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ドン=ジョヴァンニ

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第二幕その六


第二幕その六

「それでですね」
「はい」
「旦那を殺すんですか?」
 尋ねるのはこのことだった。実は自分のことをである。
「本当に。殺すんですか?」
「はい、そうです」
 はっきりと答えるマゼットだった。
「それが何か?」
「あばらを痛めつけるか肩を砕いてやる位ではないんですか」
「いえ、殺してやります」
 マゼットは怒りに満ちた声で言うのだった。
「絶対に。こうなったら」
「そうですか。それではです」
「ええ」
 なおも彼をレポレロと信じて応える・
「その為の武器は」
「これです」
 言いながら自分の銃をジョヴァンニに見せた。
「後はこれです」
「ピストルですね」
「この二つでとっちめてやりますよ」
 怒りに満ちた言葉で述べるのだった。
「絶対にね」
「成程」
 その銃とピストルを受け取りながら頷くジョヴァンニだった。
「この二つの他には」
「まだ足りませんか?」
「まあいいだろう」
「そうですか」
「ではうけとるのだ」
 ここでいきなり銃とピストルでマゼットを殴りつけるのだった。
「痛っ!」
「これがピストルの分だ」
 実際にピストルで殴っている。
「そしてこれがだ」
「うわっ!」
「銃の分だ」
 今度も銃で殴りつけていた。マゼットは殴られて倒れ伏した。ジョヴァンニはその彼をさらに銃とピストルで殴っていくのであった。
「止めてくれ、何なんだ」
「黙れ、当然の報いだ」
 ジョヴァンニにすればまさにそうであった。
「これで許してやるから有り難く思え」
「何なんだ一体」
 マゼットは何が何なのかわからないまま倒れ伏す。ジョヴァンニはそれを見届けてから姿を消す。その彼と入れ替わりに出て来たのはツェルリーナだった。
「マゼット!」
「えっ、ツェルリーナかい?」
 それはツェルリーナだった。彼女はマゼットが倒れ伏しているのを見ると慌てて彼のところに駆け寄った。そしてすぐに彼の頭を抱き抱えるのだった。
「どうしたの、一体」
「レポレロにのされたんだ」
「レポレロっていうとあの」
「そうだ、あの悪党の召使だ」
 彼はまだ自分を叩きのめしたのはレポレロだと思っている。
「あいつが僕を」
「大丈夫?」
「あまり大丈夫じゃないよ」
 ツェルリーナに抱き締められたままの言葉だった。
「酷くやられたよ」
「それで何処が痛いの?」
「ここが」 
 まずは右肩を指差した。
「それにこことここも」
「随分やられたのね」
「うん、全くだよ」
 右の腿と胸も指差しての言葉であった。
「左手も左足の甲も」
「けれど折れてもいないし曲がってもいないわ」
 マゼットの指差した部分を見てとりあえずはほっとするツェルリーナだった。
 
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