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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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無印編 破壊者、魔法と出会う
無印~A's 空白期
  20話:いざ、限界まで走ろうか!

 
前書き
 
サウンドステージ分、できました。
  

 
 

「そう、魔力の収束を制御して。思い切り放出しつつ、外には逃がさない感じで」
「うぅぅ…ちょ、ちょっときついけど…」
「うん、そうだよ…そのまま維持して」
「うっ、うん…!」

おはようございます。絶賛魔法の練習中の、高町 なのはです。
あの事件、ジュエルシードを巡ったPT(プレシア・テスタロッサ)事件(名称はクロノ君から教えてもらいました)から、約二ヶ月。私は普段の平凡な小学三年生に戻る筈だったのですが、色々思うところありまして……。現在はユーノ君のご指導の元、魔法の練習は続けています。

「上手!すごいよなのは!」
「はぁ、はぁ…えへへ、ありがとう」

え?士君?…あぁ、まだ、言ってませんでしたね。士君は今…―――

「……ふぅ~…すぅ~……ふぅ~……」
〈そうです、魔力で自身を強化しつつ、自分の内側にある魔力の流れを感じてください〉
「…すぅ~…ふぅ~……」

少し離れた場所で、目を閉じ座禅を組みながら深い呼吸を繰り返しています。どうやら今日は、魔力運用の練習のようで。こちらの練習が終わった事にも気づいていない様子です。

〈…マスター、なのはさんが練習を終えたようです〉
「……わかった…」

士君のデバイスである、トリックスターの声に答え士君はゆっくり目を開ける。座禅を解き、ゆっくりと立ち上がりこちらに振り向く。

「…悪い、待たせたか?」
「あ、ううん。大丈夫」

私がそう答えると同時に、私の服のポケットに入れていた携帯が突如鳴り響きました。少し驚きながら、携帯を取り出す。

「はいもしもし、なのはです」
『は~い!おっはようなのはちゃん!』
「エイミィさん!」
『おはよう、なのは』
「うん、おはようクロノ君」

電話に出てみると、すぐにエイミィさんの声が聞こえてきた。その後にもクロノ君の声。今回の電話は、管理局の時空航行艦アースラからの連絡でした。
士君がこちらを見ながらスピーカー、スピーカー、とジェスチャーしてきたので、私は二人にも聞こえるようにスピーカーフォンのボタンを押す。

『どうだい?魔法の練習は順調かい?』
「うん、作ってもらったテキストわかりやすいし、ユーノ君は教えてくれてるし」
「俺も同じくだ」
『なによりだ』

今の会話からもわかる通り、私と士君はクロノ君の提供してくれた魔法の教科書に倣いながら(士君は大体読む程度で済ませてますが)練習を進めています。

『しっかし驚きだよね~!二人とも魔法の基礎の“き”の字も知らなくて、あんなに魔法使ってたなんて!』
「にゃはは、その…きっとレイジングハートが優秀だったからですよ」
『そんなことないわよ』
「あ、リンディさん」

エイミィさんの言葉に答えていると、少し奥の方からリンディさんの声が聞こえてきた。

『優れたデバイスである程、使い手が優れていなければ、その性能を引き出す事はできないもの』
「言うなれば、どんなに性能のいいバイクでも、知識のないなのはが乗ったらすぐ事故る、みたいな話だな」
「まぁ、意味合いとしてはそうだね。それにレイジングハートはもう、完全になのはが自分のマスターだって認めてるし」

レイジングハートはユーノ君のその言葉に答えるように、キラリと一瞬輝く。
なんか…ちょっと恥ずかしいかな?

『そう…なのはさんも士君も、魔導士としてのあふれる才能と未来があるわ』
「は、はい…」

あ、この感じ…いつもの来るかな?

『だからねぇ、今の学校卒業してからでもいいから、基本業務の希望も聞くから、やっぱり家(管理局)に就職しない?お給料はいいし、福利厚生ばっちりだし―――』
「リンディさん!前にも言った通り、俺達の世界のこの国では中三まで、つまり十五歳まで義務教育となってる!最低でも、それぐらいまで待ってくれないとこっちも困るって!」
『士君の言う通りですよ、艦長。後で調べた結果、士君の言っている事は本当の事ですし』
『う~ん、今は小三だから後六年か~…短いようで長いわね~…』
『艦長、あちらは出先ですし、無理な勧誘はその辺で』
『は~い…』

っとまぁ、こんな感じでリンディさんが積極的に管理局への勧誘をしてくる事もありまして。
士君がこちらの世界の実情も知っておいてほしいという要望のおかげか、どこかの商業販売のようなところまではいってませんが……いつかそうなりそうな勢いもどこか感じていて少し不安です。

まぁクロノ君やエイミィさんがストッパー役で止めてくれますから、今のところは大丈夫、だと思いたいです……

『すまないな…なんだかんだ言って、管理局も人手不足で悩んでいるんだ。特に、AAA(トリプルエー)クラス以上の優秀な魔導士は、かなりレアだから』
「そっか…」
『フェイトや君のように、優秀な使い魔持ちだったり、士のような特殊なスキル、レアスキルを持つ者だったら、尚更だよ』

あれ?今おかしな点が……

「まぁそうだな。フェイトがアルフで、なのはが……プッ、ユーノってか?ハッハッハッハ!」
「なっ、士!?僕は使い魔じゃないよ!?一応人間の魔導士だから!」
『あぁ、そうだったか?忘れてたよ。その姿があまりにも様になっていたものでな』
「(カチンッ)んだとぉ~!」

士君とクロノ君の発言にユーノ君はさすがに頭に来たのか、私の肩から降りて人間の姿に戻る。

「これならどうだ?」
『うん、人間形態への変身も隙がない。やっぱり優秀な使い魔だな』
「ぁあ、もう!!……でも、別に使い魔だからどうこう、て訳じゃないけど…なんか、クロノに悪意を持って言われると、妙にカチンと来る!」
『心外だな、ほめてるんじゃないか、優秀だって』
「嘘付け!だいたいクロノ、なんでそう突っかかるんだ?」
『はぁ?それは自意識過剰というものだろ。それに…それを言うなら、なんで君は僕を呼び捨てで呼ぶんだ?』
「呼び捨てでいいって言ったじゃないか!それにクロノだって、なのはに「クロノ君」とか呼ばれてポッ、とかしてたくせに」
『はぁ!?誰が!いつ!何月何日の何時何分、証拠はあるのか!?』
「その反応がそうじゃないか!」
『なんだとぉ!?』

そこから勃発したクロノ君とユーノの口喧嘩に、横で聞いていた士君は若干笑みを浮かべながら、またこいつらは…、と呟いていた。まぁ、いつもの事なんですが……

「やっぱりいいなぁ、男の子同士は仲良しさんで」
「なのは、それは違う!」
「どこが違うっていうんだ?喧嘩するほど仲がいい、ていうけど」
「何を~!?」

今度は士君も口をはさみ、ユーノ君は士君に不満をぶつける。士君はそれを軽く受け流し対応している。

『まぁやんちゃ坊主達は置いといて『やんちゃ坊主って言うな!!』、実は今回の通信は、いつものご連絡なのですよ。二人が気になってる、あの子の事』
「あっ、はい!」

その言葉を側で聞いた士君も、ユーノ君を差し置いてこちらに耳を傾ける。

『おととい二度目の公判が終わって、今は判決待ち。その間も、審問とか色々あるけど、まぁ順調に進んでいるかな?詳細は……ほれ、クロノ君』
『あぁ。君達の友人、フェイト・テスタロッサには、事件の重大さから実刑の執行を求める声も出てるが…何しろ、管理局提督と執務官が証言者だ。徹底して、無罪申告、最悪でも執行猶予で収まる範囲で進めてる』
「うん…」
『フェイトの受け答えもしっかりしてるし、ちゃんとデータもそろってる。前にも言ったが、大丈夫だ!』
「うん、ありがとう」

さっき出てきたPT事件で出会った女の子、フェイトちゃんは、今管理局本局で調査と裁判を受けてます。どうやらずっと会えないなんてことにはならなそうなので、すごく安心しています。

『で、お待ちかねの「あれ」はもう送っておいたから、今日辺り届いてるんじゃないかな?』
「ほんとですか!?」
『こんなところで嘘をついてどうする?また返事ができたら、連絡をくれ。責任を持って、彼女に手渡すから』
「うん!ありがとう!」

「あれ」、とは。
フェイトちゃんが現在調査や裁判の真っ最中で、私達とリアルタイムで接触のする訳には行かないので、代わりに、とリンディさんがやり取りできるようにしてくれた、ビデオメールの事です。

フェイトちゃんから送られた一通目の返事で、私達の家族や友達を紹介したいって伝えて。すると今度からは私達三人当てと、魔法関連の事抜きのものとの二枚組で送られるようになって、その返事で家族やアリサちゃん、すずかちゃんを紹介して……
今回の「あれ」が、フェイトちゃんからの三通目、という感じです。

『じゃ、こっちからもまた連絡するね!後…今日の夕方ぐらいに、例の通信入れるから』
「はい、待ってます」
「?通信?」
「あ、うん…ちょっとした「内緒話」…かな?」
「そ、そうか」

エイミィさんの言葉に、さすがに疑問を覚えたようで、士君が説明を要求してきたけど、そこはなんとかごまかして……ちょっとしたサプライズだから。

『それじゃあユーノ。引き続き、なのはにちゃんと魔法を教えるんだぞ?』
「心配しなくても、ちゃんとやるよ!」
「ていうか、俺の方はいいのか、クロノ」
『別に君は心配していない』
「それはそれで悲しいんだが……」
「あはは、それじゃあまた」

そんな会話を最後に、私は通信をきる。そして携帯をポケットに……あ、そうだ。

「もう届いてるかな?ビデオメール」
「そう、だな。届いてるかもな」
「じゃあ帰ろう!」
「うん」
「よし、じゃあ走るか?」
「えぇ~!?って、しかももう走ってるし!ユーノ君、乗って!」
「あ、うん!」

士君は言った側から既に走り始めていて私は慌ててフェレットに戻ったユーノ君を肩に乗せ、士君に追いつくべく走り出した。

















「ただいま~!」
「「「おじゃましま~す!」」」

学校での業務(?)も終わり、俺達は現在、バニングス宅にお邪魔する事になった。目的は一つ、今朝送られてきたフェイトからのビデオメールを見る為だ。
え?知ってる?なら話は早いな。俺が説明しなくてもいいな。

と、そんな風に無駄思考をしていると、一匹の犬が足下に寄り添ってきた。

「ジョンソン、ただいま!」
「あっ、ジョンソン。元気?」
「あははは!」

バニングス宅で飼われている犬達の一匹、ジョンソン。バニングス宅に来ると必ず足下にやってくる奴で、どうも人懐っこい性格らしい。

「にしてもお前、犬にジョンソンって」
「何よ!人のネーミングセンス馬鹿にしてんじゃないわよ!」
「俺まだ馬鹿にしてないが?」
「ぐぬぬぬ!まだってことはするつもりだったんでしょ!?」
「さ~て、速く行こうぜ。こんなところにいても始まらん」
「アンタのせいでしょうが!!」

なんて他愛のない会話をしながら、俺達はお嬢様特有(?)の大型テレビのある部屋へと入る。
早速ビデオメールを見る為の準備をしている中、バニングス宅の専属メイドさんから飲み物を受け取る。

「さて、DVDを入れてっと」
「再生、開始」
「あ、私が押そうと思ったのに!」
「こういうのは早いもん勝ちだ」
「まぁまぁ」

始めは画面が乱れていたが、すぐに元気そうなフェイトの姿が映る。

フェイトからの始めの話は、二通目の返事と一緒に送った物に対する感想だった。
アリサからは映画のDVD、すずかからはすずかの姉である忍さんが撮った写真と本。連休中に撮った一枚が、お気に入りらしい。
俺?俺はその前に、温泉でフェイトと会った時のと、フェイトが本局へ行く前の写真を送っている。まぁ連休中の写真もすずかのと一緒に送っておいたが。

そんな折り、突然なのはが泣き始めてしまった。

「なのはちゃん…」
「なによぉ?泣くような話じゃないでしょう?」
「…うん…そうだよね……そうなんだけど……」
「…一回止めるか?」
「あ、うん。そうだね」

俺の提案にすずかも賛同してくれたので、俺は一時停止ボタンを押し映像を止める。

「ねぇ、なのはは、この子と色々あったんだよね?この子との事で、色々迷ったり、悩んだり、喧嘩したりもしたんだっけ?」
「うん…結構、本気でね」

思い出される光景は、あの桃色の光線がフェイトを包み込むシーン。うん、アレで本気じゃなかったら、結構ヤバいよね。
とそんな無駄思考は置いといて……

「でも、今はちゃんと友達になれて、アタシ達にも紹介してくれてる。フェイトもニコニコ笑ってる」
「うん。なのはちゃん、フェイトちゃんに笑われちゃうよ?悲しい事なんかないのに、なのは、変だね?、って」
「…そうだよね。きっと…笑われちゃう…」

涙を拭うなのはを見て、俺はその流れる涙の理由を、何となく理解していた。
おそらくだが…うれしいからじゃ、ないのだろうか。何度もぶつかり合っていたから、何度も戦いの場で言葉を交わそうとしたから。
今のフェイトと戦っている時のフェイト、その変化の仕方が、本当のフェイトが見られている事が。そんなフェイトと話をできるのが、うれしいのだろう。

「うん…もう平気…」
「じゃ、また始めるよ」
「気を取り直して」
「少し巻き戻してから見よう」

すずかの言葉に、俺は頷いてリモコンを操作する。



















「「…………」」

沈黙が続き、俺達の間に緊張が走る。戦場に静かに風が吹く。

「……行くぞ、なのは!」
「…うん!」

俺のかけ声と共に、二つの人影が動く。片方は剣を持って、一方は銃口を向ける。

「これで!」

その銃口から放たれる砲撃。二人の間の空間を裂きながら、一方に迫る。

「甘いわぁ!!」

その攻撃を跳んで避ける。そして落下すると同時に剣を振り下ろす。

「わわっ!?」
「そら!」

避けるように慌てて後退する。着地と同時に半円を描くように剣を振るう。

「くっ、これなら!」

それをまた下がる事で避ける。そこからまた砲撃を放つ。
だが―――

「舐めるなぁ!!」
「にゃああああ!?」

それが決まったと思いきや、ダメージもなく瞬間的に反撃が決まる。カウンターが決まった一方の人影は、吹き飛んでいく。

そして―――

《 Player 2 win ! 》

「にゃああ…また負けたぁ…」
「ふっ…俺に勝とうなど、百年早いわ」
「なんか…すごかったとしか言いようがないわね…」
「あはは…」

画面が切り替わり、俺の勝利を報告する。
ん?何してるって?そんなもん、見りゃわかるだろ?


―――某大乱闘型爽快アクションゲームだぁぁ!!

いや、前世の実際の物とは少々違いがあるが、大体の内容はそれであっている。俺は前世から続けている為、この年ですでに達人の域に達していると自負している。

先程の描写は俺となのはの一騎打ちのもの。俺は大剣を振るう筋肉質の男、なのはは某極太ビームで有名な賞金稼ぎだ。
因にすずかはキノコの王国の姫を、アリサは以外にも段ボールで有名な男だ。どうやら扱う武器が好みらしい。

「じゃあ次は、キャプテンの通常必殺のみでいこうか!」
「それ毎回やるけど、うるさいだけじゃない!」
「ていうか私とアリサちゃんはそろそろお稽古の時間なんだけど…」

さすがに稽古の邪魔はしたくないのでおとなしく帰る事に。









バニングス宅から帰ってきた俺達は、早速フェイトからのビデオメールの、俺達専用の方を見た。

「ふぅ~……DVDを取り出して、と…」

そう言って俺は席を立ち、DVDプレイヤーから再生が終わったビデオメールのDVDを取り出す。

「さて、返事のDVD、いつ作ろうか?」
「うん……その前に、士君、ユーノ君」
「ん~?」
「どうしたの?」
「ちょっと、お話があるの…」

DVDを保管用のケースに入れながらなのはを見ると、なんか少し真剣な顔付きをしていた。

「あ、あのね…実は、今日ね……」
「お、おう…」

なのはから話された事実に少し驚きながらも、俺とユーノはさらになのはが語った計画に賛同した。



















目の前に広がる豪華な食事。モクモクと立ちこめる煙と一緒に来る芳しいにおいが、私の食欲をそそる。

「これって…」
「今日フェイトちゃん達の記念日でしょ?契約記念日。そういう日は、やっぱりおいしいもの食べて、楽しくお話しして、のんびり過ごすもんでしょ!」

どうやらこの豪華な食事は、私とアルフの為にエイミィが作ってくれたようです。エイミィ自身も趣味が入ってるって自慢げに言ってます。

「まぁまぁ、せっかくだから、いただきましょ。ほ~ら、座って」
「はい」
「アルフも、座ってて」
「う、うん…」

そうして皆が座ったところで、エイミィがケーキとキャンドルを取り出してくる。

「誕生日じゃないんだけど、こういう時はやっぱりあってもいいよね!」

といいながらケーキにキャンドルを一本ずつ刺していく。立てたキャンドルに火をつけて……。リンディさん曰く、この習慣はなのは達の世界にもあるらしい。
準備が整ったところで、エイミィが照明を落としていく。薄暗くなった空間に、キャンドルに灯った火が小さく光っている。

「わぁ…綺麗…」
「さぁ、二人で吹き消して」

そう言われて、思わず私達は顔を見合わせる。こちらを見るアルフの顔が若干赤くなっているのがわかる。自分じゃわからないけど、多分私もそうなのだろう。

「じゃ、アルフ…」
「う、うん…それじゃあ…」
「「…せーの、ふぅ~……」」

私達の息で次々と消えていくキャンドルの火。全部が消えると同時に皆から拍手が送られる。

「あ、ありがとう…」
「あ、あんまりフェイトを照れさせないで…アタシもなんだか照れるんだから…」

アルフの一言に、リンディさん達が笑みをこぼす。
そんな中、どこからか拍手が聞こえてくる。周りの三人はもう拍手を止めている筈なのに、なんで…?
そう思い、周りを見ていると―――

「―――え?」
『あはは、おめでとう。フェイトちゃん、アルフさん。』
「「えぇ!?」」
『今日、そんな記念日だったんだね。私からも、お祝い言わせて』
『僕からも』
『ったく、そんな記念日があるならビデオメールとかで教えてくれてもよかったじゃねぇか』

そこに映っていたのは、どこかの森らしきところにいる、バリアジャケット姿のなのはとユーノ、そしてディケイドの姿の士だった。












『え、えぇ!?これって、リアルタイム通信じゃ…』
『かわいい身内の特別な日だと、管理の注意力も散漫になるものらしいわね?』
『厳密に言えば、0.05秒遅れで繋いでるので、リアルタイムではありませんしね?』

とまぁ、こんな感じで現在、俺達はなのはの提案でアースラと通信を繋いでいる。

『…なのは…士…』
「うん…フェイトちゃん…」
「直接会話するのは久しぶりだな」
『こっちはその…元気だよ。皆、すごく優しくて、なんだか…うまく心がついてこない…』
「きっとすぐに追いついてくるよ」
「心配しなくてもいいんじゃないか?」
『うん…ありがとう…』

「アルフ、元気?」
『あぁ!もうめちゃめちゃ元気さ!』

少し戸惑っているが、ちゃんとフェイトは話しかけてきた。ユーノとアルフも一言ずつ言葉を交わす。

『なのは達は今、外なの?そこは…森の中?』
「まぁそうだな。正確には海鳴の裏山の中だ」
「今はあんまり長く話せないし、贈り物もすぐには送れないから。だから、私達三人からのお祝い、見ててね!」

〈 Stand by Ready 〉
「まずは私から。行くよユーノ君、レイジングハート!」
「うん」
〈 All right 〉

なのははそう言って、足下にピンクの魔法陣を展開する。

「夜空に向けて…砲撃魔法、平和利用編!」
〈 Starlight braker 〉
「スターライトブレイカー、打ち上げ花火バージョン!」

「―――ブレイク……シューーートッ!!」

そのかけ声と共に、なのはの目の前にあった魔力の塊が、星々が輝く夜空へ向け放たれる。
放たれた魔力は空中で弾け、大輪の華を裂かせる。色はユーノの補助が入ってか、緑とピンクだ。

『うわ~…綺麗…』
『すご~い、光のアートね!』
『またむやみに巨大な魔力を…』
「まぁそう言いなさんな、クロノ執務官。そんなんじゃ胃にいくつも穴をあける事になるぞ?」

通信越しに聞こえてくる感想と愚痴。クロノの愚痴に俺はソードモードのライドブッカーを肩に当てながら言う。

『すごいなのは…夜空にキラキラ光が散って、すごく綺麗だ…』
「うん、続けていくよ!ユーノ君!」
「うん!」
「「せーのっ!!」」

そして何発も上がっていくピンクと緑の花火。クロノが以前言っていた「バカ魔力」というのは、あながち間違っていないかもな。

「それじゃあ、俺も」
『え?士?』
『まさか君も…!?』
「できない訳じゃないさ。なんつったって、俺はお前ら同様リンカーコアを持つ魔導師なんだから」

でも結構苦労したんだぜ、と言いながら足下にマゼンダ色の魔法陣を展開する。そしてライドブッカーの切っ先を夜空に向け、構えを取る。

「初の魔法使用、ディバインバスターならぬ…」
〈 Dimention buster 〉
「打ち上げ花火バージョン!ユーノ、キツいだろうが補助頼む!」
「うん!」
「「せーのっ!!」」

かけ声と共に切っ先から飛び出すマゼンダ色の魔力。緑色も混ざって飛んでいき、見事夜空に華を咲かせる。

『連発!?しかも初めて使うのにこんな応用ができるなんて!?』
『相変わらず、なんつうバカ魔力…!?』

花火を撃ち終わった俺達は、さすがに肩を揺らして息を整える。ユーノに至っては、地面に大の字に転がっている。

『なのは、ユーノ、士……大丈夫?』
「あはは、大丈夫!」
「はぁ…はぁ…」
「若干一名言葉も発せられないくらい疲れてるけどな…」

心配そうに言うフェイトに俺達は返事をする。いや、ユーノは返事もできてないが。

「ちゃんとしたプレゼントは、ビデオの返事と一緒に送るからね。今のは、どうしても今日の内に見せたかったお祝い」
『ありがとう…ありがとね、なのは…士…』
「うん…きっと…きっとすぐまた会えるから…。だから今は、普通にお別れね…」
「あぁ…それじゃあ…」
「「またな(ね)、フェイト(ちゃん)」」
『うん…ありがとう…なのは、士!』
「うん!」

それを最後に、フェイト達との通信が途切れた。
さすがに疲れた俺は、地面に座ってしまう。なのはも近くのベンチに座る。

「はぁ~…さすがに疲れた…」
「にゃはは…そうだね…。お疲れ、レイジングハート。ありがとね」
〈 All right 〉
「いくら範囲と威力を…落としてても…ブレイカーの連打だから…ね…」
「息も絶え絶えだな、ユーノ」

さっきから大の字のままのユーノに俺は立ち上がって手を差し伸べる。ユーノはそれを掴んで上半身だけ起き上がる。

「でも、ユーノ君のコントロールのおかげで、綺麗に花火っぽくできたよ。ありがと、ユーノ君」
「あははっ、他に魔法使ってなかったから、制御に集中でき…た……あれ?」
「?」
「…ちょっと待てお前。今他に魔法を使ってないって…まさか…」

ユーノの爆弾発言に俺は戦慄した。よくわかってないのか、なのはは首を傾げる。

「…うん、士…そのまさか、だよ……」
「……結界、張り忘れてた…てことか…?」
「え…それって……えぇえぇええぇぇえぇぇぇぇ!!?」

さすがにわかったのか、なのはの悲痛な叫びが響き渡る。

「じゃ、じゃあ…ご近所中に、今のブレイカー打ち上げが…」
「俺の初魔法も…見られて、た…?」
「…ごめん…そこまで気が回らなかった…」
「いや、その責任は俺達全員にある。もっと速く、気づくべきだった…」

ユーノが謝るが、さすがにこれは一人の責任じゃない。だけど…やっぱまずいか…

「ま、まぁ音と光以外に、ご迷惑をおかけしていないと思うけど…もしかして私達、このまま打ち上げ地点に残ったままだと……」
「ひじょ~~に、アレかも…」

うん、十二分に…アレだな…

「ぇえっと…と、とりあえず、ユーノ君。肩乗って」
「う、うん」

なのはの言葉に従って、ユーノはフェレットモードに戻りなのはの肩に乗る。

「それでは…」
「せーの…」

「「「ごめんなさ~~い!!」」」

そのかけ声と共に、俺となのはは一斉に走り出す。それはもういつも以上に、普段運動音痴ななのはも、これ以上ないという程のスピードで走る。

「……フフフ…!」

だけど、不安感はどこにもなく、その代わりに、何か別の感情がわき上がってくる。その感情を抑えきれず、俺は笑い声をあげる。

「…フフ、フフフ!」

どうやらなのはも同じようで、走りながら笑みをこぼしている。

「「ハッハッハッハッハ!!」」

俺達は危険な状況にありながら、それでも大声で笑いながら、裏山を駆け下っていった。

  
 

 
後書き
 
次回は夏休みに入って、皆様の地元にも必ず一つはある夏祭りを題材に一話作ろうかと予定。
オリジナルの話なので、うまく書けるか不安ですが、頑張ります。

士の使用する魔法に関しては、次回詳しくやるつもりです。

(7/22 修正)
  
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