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久遠の神話

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第四十六話 また一人その十

「そうしてくれよ」
「はい、それでそれは」
「ははは、俺は最後まで生き残るさ」
 笑って剣士としての立場から言ってみせたのだった。
「願いを適える為にな」
「期待してますとは言えないですね」
「だよな。同じ剣士だからな」
「僕は戦いを終わらせたいです」
 中田の戦う理由は聞いた、だがそれでも決めたことだ。
 決断を下すまでにかなりの時間がかかった、だからこそ一度決めたならだった。
「長く続いているこの戦いを」
「そうしたいんだな」
「はい」
 上城は確かな声で頷いた。
「絶対に」
「まあ。俺は家族が助かる方法が見つかったらな」
 それならというのだ。
「それでいいけれどな」
「お金で何とかならないですか」
「なったらいいな」
 実は中田にとってはこのケースも切実な願いだった。とにかく家族が助かればそれでいいのが彼の考えなのだ。
「本当にな」
「医学の進歩で」
「それか名医でもいればな」
「本当に誰かいればいいですね」
「そう思うさ。じゃあな」
「またですね」
「また飲んで食おうな」
 二人で話してそうしてだった。
 彼等は一旦分かれ上城は家に帰った。すると家に帰ってすぐに母親に呆れた声でこう言われるのだった。
「全く。あんたは」
「飲んできたこと?」
「その中田さんって人のところでよね」
「うん、ワインご馳走になったよ」
 母にこのことを素直に話す。
「お肉も貰ったし」
「ステーキでも頂いたの?」
「いや、羊だけれど」
「羊?ジンギスカン?」
「あっ、オープンで焼いたのをね」
 それを振舞われたことも母に話す。
「貰ったよ。それでワインもね」
「結構飲んだみたいね」
「うん、まあね」
「飲むのはいいけれど」
 玄関からあがる息子に母はさらに言う。出迎えに来ているのは母親として息子を気遣っているからであろうか。
「程々にね」
「節度を持って飲めっていうんだね」
「そう。お酒は百薬の長だけれど」
 それでもだというのだ。
「飲み過ぎると毒になるのよ」
「わかってるよ。まあとにかく」
「お風呂入りなさい」
「お風呂今誰か入ってるの?」
「誰も入ってないわよ」
 母は息子に話す。
「お父さんももうあがったし」
「そうなんだ」
「あんたで最後だから入ったらね」
「お湯落としておけっていうんだよね」
「ついでに洗っておいて」
 母は息子にさらに言う。
「浴槽もね」
「それもなの」
「そう。ちゃんとね」
「わかったよ。それじゃあね」
「そう。お酒を飲むのも御飯を食べるのもいいけれど」
「お風呂に入るのもだよね」
「最後はしっかりしなさい」
 母は少し厳しい声で我が子に告げる。
「お風呂も最後に奇麗にしてこそよ」
「入ったことになるっていうんだよね」
「お母さんいつも言ってるでしょ」
「うん」
 実際にいつも言っている。母はこうしたことには厳しいのだ。 
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