ヘタリア大帝国
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TURN76 青い石の力その八
「あの国は美食家っていうけれどね」
「フランスの奴にはどれだけ馬鹿にされたかわからねえよ」
イギリスはその料理をけなされ続けている。これはフランスからだけではない。
「けれどあいつもな」
「コーヒーなんて飲むのよね」
「あいつの味覚もわからねえよ」
「そうそう、他人や他国のこと言えないじゃない」
「コーヒーなんて飲めるかよ」
イギリスはどうしてもコーヒーを飲まなかった、セーラとマリーも同じだ。
「本当にな」
「お部屋はいいとしてね」
マリーはセーラがいるロイヤルスイートはよしとした。
「それでもコーヒーはね」
「駄目だな。ただな」
「ただって?」
「いや、ドクツのディナーな」
さっき食べたそれの話だ。
「あれどんなご馳走だよ」
「あれ凄かったよね」
マリーもドクツのディナーについては驚きを隠せない。
「美味し過ぎるっていうか」
「違うよな、何だよあのご馳走」
「天才的なシェフですね」
セーラも言う。
「あのディナーを作ったのは」
「ドクツは毎日あんな美味しいもの作ってるのかよ」
「美食ですね、本当に」
「全くだよ」
彼等はドクツのディナーはこう見ていた、だがだった。
ヒムラーは官邸において微妙な顔でこう言っていた。
「ディナーは豪華なものにするつもりだったけれどね」
「はい、イタリンに合わせて」
「そのつもりでしたが」
「けれどね」
こう表向きの側近達に言うのだった。
「ソビエト側が抗議してきたからね」
「そうです。贅沢なものは出すなと言って」
「それであのメニューになりました」
「ソーセージにアイスバインにね」
ヒムラーは具体的なメニューを言っていく。
「ポタージュにジャガイモのサラダに黒パン、ビールそれにジャーマンポテト」
「全てありきたりのメニューですね」
「ドクツの家庭料理です」
「しかも調味料も節約したよ」
ヒムラーはこのことも言った。
「味はかなり落としてるよ」
「あんなのを出してよかったのでしょうか」
「果たして」
「ソビエト側は満足していたけれどね」
ヒムラーは難しい顔で述べる。
「エイリス側はこんな美味いものがあるのかって顔だったけれど」
「それでもイタリン側は泣いていましたよ」
「こんなまずいものがあるのかと」
「あれが普通だよ。どっちもおかしいんだよ」
ソビエトとエイリスがだというのだ。
「ソビエトは皆同じものを食べないと駄目っていうからね」
「ソビエトでは誰もが給食を食べているとか」
「同じメニューを」
「だから贅沢は嫌だってね。間違ってるね」
ヒムラーから見ればそうなることだった。
彼はそれなりに贅沢を求めている、しかしそれがないからだというのだ。
だがあくまで今は質素倹約という美徳の仮面を被ってこう言うのだった。
「まあそれはいいけれどね」
「美徳ではありますね」
「それはそうですが」
「しかしそれを国際会議でのディナーで言うとはね」
「何か違いますね」
「あの国は」
「うん、まあ喜ばせたからいいよ」
それならだとだ、ヒムラーは割り切ることにした。
「エイリスはこんな美味いものがっていう顔だったし」
「あの国は普段何を食べているのでしょうか」
「あの料理であの顔とは」
「王族であれでは民衆の料理は一体」
「どんなものか」
「ああ、あそこの料理は口にしないことだよ」
ヒムラーは右手を横に振ってあっさりと言った。
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