| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十話






「やぁッ!!」

「甘いわね」

 そう言って曹操がクルリと回転して斬撃を避けて俺の背中を蹴って地面に倒した。

「流石です華琳様ッ!!」

 それを見ていた夏候惇が叫ぶ。

「ぺっぺ……」

 口の中に砂が入ったために急いで口から出す。

「踏み込みが甘いわ曹徳。これでは貴方が一人前になるのはいつになるかしら?」

 曹操が溜め息を吐きながら俺にそう言ってきた。違う違う、貴女が強いんですよ。

 分かります?

「大丈夫ですか曹徳様?」

「……大丈夫だ夏候淵」

 心配そうに夏候淵がやって来てそう言ってくるが俺は大丈夫と言っておいた。

「さ、曹徳は後は剣の素振りでもしておきなさい。弱いのと練習するより強いのと練習する方が良いわ」

 曹操はそう言って俺に鍛練所から出るよう言ってきたので俺は無言で鍛練所を出た。

「また負けたのね」

「やはり曹操様と曹徳様とは違うのか」

「後継ぎは曹操様で決まりのようだわ」

 周りの従者や手伝いの者は隠れてコソコソと話している。てか聞こえているぞ。

 コソコソするならもっと聞こえないようにしろよ。

「曹徳ッ!! さっさと来なさいッ!!」

 母親の曹嵩が叫んでいた。

「は、只今」

 俺は曹嵩へ駆け寄るのであった。





「……何か懐かしい思い出を思い出したな」

 朝、目が覚めるとそこはいつもの部屋だった。どうやら今のは夢だったみたいだな。

「……こういう時に限って嫌な予感とかがするんだけどなぁ……」

 フラグだよな。フラグすぎる。

「ま、今日も頑張っていくか」

 俺は窓から差し込む太陽の光を浴びて欠伸しながらそう呟いた。

「た、大変です長門さんッ!!」

「どうしたんだ雪風?」

 食堂で朝食を食べていると雪風が慌てて俺に近寄ってきた。

 走ってきたのか肩で息をしている。

「み、美羽様が玉座に全員を招集させています」

「え?」

「ですので急いできて下さい」

「いや俺、朝飯の途中だし……」

「問答無用ですッ!!」

「ちょ、おま……」

 そう雪風が叫ぶと俺をひょいっとお姫様抱っこをして走り出した。

「……俺が姫なのか?」

 茶碗を持ちながらそう呟く俺だった。



――玉座――

「御待たせしましたァッ!!」

『………』

 まぁ無言なのは分かるよ皆。何せ逆お姫様抱っこだしな。

「ぁ……」

 逆お姫様抱っこに漸く気付いた雪風が顔を赤らめて俺を降ろした。

「アッハハハッ!! 似合うわよ長門ッ!!」

「喧しいぞ雪蓮」

 雪蓮が爆笑しながら俺に言ってくる。

「まぁ雪風のは後で聞くからして……先程、魏の使者がやってきたのじゃ」

 ……成る程。

「向こうもいよいよ決戦をするようじゃのぅ」

「ハッハッハ。それは逆に腕が成るのぅ」

 祭と零が笑いながら言う。全く年増は……。

「「何か言ったか長門?」」

「……いや何も……」

 ついでに地獄耳だな。

「魏の兵力は分かっているのか?」

「詳しくは分かりませんが、間者からの報告では五十万を越えるとの事です」

 俺の問いに七乃が答えた。ほぼ、赤壁の戦いかもな。

「此方の兵力はよくて二十万です。間者も魏に忍び込ませる予定です」

「それとじゃが、妾の判断で合肥にいた郭淮達は引き上げさせた」

「引き上げさせたのか?」

 美羽の言葉に翠がそう聞いてきた。

「こら翠。口の聞き方が悪いよ」

「ご、ごめん母上……」

 そして翡翠に怒られる翠である。

「翠、合肥は今の仲からは浮き出ている領土なのじゃ。もし、魏軍が合肥の後方へ回れば合肥は仲から完全に孤立するのじゃ」

 美羽は地図を用いて翠を筆頭に分からない奴等に教える。

「じゃから合肥は魏軍に譲って妾達は長江を防衛線とした布陣をするのじゃ」

 美羽はそう言ったのである。

 それにしても美羽は立派に君主としているな。

「それでは全員、戦の準備じゃッ!!」

『オオォォォッ!!』

 俺達は叫ぶ。

「「………」」

 しかしこの時、クロエとロッタの表情が暗かったのは誰も気付かなかった。




「ふぅ、こんなもんか……」

 俺は荷造りの準備をしていた。今回は恐らく曹操と決戦になるだろうからな。

 俺も、もしかすれば戦死するかもしれないしな。

「……あかんな。ネガティブに考えたらあかん。ポジティブに考えとこう」

コンコン。

「ん? どうぞ」

「「………」」

「クロエとロッタじゃないか。どうかしたのか?」

 俺は二人に声をかけるが二人は無言だった。

「……長門、この戦いは決戦だろう?」

「あぁ。確かにほぼ魏軍との決戦だな」

「……私達はどうしたらいいのよ? 一応は客将として戦ってきたけど、戦いで敗れたら……」

「………」

 ロッタの肩が震えていた。そうか、二人はルミナシアに帰れるかどうかも分からないからな。

「気にするな」

 俺は二人の頭にポンと手を置いた。

「必ず仲が勝つ。そのために二人も頑張って貰わないとな」

「……そうか」

「そうね……あ、ありがとう長門」

「おぅ。それにもし帰れなかったら俺と結婚でもするか?」

「「~~~ッ!?」」

 ん? 地雷だったか?

「「……このど阿呆ォッ!!」」

「あべしッ!?」

 じょ、冗談過ぎたか……。

 けど、二人は笑っていたのであった。








 
 

 
後書き
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧