魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~
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Chapter-2 Second Story~sorrowful and graceful……that occurrence~
number-15 relations
前書き
関係。
この場合は、三桜燐夜。高町恭也。
月曜日。
金曜日に燐夜は、通っている聖祥大付属小学校に復学届を出しに行っているので大手を振って敷地内に入れる。しかし、燐夜は憂鬱そうにしていた。
実は今日から定期テストが始まるというのだ。復学した当日にテストとはなんかあれだが、教師は別に受けなくてもいいと言ってくれた。燐夜はその提案を蹴ったが。休学の時に出していた届出に理由を入院のためと書いてしまっているのだ。入院生活の中で勉強してきたというところを見せないと、少なからずとも怪しまれるのは分かり切っていること。
それにいじめっ子たちのこともある。
実のところ、なのはたちに虐められているところを見つかって、それなりに制裁して、教師からも起こられたいじめっ子たちは、その腹いせということもあり、いじめを止めなかったのだ。しかも、教師から厳重注意される前よりも人数が増えていた。
全く持って意味が分からなかったが、とにかくそういう奴らに弱いところを見せたくないのだ。
クラスで独りぼっちでも、大勢の人から虐められていても、それを見て誰も助けてくれる人がいなくても心を強く持って今日という人生きている。
そうやって月曜日を過ごした。
だけど、今日は違ったんだ。何かが違っていたんだ。
定期テストが終わってすぐの火曜日。今日も同じように放課後、体育館の裏で十数人から虐め――――殴る蹴るの暴行を受けていたんだ。
◯
「おらおらおらぁ! どうした!? 何もし返してこないのかよ! この弱虫が!」
リーダー格の体格のいい少年が地面に蹲っている燐夜を蹴りながら罵声を浴びせ、それでもなにも返してこないことに嘲笑う。
それに続くようにして燐夜を取り囲んでいる十数人が燐夜を見下しながら笑う。
燐夜はそれをただ、耐えていた。
それなりに力を込められて蹴られるものだから、もう肋骨が折れているのかもしれない。防御魔法を使って自分の身を守ることは簡単だが、そうしてしまえば目の前にいる塵屑どもに負けた気になるので使わない。
そのためか、口の中は血の味がするし、体中に青痣が出来ている。骨まで行ったかもしれない。
それに腹ばかり目掛けて蹴るものだから、胃から逆流して嘔吐しそうだった。それはプライドにかけて絶対に防ぐが。
「けっ、つまらねえなあ。少しは反抗してみやがれっての!」
ドッとまた腹に蹴り込まれた。
痛い、痛い、苦しい、苦しい、つらい、つらい……だけど、絶対に堪えてやる。
あいつらには迷惑をかけるわけにいかない。それにこんなところを見られるわけにもいかない。前は、場所が場所なだけに見つかったが、今回からはそれは絶対にないと言える。
リーダー格の少年と同じように面白がって燐夜を蹴る周りにいる少年たち。
燐夜という格好の獲物を見つけた少年たちは、この行動をずっと続けていた。
物を隠す。
それは燐夜が改めてまた同じものを用意してしまうため面白くない。
靴に画鋲を入れる。
それは燐夜が靴を履く前に必ず一度、靴の中を確認してしまうため面白くない。
机に落書きする。死ねや消えろ。カス、屑。
それは燐夜が何も言わずにバケツに水を汲んできて雑巾で磨いて、担任の先生が来る前に元通りにしてしまうため面白くない。
燐夜の持ち物にいたずらをする。教科書に落書き。鉛筆を折る、など。
それは燐夜が教科書に落書きされた時には、ごみ箱に捨てて、その時間は忘れたということにして、翌日何事もなかったかのようにまたもってくる。そのかわりに誰かの教科書が消えているが。主にいじめっ子の。
鉛筆を折る行為は、短くなった鉛筆を使う。さらに短く、または粉々にされた場合は、何も書かない。
だから、さほど面白くない。
最終的に、直接本人を痛め付ける方が良かった。楽しく感じたし、自分より下の奴と思うと、優越感を感じる。
「ん? なんだぁこの紐」
だからだろうか、リーダー格の少年が燐夜の首からかけている紐に気付いたのは。
その少年は、燐夜の首から紐を思いっきり引っ張り、引きちぎった。その勢いで服の中にしまっていたものが空中に飛び出す。
そう、なのはとフェイトと燐夜の絆の証である水晶を。
宙を舞い、地面に落ちた水晶を燐夜は急いで取りに行こうとしたが、周りにいた少年たちに抑え込まれ、中心にいたリーダー格の少年とは別の少年が落ちた水晶を拾った。
「なんだこいつ! 男の癖にこんなもの下げてやがる! だっせえ! こんなものこうしてやるっ!」
確かに男で首に水晶を……アクセサリーをかけているのは珍しいかもしれない。けれどもそれは燐夜にとって大切なものなのだ。
自分の周りにほとんど信用のおける人物がいない燐夜にとっては、唯一人とのつながりを感じていられる大事な、とても大事なものなのだ。
その大事なものを拾った少年は、駆けていた燐夜をさんざん馬鹿にした後、地面に叩きつけるようにして投げ、踏むことで砕こうとした。
「やめろぉっ!!」
一瞬にして燐夜が纏う雰囲気が変わった。
それは、今まで必死に耐えて、溜めにため込んだものが一気に吐き出されるようにして燐夜を変わらせた。
痛みを堪えるために閉じられていた眼は、吊り上り見る者を恐怖させるような目に。
佇まいも変わった。自分を弱く見せようと身を縮めていたが、堂々とした佇まいに。
燐夜が叫んだ瞬間には、はいつくばっていた地面から一気に跳ね起き、今にも水晶を踏み砕こうとしていた少年を蹴り飛ばした。
あまりの怒りで自分を律することが出来なくなっているのか、オーラのように自分が先天的にもつ藍の力がにじみ出ている。
「お前らは、絶対に、許さない!!」
否、完全に我を忘れていた。
燐夜を中心にして周りに円のように藍の波動が広がる。途轍もなく強い風と共に少年たちを強い衝撃が襲う。
少年たちの肺にあった空気がすべて吐き出され、呼吸もすることが満足にできなくなった少年たちは、動くことも出来ない。燐夜から放たれている殺気で恐怖を感じ、そのせいで動けないのかもしれないが。
ゆったりとした動きでそれでいて、力強く踏み出される燐夜の足。その行く先は、リーダー格の少年のもと。
「ひっ、ひいいいっ!!! た、頼む助けてくれ……っ!」
助けを乞う声。
しかし、燐夜は歩みを止めることなかった。ゆっくりとリーダー格の少年のもとへ近づいていく。
そして、リーダー格の少年の顔を見下ろすようにして、あと一歩のところまで近づき――――思いっきり顔を蹴った。
それも助けを乞う声が聞こえる前に、ただの社会のごみを始末した。
地面に落ちている赤い水晶を拾い上げ、傷、罅が入っていないことを確認すると千切れた紐を取り、気を失っているリーダー格の少年の顔の上に落とした。
再び、紐を取り出した燐夜は、ひもを通し、また首にかける。
◯
あれから燐夜は、その場にいた少年たちを脅し、起こったことを言わないように口封じをした。あいつらが言ったらどうなるかは、その時の燐夜の気分次第である。
見た目はボロボロだが、比較的無傷な燐夜は帰路についていた。
いつも通りの通学路をいつもより少し遅い時間で変える。
もう家に変えれる――――そう思ったが、どうやら今日は厄日なようだ。自分の思い描いた通りに全くいかない。一つぐらいは上手くいってもいいのに。
「……お前か、久しぶりに会ったな」
「貴様……! よくも――――」
燐夜は相手の顔を見て、話しかけたが相手が話し始めると手を前に出して、止めた。
「もう昔のことを水に流さないか?」
「…………どういう風の吹き回しだ」
「なあに、簡単なことだよ」
相手を見る目を一瞬にして変えた燐夜。どこか気怠そうにしていた瞳が、意思の篭もった瞳に変わった。
「なのはが俺たちの関係のことで泣いていた。それだけで十分じゃないのか? そうだろう、高町恭也」
「――――!」
意思の篭もった瞳を向けられている恭也。
答えを出すのは早かった。だが、それは結論ではなく提案であった。
「……これから俺の家の道場で戦う。その決着で決める、というのはどうだろうか」
「ふん、意外と逃げ腰なんだな」
「なんだとっ!」
激昂し始めた恭也の言葉を受け止める燐夜。だが、その上でケンカを売り始める。
「いいさ、その条件で決めてやるよ。本気で来ないとお前は負けるがな」
「貴様ぁ……っ! いいだろう、後悔させてやる」
二人は高町家に向かって歩き出した。
だが、二人は肩を並べて歩くことをせず、恭也が先導する形で道路を歩き始めた。
――――まったく、何を躊躇っているんだろうか。
――――なのはが泣いていたんだ。
――――それだけでもう十分じゃないか。
そう、燐夜は見たのだ。
なのはが燐夜と恭也の関係で友人であるアリサとすずかに打ち明けて泣いてしまったところを。
それだけで十分ではないのか。
しかし、それでも二人は、歩み出したのだ――――。
後書き
どうしてだろうか、number-7の評価がやたらと高いのは。
それと、まだGOD編を入れるかどうかのアンケートは取っています!
お願いします! 本当に意見ください。まだ迷っているんです……
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