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好き勝手に生きる!

作者:月下美人
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第二十七話「止まる時と動き出す時」

 
前書き
前話のダイジェストは申し訳ありませんでした。ここまでの話ではあまり旨みがなかったため、ついスキップしてしまいました。

今話からは平常通りにストーリを展開させて頂きます!
 

 


「エクスカリバーの破壊ってあなたたちね……」


「リアス、あなたの眷属はとても行動的ね」


「そう言われるとぐうの音も出ないのが痛いところだわ」


 はぁ~、と大きくため息をつき首を振る部長。


「裕斗がここにいないのはハルパー・ガリレイを追っているからかしら?」


「は、はい……それとゼノヴィアとイリスも一緒だと思います。携帯がありますから、見つけ次第連絡を取ろうかと」


「復讐の権化と化している裕斗がそう簡単に電話に出るかしら」


 おおう、それはもっともな意見です。


 あの後、ハルパー・ガリレイっていう奴ともう一人の男は撤退し、俺たちもその場を離れ近くにある公園の噴水までやって来た。


 小猫ちゃんと並んで正座を強いられ、現在進行形で部長のお説教が行われている。


「小猫はなんで加担したの?」


「……裕斗先輩がいなくなるのはイヤです」


 小猫ちゃんは部長の目を真っ直ぐ見ながら自分の想いを正直に口にした。そんな小猫ちゃんに部長が困惑顔になる。


「――過ぎたことをどうこういうのもあれね。ただ、あなたたちがやったことは、下手をすれば悪魔の世界に影響を与えるかもしれなかった。それはわかるわね?」


「はい」


「……はい」


 神妙な顔でうなずく俺たち。正直、スケールとかそんなもの一切を度外視して漠然とした思いで行動していた。部長の言う通り下手すりゃ大事になるところだったのかもしれない。


 冷や汗ものだぜ……危機感が足りな過ぎだった。


 浅はかで浅慮だった。恥じ入るばかりだ。


「裕斗は使い魔に探索に行かせているから、発見次第みんなで迎えに行きましょう。それからのことはその時になって決めるわ。いいわね?」


 頷く俺たち。部長の命令に従います!


「でもよかったわ。あなたたちが無事で……。本当に心配ばかりかけて」


 俺と小猫ちゃんをぎゅっと抱き締めてくれる部長。部長の声音から本当に心の底から心配をかけたのだと分かった。


 優しく頭を撫でる感触。


 ――部長、すみません……。こんな俺たちのことを……。


 部長の優しさが胸に染みる。俺たちは幸せ者だ。だって、こんなにも優しい主を得たんだもん……。


「よい主従愛ですね」


 微笑みながらそう評する生徒会長。そうだった、ここには生徒会長もいるんだった!


「見苦しいものを見せたわね、ソーナ」


「なにをいってるの。とても良い主従愛よ」


 そういってくれると助かります。やっべ、マジ恥ずかしい……。


 羞恥心に心の中で悶えていると部長が微笑んだ。なんだかその美しい笑みにぞっとするのは俺の感性がいかれたからか。


「さてイッセー、お尻を出しなさい」


 へ? な、なぜ故にですか……?


 にっこりと微笑む部長の右手に紅い魔力が集まる。


「下僕の躾も主の仕事でしょ。今回の罰として、お尻叩き百回よ」


 オウ……。


 なにも言葉が出ないことから俺の心境を察してほしい。





   †                    †                    †





 深夜の兵頭家。


 いつものように就寝の支度を整えた俺は自室のベッドで横になっていた。隣からはフローラルな良い香りが漂ってきている。


 そう、俺はアーシアと夜をともにしているのだ! 驚いたか、フハハハハハ!


 ……まあ、実際はエロエロなんかないですけどね。一人の夜が寂しいっていうから一緒に寝ているだけですけどね。でも、枕を抱きしめて潤んだ瞳で「……イッセーさん、一緒に寝てください」なんて言われた日には意識が冥界に飛ぶところだったぜ。


 そういう事情があり、俺とアーシアは一緒の布団で寝ている。アーシアはいつも寝付くのが速いから、その可愛らしい寝顔を独占し放題だ!


 そんな至福のひと時を迎えていると、不意に携帯が鳴った。


 相手は部長だった。


「もしもし? どうしたんですか部長」


『緊急事態よ。すぐにアーシアと一緒に学校に来てちょうだい』


「学校ですか? わかりました、すぐに向かいます」


『お願いね』


 なにやら緊迫した声の部長。緊急事態って言ってたけど、余程のことが起こったようだ。


 隣ですやすや眠るアーシアを起こし、半ば寝ぼけている彼女に制服に着替えてもらった俺たち。両親を起こさないように静かに家を出た。


 うちの家と学校はそんなに離れていない。そのため走れば十分くらいで着ける。


 息を切らせて校門前に到着すると、そこには部長と朱乃さん、小猫ちゃんの姿があった。


「部長」


「来たわね。ごめんなさいね、こんな時間に呼び出して」


「いえ、それは構わないんですけど。なにかあったんですか?」


「……堕天使コカビエルが接触してきたのよ。お兄様を引き出すために、この駒王学園で暴れると宣戦布告されたわ」


「サーゼクス様を? なぜそんなことを――」


「戦闘狂のコカビエルのことだわ、ただ戦いたいそうよ」


 なんつー理由だそりゃ! 自分の戦闘欲を満たすために戦争を吹っ掛けるなんて、自己中にも程があるだろう!


 確かコカビエルって堕天使の幹部で聖書にも出てくるんでしょ? ただのイカれた危ないやつじゃん!


 堕天使コカビエル、マジパネェ……。


「リアス先輩、学園を大きな結界で覆いました。これでよほどのことがない限り外には被害を及ぼしません」


 おお、匙じゃん。生徒会に所属する同級生で、生徒会長を主と仰ぐ俺と同じ『兵士』の悪魔。こいつも根が俺と通じるところがあるからすぐに意気投合したもんだ。


 駒王学園を目の前にした公園には俺たちオカルト研究部の他に生徒会も集結している。この場にいないのはレイと木場だけだ。


 レイは――あいつはなんだかんだでひょっこり顔を見せるような気がするから今は放っておくとして、問題は木場の奴だ。いまどこにいるんだあいつは?


 協会側は先の戦闘でイリナが負傷し、この場にはゼノヴィアだけ。


 向こうでは生徒会長が学園に張った結界の説明をしていた。


「この結界は被害を最小限に治めるものです。しかしながら、コカビエルほどの者なら本気を出せば結界など紙同前。この学園どころか地方都市そのものが壊滅するでしょう。加えて言うと、すでに校庭で力を溜めているコカビエルの姿を私の下僕が捉えました」


 会長の言葉に一同が絶句した。それほどの規模なのかよ……!


 なんつー敵だ……同じ堕天使でも夕菜ちゃんとはまさしく別格だな。


 そんな奴がこの街で戦争を起こそうとしてんのかよ。


 ざけんなっ!


 好き勝手させるものかよ! 俺はこの街でアーシアたちと楽しく暮らしてウハウハなハーレム生活を築くんだ!


「私たちは学園の被害を最小限に留めるため結界を張り続けます。コカビエルたちの相手はリアス、あなたたちに任せるわ」


「ええ、それだけでも十分よ。ありがとね、ソーナ」


「……リアス、今からでも遅くはありません。あなたたちだけでコカビエルたちと相対するのは危険です。あなたのお兄さまに連絡を――」


「それならすでに打診済みですわ」


 会長の言葉に割って入る朱乃さん。部長が顔色を変えた。


「朱乃! あなたなにを――!」


「リアス、今は一刻を争うのよ。あなたがサーゼクスさまにご迷惑を掛けたくない気持ちもわかるわ。けれど、この街を任された者としての責務は果たさなければならないの。幹部が動いた以上、あなた個人で解決できる範疇を超えているわ。ここは魔王様の力を借りましょう」


 あんな真剣な顔で部長に詰め寄る朱乃さん、はじめて見た……。


 というか、プライベートでは「リアス」って呼ぶんだな。


 部長は小さくため息を吐くと静かにうなずいた。


 それを見た朱乃さんがいつものニコニコ顔になる。


「理解してくれて嬉しいですわ。ソーナさま、サーゼクスさまがご到着されるまで一時間はかかるそうです」


「一時間、それが私たちに残された時間なのですね……。わかりました、サーゼクスさまがいらっしゃるまでなんとしても結界は死守して見せます」


「よろしくお願いします」


 メガネを光らせて泰然と頷く会長。頼もしく見えるぜ……。


「一時間ね……やってやるわ。さあ、私の下僕悪魔たち。私たちの役割はオフェンスよ。今から学園内に突入してコカビエルの気を逸らすわ。これはフェニックス戦とは違い死闘よ。それでも言わせてもらうわ。誰一人欠けることなく生き残りなさい!」


『はい!』


 部長の激励で気合も入った。絶対に勝つ! そして生きて学園に通ってやる!


「兵頭! そっちは頼むぞ!」


「おう! お前もしっかりな!」


 匙と互いに拳を突き合い健闘を祈る。


 さあ、行こうぜドライグ! 俺たちの力を見せつけてやろうぜ!


【応っ! 相手はコカビエルか、不足はないぞ。見せてやろうではないか相棒。俺たちドラゴンの力を!】


 おうよ! やってやろうぜっ!


 堕天使の幹部がなんぼのもんじゃい!

 
 

 
後書き
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