員たちは“生身で行くのは危険だ”と再三促し自分たちも付いていこうとしたのだが、生徒たちが脱出してきた通路はISが通るのは些かばかり狭く、複数のISが同時に通るのは無理があったのだ。よしんば空中から攻めた所で数ばかり揃っているだけでは無用な犠牲を出す可能性が高い。アンノウン相手には一撃必殺の攻撃が求められた。
そして“私ならば一撃でアンノウンを沈められる。ジョウがいるなら一瞬だ”と言い切ったことと千冬がこの場の最高責任者であったこともあって、一夏と3人で突入することと相成ったのであった。

残された職員たちは“いや承章君まで連れて行くのか!?”とか“そのブレード生身でぶん回す気ですか!?”とか“いや・・・でも世界最強なら・・・いや!”など様々な思いを抱き悶々と帰りを待ったという。


また、3人が出発した直後に生徒会長がIS展開状態で突っ込んできてバリアを強行突破しようと突撃をかましそうになり、周囲に取り押さえられたとか。

「HA☆NA☆SE!!中に・・・中に私の可愛い簪ちゃんが!妹がいるのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「生徒会長御乱心ー!」
「取り押さえろー!!」

おわれ。 
 

 
後書き
推定40キロのブレード・・・実際の重さは知りませんが、対IS用ならそれぐらいの重さがあって然るべきかなと思って。

ガッツ「呼んだか?」
クラウド「・・・何か用か?」
カイム「・・・(呼ばれたような気がした)」
アリューゼ「誰か俺を呼んだか?」
ジークフリート「誰かに呼ばれたような気がしたが・・・」

お前らは帰ってくださいお願いします。 
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