| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ストライクウィッチーズ1995~時を越えた出会い~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四話 ロマーニャ基地①

 
前書き
ルビの振り方がイマイチよーわからん。
まあ、ないなら内で仕方がないのだけれども。

そういえば、ギルティギアの新作が決定したとか。
まったくこれっぽっちもストパンと関係ないですが、個人的にはめちゃめちゃテンションが上がる今日この頃です。 

 

――ロマーニャ基地 基地司令室

 基地に飛行艇が到着してから数時間。辺りはすっかり暗くなり、夕食と入浴を終えたウィッチらは、自室で思い思いに消灯までの時間を過ごしていた。
 そんなロマーニャ基地の司令室に、なにやら深刻そうな面持ちで集まる面々がいる。隊長であるミーナと、戦闘隊長である坂本。それから、隊の中核戦力を成すバルクホルンとシャーリーの両大尉だった。

「……さて、一体どうしたものかな」
「やっぱり、美緒と同じ扶桑のウィッチだと思うのだけれど……」

 話題となっているのは、当然のことながら和音の事だった。意味不明な問いを発して気絶した和音をそのままにしておくこともできず、ひとまずここロマーニャ基地に運び込んだのだが、その後からはちょっとした騒動だったと言っていい。

「扶桑人であることは確かだろうが、海軍でも陸軍でもないな。それに、あんなユニットは見たこともない」

 気絶した和音を医務室に運び、さて身元は何処だろうという話になったのだが、これが一向に判らない。少なくとも扶桑人であることは確かだが、着ている服も現行の陸軍や海軍とは全く違うものだ。
 そして極め付けがストライカーユニットだ。それとなく整備班に触らせたところ、どう考えても現行の技術で作られたユニットではない、などという前代未聞の返事が返って来たのである。

「ところでリベリアン。帰って来てからあの未知のユニットを弄り回していたようだが、何か分かったのか?」

 腕組みをしたバルクホルンが言うと、いつもは朗らかなシャーリーが珍しく気まずげに答えた。ウィッチでありながら自身のユニットに独自の改良を加えるなど、ユニット関連の技術に一家言持つシャーリーは、整備班と共に和音のユニットを弄っていたのだ。
 が、しかし。

「いやそれがさぁ、見た目は確かにジェットストライカーっぽいんだけど……」
「ふむ、それで?」
「正直言うと、よく分かんないんだ」

 あんなユニット見たことないよ、と付け加えるシャーリー。
 自身のユニットをカリカリにチューンしているシャーリーである。大抵のユニットは触ればある程度の事がわかるものなのだが、今回に限っては全く手ごたえがなかったという。

「ジェットストライカーはまだ開発中の軍事機密よ。カールスラント以外で理論の完成があったとは聞いていないのだけれど、どうして扶桑のウィッチが?」
「私に訊かないでくれ、ミーナ。さすがにまだ扶桑でもジェットストライカーの開発はしていないはずだぞ? 開発されるとしたらもっと先の話だろうな」

 ミーナは坂本に対して話を振るが、こちらも心当たりがないらしい。
 こうなってくるとますます身元や出自が分からない。扱いにも困ろうというものだ。

「シャーリーと一緒に私もみたんだが、あんなユニットを開発できる国があるとは思えん」

 さながら未来のユニットのようだ、とは立ち会った整備士の弁である。

「未来だと? まさか、そんな話があるものか」

 バルクホルンが一蹴する。まあ、それがごく当然の反応だろう。
 よもや本当に未来からの迷子であるなどだれが予想できようか。

「ははっ! 未来のユニットか。もしそうだったら面白いよな。実はさ、リベリオンでもそういう映画があるんだよ。ちょっと変わった科学者が車を改造してタイムマシンを作るんだけどさ、実験の途中に知り合いの男の子を巻き込んで――」
「はいはい、そこまでよシャーリーさん」

 さすがに冗談ばかり言ってもいられない。彼女がウィッチである以上、所属があることは明らかだ。早く身元を特定せねばならないのである。……もっとも、無駄な努力ではあるのだが。

「ああ、そうそう。一応ドックタグみたいなものはあったぞ?」

 思い出したように言うシャーリーが、小さな金属片を坂本に手渡す。

「首にかかってたんだ。だけど、扶桑語は難しくて読めないんだよ。少佐ならわかるだろ?」

 坂本はそれを受け取ると、ミーナに軽く目配せをしてから部屋を出た。





 自室へと足早に戻ってきた坂本は、急いで机の明かりをつけると受け取ったドッグタグを見る。本人とも話が出来ず、ユニットの解析もお手上げとなっては、唯一これだけが手がかりなのだ。ともかく所属と名前くらいは分かるだろうと思い、坂本はシャーリーから受け取ったドックタグを調べてみる。

「む……暗くてよく見えんな……」

 明かりに近づけて目を凝らす。と、そこには――


 氏名:沖田 和音
 年齢:14歳
 所属:扶桑皇国空軍第7航空団第305飛行隊
 階級:少尉
 生年月日:1981年3月14日


「なん……だと……!?」

 決してありえないはずの生年月日を見てしまった瞬間、坂本の脳裏にある可能性が浮かんだ。到底信じられないようなそれは、しかし何もかも辻褄が合うし、実際問題として正解である。背中を嫌な背が伝い、坂本はそっと明かりを絞って布団に倒れ込んだ。

(いかんな……今日はどうにも疲れているらしい……)

 まだ本当かどうかは分からない。しかし、普段冷静な坂本が動揺するのには十分な衝撃をそのドッグタグは与えたのだった。

「沖田和音……お前は、まさか……」

 ――本当に未来からやって来たのか?

 声になる事の無かった問いを飲み込んで、坂本はゆっくりと眠りに落ちていった。








 ……――いいかい和音? 空は決して優しくない。それを覚えておくんだよ

 いつの頃だっただろうか、覚えている限りではまだ自分が10歳にもならなかった頃。
 小さな池のある庭の縁側で、よく祖母からウィッチの話を聞いた。
 そんなとき、決まって祖母はそう言って私の瞳を覗き込んでいた。

 ……なんで? 空を飛ぶの、楽しくないの?

 私の魔法力が現れたのは8歳の頃だった。血沸き肉躍る冒険譚などが大好きだった私は、かつてネウロイと戦ったエースウィッチの自伝や記録を読むのが好きだった。
 ある意味では、それが私をウィッチとしての道に歩ませた原点である。

 ……――そうさねぇ、楽しくはあったさ。ただ、それだけじゃあないんだよ。

 趣味で集めていた風車を回しながら祖母は言った。
 元々、祖母は軍人一家の出だったらしい。けど、そんなお堅い一族の出身とは思えないほど柔軟で優しい人だった。上がりを迎えて結婚し、私のお母さんを産んで育て、嫁に出すことも全然躊躇しなかったという。おかげで私はごく普通の一家に生まれ育った。

 ……――空ってのはね、人がいちゃいけない世界なんだよ。だからとっても怖い場所だよ。
 ……お空は怖いところなの?
 ……――ああ、もちろんさね。だけどね、それでも空を愛してあげられるようなきれいな心の娘には、それはそれは素晴らしい贈り物をしてくれるんだよ。

 かつてはウィッチであり、今は魔法力を失った祖母は、よくそんな話をしてくれた。
 家族のだれもがウィッチになるのを反対した中で、祖母だけが賛成してくれたのだ。

 ……――ウィッチってのはね、成るか成らないかの世界じゃないのさ。空に惹かれる子は自然と空に行くようになるんだよ……まあ、そういう星の下に生まれついたんだろうさ……

 普段は穏和な母が激昂してまでウィッチになるのを反対した時、祖母はそう言って頭を撫でてくれたのだ。その優しさは、今でも春の日の温かさのように胸の中に残っている。
 だけどその時、祖母は何時になく真剣な瞳で言ったのだ。

 ……――いいかい和音? 空は決して優しくない。それを覚えておくんだよ、と。

 それから私はウィッチになる決意を固め、両親を説得した。
 ウィッチの養成校に入る時、今まで会った事もないような人がいっぱい来て、祖母が昔は凄いウィッチだったことをそこで初めて知らされた。祖母は、自分の事をあまり話さない人だったから、なんだかとても不思議な気分だった。

 ……貴方が、――さんのお孫さん? へぇ、いい顔をしてるわね

 そこで会った女の人は、昔の祖母を知る人だった……らしい。
 〝空を飛んでみたくない?〟というその人の言葉に、私はほぼ無意識で頷いていたと思う。

 あれから私はウィッチになり、そして――――






「はっ!? …………夢、か」

 驚きで目を覚ますと、そこはまるで見覚えのない場所だった。
 背中には柔らかい毛布の感触がある。首だけを動かして薄暗い部屋を見回してみると、どうやら医務室か何かのようである。自分はそこに寝かされているらしい。

「あれ、わたしはどうして……?」

 未だ覚醒しきっていない頭を振って、何とか記憶を引きずり出す。
 そうだ、私は訓練の途中で気が遠くなって、それから、それから――

「あの、起きてますか?」

 そこまで考えた時、コンコンと扉がノックされ、外から声を掛けられた。
 声の主が扶桑語であったと言う事は、ここはやはり扶桑なのだろうか?

「あ、はい。どうぞ」

 自分の部屋でもないのにどうぞも何もあったものではないが、とりあえずそう言っておく。
 カチャリ、と音がしてドアノブが回ると、ゆっくりと扉が開いた。ようやくできた人1人分の隙間から入って来たのは、多分自分と同い年くらいの少女だった。
 なんというか、小動物然とした愛嬌のある顔立ちだ。小型犬みたい。

「あ、もう起きてたんだね。お腹空いてない?」
「えっ? ああ、はい。……一応は」

 言われてみれば、とお腹をさする。今の今まで気がつかなかったが、すっかりお腹が空いてしまっていた。どうしようかと思ったところで、目の前にコトン、っとお椀の載った盆が置かれた。……お粥?

「はい、リーネちゃんと私で作ったお粥だよ。ちゃんと食べてね」
「あ、ありがとうございます……?」

 そのリーネちゃんとやらがいったい誰なのか気になったが、とりあえずそれを無視してお粥をすする。程よい暖かさのそれは、どうやら卵粥のようだった。我ながら胃袋というのは実に正直なもので、呑気にお粥を啜っている場合ではないというのに、絶妙な出汁と卵の味わいにあっさりと白旗を上げてしまっていた。

「……えっと、沖田和音さん、だよね?」
「どうして私の名前を?」

 お粥をすする私を見ながら、名前も知らない少女がそう言ってきた。

「ついさっき、坂本さんに聞きました。お話しするときに名前を知らないと不便かな、って」
「はぁ、そうでしたか……」

 きょとん、と小首をかしげて見せる。なんというか、動作の一つ一つが凄く可愛らしい。童顔であるという点もそうだが、保護欲を掻き立てられそうな感じがするのだ。
 そんな私に構うことなく、彼女が話を続ける。

「昨日は凄かったんですよ~! 基地中が沖田さんの事でもちきりでした」

 ――そうだ。
 私は唐突に思い出した。ここで、確かめなくてはいけないこと。

「あ、あの!」
「……?」
「失礼ですが、お名前と、それから今日の日付を教えていただけますか?」

 今更な悪あがきかも知れないが、それでも重要なことなのだ。
 少なくとも、私にとっては。

「あ、自己紹介がまだですよね。ごめんなさい」

 あはは、笑顔を浮かべて彼女は言った。

「私、宮藤芳佳です! 階級は、えっと……軍曹、だったかな? お料理とか得意ですよ! ちなみに今日は1945年の4月4日です。時間は……あ、ちょうど朝の9時ですね」

 ……どうやら、本当にここは過去の世界らしい。
 嘘をついているようには見えないし、壁のカレンダーを見てもそうだ。おまけに寝ている間に日付が変わっていたらしい。と言う事は今は朝なのか。カーテンがしてあるからわからなかった。朝の9時という事は、おそらく起きたであろうことを見越して朝ご飯を持って来てくれたのだろう。
 だがしかし、そんなことよりも私の頭は他の事でいっぱいだった。

(宮藤先生……若いころはこうだったんだ……)

 ――宮藤芳佳
 扶桑海軍史上最大の問題児かつ功労者。
 魔法医療の第一人者であり、宮藤一郎博士を父に持つ扶桑海軍の伝説的なウィッチ。
 戦後、欧州で医学を学び、実家の診療所を発展させた医学校を設立した医学の母として知らぬ者はいない有名人。
 ガリア、ヴェネツィア両都市解放の戦功を賞して勲章を授与される予定だったにもかかわらず、当時の海軍大将に向かって「あ、今日は往診の日です」と言い放ち、輝かしい勲章などには見向きもせず往診鞄を持って行ってしまったという途方もない逸話の持ち主だ。
 おまけに、式典の会場にあったユニットを「ちょっと失礼します」といって強引に借りて飛んで行ってしまったというのだからすごい。

(こんな人だったんだ……)

 フルネームを聞いてようやく思い出す事ができた。
 若いころの姿を知らない私だが、たしかに面影があるかもしれない。

「ああ! 大事なこと思い出しました!」
「な、なんでしょう?」
「坂本さんが、起きられるようなら司令室に来いって言ってました」

 なるほど。当然だろう。寝ている間に身元を調べたのかもしれないが、分かるはずがない。さりとて未来人である……なんてことは思わないだろうしなぁ。

「じゃあ、食器はそこに置いといてくださいね」
「あ、宮藤先……じゃなくて、宮藤さん!」

私は慌てて宮藤さんを呼び止めた。

「その……色々ありがとうございました」

 すると、嬉しかったの恥ずかしかったのか、宮藤さんは頬を赤く染めてこういった。

「ううん、気にしないで。あと、私の事は芳佳でいいよ」

 そう言うと、宮藤さんはそのまま走り去ってしまった。
 私も、そろそろ起き上がって司令室とやらに行かないと。






 ――ロマーニャ基地 司令室

「失礼します……沖田和音、参りました」

 朝方、とは言っても既に9時過ぎなわけだが、明るくなった基地の廊下を通って、和音は基地の司令室にやって来ていた。
 待っていたのは坂本美緒、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの両名である。

「いらっしゃい。よく眠れたかしら?」
「はい、おかげさまで」

 ミーナの優しい微笑みにつられて笑いながら和音が答える。
 もっと厳しい尋問でもされるかと思っていたので、内心ほっとしていたのだ。

「私は、ここ第501統合戦闘航空団の隊長を務めるミーナ・ディートリンデ・ヴィルケよ。階級は中佐。見ての通り、カールスラントの出身ね」

 羽ペンをクルクルと回しながら自己紹介をするミーナ。
 同時に、傍らに立つ坂本に目で合図を送る。

「……コホン。あー、私は扶桑海軍所属の坂本美緒だ。今は501の戦闘隊長を務めている」

 自前の軍刀を床に突きながら、坂本はやや言いにくそうに、チラチラとミーナの方に視線を送りながら言葉を紡ぐ。

「申し訳ないが、お前が寝ている間に少し身元を調べさせてもらった。もらったんだが……」
「……結局わからなかった、と言う事ではありませんか?」

 先回りして和音が言うと、驚いたようにミーナと坂本が目を見張る。
 さすがにそこまで事態を把握しているとは思っていなかったのだろう。
 しかし、そこは現役の司令官。すぐさま表情を戻すと、先ほどよりも強い調子で続けた。

「そうか、お前もそこまでわかっていたか……ならば話は早い。単刀直入に訊く。――お前はいったい何者だ?」
「…………」

 鋭い刃のような視線を向けられて和音は思わずたじろいだ。答えなくてはいけないのに、口を開く事ができない。言い知れぬ威圧感が全身を縛っていた。

「ウチの整備班に貴方のユニットを調べてもらったのだけれど、あれはジェットストライカー、それもかなり高性能なものだわ。だけど、ジェットストライカーはまだ本国でも開発中の筈なの。それをどうして貴方が持っているのかしら?」

 ミーナもまた、強い疑念の色を浮かべて訊いてくる。

「大丈夫。貴女の身の安全は保障するし、取って食べちゃうようなことはしないわ」

 だからお願い、と言われ、和音もまた覚悟を決める。
 一度大きく深呼吸をして正面から2人を見つめると、和音はよく通る声で話し始めた。

「私は、扶桑皇国空軍第7航空団第305飛行隊所属、沖田和音です。年齢は14歳で、階級は少尉であります」
「「……………………」」
「ユニットを調べたのであればお気づきかも知れませんが、私はこの時代の人間ではありません」
「「――――っ!!」」

 無言のまま小さく息を呑む2人。それに構わず和音は先を続けた。

「私が生まれたのは1981年です。つまり――」



「――お2人から見て、私は未来の時代の人間と言う事になります」

 告げられた真実に、彫像のように固まったまま動かない2人。
 これが、時代を越えたウィッチらの邂逅であった――



 続く
 
 

 
後書き
一向に話が進んでなくて申し訳ないッス。
多分、そのうち、きっと、戦闘パートに入ります。(汗) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧