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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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予選開始

 そして午後、大会が始まる10分前にログインしたゲツガはすぐに中央にあるコロッセウムのような建物に向かう。

 コロッセウムの前には人だかりが出来ていた。やはり、今現在起動してるVRMMOが少ないから来ていると思われる初心者のプレイヤーが多く見られる。

「やっぱ人が多いな」

 人の群れを縫うように抜けて、ようやく参加者通用口に到着する。通用口には関係者じゃないものが立ち入れないように手をかざすと開くドアがあった。

 ここだけ現代的だなと思いながら手を置く。すると、〇の表示が出て扉が開く。その中に入ると数百人ものプレイヤーが広間に集められていた。

 中にはいろいろなプレイヤーがいた。相撲にプロレスラー、それに最初の闘技場にもいた空手のプレイヤー、それに珍しい軍隊式のコマンドサンボを使うプレイヤーも見受けられる。しかし、手馴れていないのがまるわかりなので残念だ。

「おい、あいつじゃねえか?」

「ああ、あいつだな。服が違うけど俺はあいつがゲリラを一撃で倒したのをこの目で見たから間違いないぜ」

 こそこそと呟くのが聞こえる。どうやら参加者の中にあの戦いを見たものがいるのだろう。まあ、あのような街のど真ん中で戦えば普通に群集の目を引くだろうし仕方ないことだ。

「おい」

と、不意に声をかけられる。声をかけた人物は自分のアバターとそこまで背の変わらないプレイヤーだ。しかし、このプレイヤーの放つオーラのようなものは周りにいるプレイヤーよりも存在感、威圧感の大きさが違う。

「おい、あいつ前大会の優勝者じゃねえの?」

「ああ、あれはジュンだ」

 また、こそこそした声が耳に入る。しかし、こいつの名前がジュンなら確実に俺はこいつを知っていることになる。こんな安直な名前はあいつしかいなし、それに前大会優勝者なら間違いないだろう。

「お前、一撃でゲリラを倒したらしいじゃねえか?」

「だったらどうなんだ?」

「俺と同じようなプレイヤーがいたから話してみただけだ」

 完全に純だ。このめんどくささ。

「それで、俺に話しかけて何かわかったことでもあったのか?」

「ああ大体な。俺に近いパワーを持っているが、今の俺にはかなわない」

「やってみないと分からないだろ」

「いいや、今の俺は負ける気がしない。今じゃこのアイテムのおかげでな」

 そう言って腕を見せる。そこには奈美が言っていた、前大会優勝者に送られるアイテムが付けられていた。

「一分耐えられれば勝てるかもしれないが、去年の俺はこれなしで勝ち上がって行っていたんだからな」

「その慢心がどれくらい自分を弱くしてるか俺が教えてやるからそれまで指をくわえて待ってな」

「はっ、威勢のいいやつだな。だけど」

 そしていきなり拳を目の前に突き出してくる。しかし、これはあてる気がないものだと気付いているゲツガはそのまま動かない。そして目の前で拳は止まる。

「俺には勝てない」

 そして拳を突き放すとそのまま奥の方に行ってしまった。

 面倒なことにな奴だなと思いながら自分は逆方向の壁に向かい歩き始める。ゲツガが通ろうとすると全員が道を開けていくためすぐに辿り着くことが出来た。そして背を壁に預けて座る。

 こうやって座るとまるでSAOのダンジョンの安全エリアを思い出す。いつもこうやって壁を背にしながら天井を仰いだもんだ。しばらく、ぼけーとしているとようやく予選が始まるのか、ブザーが鳴る。それと同時に自分の視界の端で赤い点滅するものが出てくる。これで自分が出る予選がわかる仕組みらしい。

「さてと……行きますかな」

 そしてゲツガは立ち上がり、開いていく扉に向かって歩き始めた。しかし、歩いていくのは二十人弱の人だけだ。この人数でトーナメントなんてすると相当な時間が経ってしまうのでそれを無くすための予選である。

 そして中央に出るとかなりSAOのコリニアにあった物に似ているつくりであった。しかし、それも仕方ないだろう。元はイタリアにあるコロッセウムを真似たものなのだから酷似していても不思議ではない。

 そしてそれぞれが出てきたところからばらけ始める。まだバトルが始まっていないためだろう。

 そしてプレイヤーがある程度はなれた瞬間に再びブザーが鳴った。ようやくバトルが始まったようだ。ゲツガはまず誰を狙おうかとあたりを見回すとほとんどのプレイヤーがゲツガを狙おうと接近していた。

「ま、あんなの人前でしたら、普通に狙われるよな」

 ゲツガはそう呟くとすぐにスイッチを切り替えた。そして、一番近くにいるプレイヤーを探してそちらのほうに接近する。そのプレイヤーはすぐに迎撃しようと拳を突き放ってくるがそれをカウンターで返して倒れたところにエルボーを顔面に落とす。この二撃でHPの四分の二を減らす。しかし、ここでこいつに止めを刺すのいいが、それだと他の処理が面倒になると考えいったん別の相手に切り替える。

 今度は空手のような構えを取っているプレイヤーに向けて接近する。そのプレイヤーはゲツガに気付くと離れようとする。

 それを追おうとするとプロレスラーの二人組みに進行を阻まれた。

「おい、こいつだろ?あの、ゲリラを一撃で倒したとか言うプレイヤー?」

「ああ、でもこんなひょろいのが本当に倒せたのか?絶対に嘘だろ?」

「退け!」

 ゲツガはそいつらの会話などを無視して足に蹴りを入れて転倒させた。しかし、すぐに立ち上がって鬼の形相で睨んでくる。

「人が話してる途中で蹴るとかマジないだろ!!」

「そうだそうだ!早くこいつを片付けようぜ!!」

 そう叫んでからまず一人がゲツガに突っ込んで来る。それをかわす。今度は、もう一人の方が突っ込んで来る。それをかわそうとすると後ろから腕を掴まれる。

 後ろを見るとさっきほどのプレイヤーが腕を掴んでいた。

「これで避けられんだろ」

「別に避けなくても防ぐ方法なんてあるだろ」

「は?」

 意味がわからないと言う風に声を上げるレスラーA。腕を掴んでいたレスラーAをそのまま倒れる勢いで突っ込んできているレスラーBへと巴投げで投げ飛ばした。

「はぁぁ!?」」

 それに驚きながら投げ飛ばされたレスラーAはそのままレスラーBと衝突する。二人はこんがらがりながらその場で倒れる。そこに近づいて踵落としを二人の顔面に一撃決めるとレスラーのプレイヤーは灰色になり、動かなくなった。

 それを見ていたプレイヤーたちは一瞬動きを鈍らせる。しかし、それでも突撃を止めない一人のプレイヤーがいた。

「はぁ!!」

 顔面を殴りかかってくる。しかも、速い。ゲツガは構えてその拳を自分の掌で払い落とす。その後追撃に蹴りを入れてくるが、それは受け止める。しかし、蹴りの威力が高かったためほんの少しHPが減る。

「まだまだ!!」

 そして、プレイヤーは地面に腕を突いて回転するように足を振り回す。この動きからするとカポエイラだろう。すぐに蹴りの範囲から離れて攻撃をかわす。

「さすがは、一日で名を轟かせるプレイヤー!やるじゃん!!」

「たった、三回の攻撃を放ってそれを受け止めたり避けたりしただけでわかるのか?」

「大体、予想は付く。そして、お前は俺には勝てないことも分かったぜ!これで終わらせてやる!!」

 そう叫んで突っ込んで来る。まずは蹴りで鳩尾を狙ってくる。それをかわすがそのまま地面についている足を軸にしてそのままゲツガのいるほうに薙いでくる。それを足の上に手を置いて跳んで避ける。しかし、それでもカポエイラのプレイヤーの攻撃は終わらない。

 薙いだ足を素早く地面につけるとまだ空中にいるゲツガに向かって下から蹴りを入れてい来る。

「おらぁ!」

 しかし、ゲツガはその攻撃を慌てもせずに落ち着いて対処する。すぐに足を体を捻って交わすとそのまま手刀を振り下ろす。それをガードしようとするがそのガードした腕が折れるような音がするとそのまま頭部にめり込んだ。そのまま手を頭に置き、そのまま顔面に膝蹴りを決める。そしてHPは止まることを知らずにそのまま空にした。

「ガ……ハッ……」

「誰がお前に勝てないって?」

 ゲツガは静かにそういった。

「勝てると予想するならもっと注意深く観察しろよ。大体、確実に当たると思ってるんじゃねえよ」

 そして、そのプレイヤーも体が灰色になって負けが決まった。そして次のプレイヤーの狙いを定めるためにあたりを見渡す。

「おい、あいつも結構名の知れたプレイヤーじゃなかったのかよ……」

「おいおい、番狂わせにもほどがあるだろ……」

あたりのプレイヤーはさっきの光景を見ていたのか愕然としていた。逆に先ほどの光景をみた観客は大いに沸いていた。

「おいさっきの奴を一撃で倒した奴見たかよ!?」

「ああ。あいつ確か、ニュービーだろ!?スゲーな!!」

 観客の声も入って耳に入ってくる。だが、そんな声の中、背筋が逆撫でされたような感覚に襲われる。

「あいつが……ゲツガ……」

「ッ!!」

 その声のほうを向く。しかし、たくさんの観客のせいで誰が言ったのかすらわからない。なんなんだ、さっきの声、それにあの神経を逆撫でされたような感覚は?

「今だ!」

 観客の方を向いている隙を突いたのか、何人かのプレイヤーが突っ込んで来るが、それをかわして一人ずつ鳩尾に掌底を叩き込みHPを減らしていく。

 やはり、ちゃんとして撃たなければ一撃は無理なのか。あの時はちゃんと全体重が拳に乗っていたから倒せたのだろう。それにコークスクリューも入れたおかげだろう。しかし、自分の攻撃は普通の相手なら二撃程度で落とせるだろうからいいとする。

 そしてゲツガは予選の相手をほぼ一人で倒したという記録を打ち立てて本戦へと勝ち上がった。 
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