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万華鏡

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第三十二話 呉の街その六

「あそこまでね」
「江田島から広島へのフェリーも出てるから」
「それに乗って行かれたわ」
「それでなのね」
 琴乃はお好み焼きを切りながら頷いた。
「今はおられないのね」
「そうなの、試合がはじまるのは」 
 里香は自分の携帯を取り出した、そこで時間をチェックしてから琴乃に答えた。
「一時からだから」
「今日はかなり早いわね」
「門限間に合うの?」
「あっ、町に行かれるだけで球場にはね」
「行かれないのね」
「流石に野球観てだと四時半の門限には間に合わないじゃない」
「それはそうね」
 琴乃も話を聞いて納得する。
「だからなのね」
「そうなの、だからなの」
 里香はこう琴乃に話す。
「ただ広島に行かれてるらしいわ」
「広島市ねえ」
「あっ、メール来たわ」 
 里香はまた自分の携帯を見て答えた。丁度メールを知らせる音楽が鳴った、それはAKBの新曲だった。
「高見先輩からね」
「何て書いてあるの?メールに」
「今宇野先輩と二人でお好み焼き屋さんに入ってるみたいよ」
「先輩達もお好み焼き食べてるの」
「そう、広島のね」
 やはりそれだった、広島でのお好み焼きは。
「それ食べてるってね」
「先輩達もなの」
「宇野先輩が広島ならどうしてもって仰ってね」
 それでだというのだ。
「今入っておられるらしいわ」
「そうなのね」
「宇野先輩の大好物らしいのよ」
 その広島のお好み焼きがだというのだ。
「何でも久し振りだからって」
「そうなのね」
「ただ、今思い出したけれど」
「何?」
「いや、広島のお好み焼きってうちの学校の食堂にもなかった?」
 ここでこのことを思い出した里香だった。
「そうじゃなかった?」
「ああ、そういえばあったよな」 
 美優も言われてそのことを思い出した。
「広島焼きもな」
「広島焼きって名前でね」
 里香も言う。
「あったわね」
「それも何種類もな」
「イカ広島焼きとか海老広島焼きとか書いてあってな」
 意地でもお好み焼きとは書かないのは関西人の意地であろうか、少なくともお好み焼きとは書かれていないのだ。
「売ってたよな、結構人気あったな」
「皆それなりに頼んでたわよね」
「じゃあ宇野先輩そこでも食べてないか?広島焼きあるんだからな」
「多分だけれどね」
 ここで里香は自分の予想を話す。
「宇野先輩いつもそこでも食べてるけれど」
「それでもよね」
「こっちの本場の方がいいっていうのね」
「そう思うわ、お好み焼きも大阪が本場で」
 これはたこ焼きでもある、そちらもだ。
「そっちの方が美味しいから」
「串カツもね」
「そっちも」
「だから宇野先輩もね」
 その広島生まれの彼女もだというのだ。
「広島のお好み焼きが一番っていうのよ」
「そういえばこのお好み焼き美味しいし」
 景子はそのお好み焼きを食べつつ述べた。 
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