ドン=ジョヴァンニ
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第二幕その四
第二幕その四
「このまま」
「いつも私だけのものでいてくれるのね」
「誓おう」
彼はまた答えた。
「今ここで」
「愛しい人」
その言葉を受けていよいよ感激するエルヴィーラだった。
「ならこのまま永遠に」
「まんざらではないかな」
この中でまた呟くレポレロだった。
「こんなお芝居も」
「私の宝」
「私の女神」
その呟きを止めてまた芝居に入るレポレロだった。
「もうこれで」
「私はもう熱くて燃えてしまいそう」
「それで灰になりそうだ」
「段々調子に乗ってきたな」
ジョヴァンニはそのレポレロの芝居を見て呟いた。
「どうしたものか」
「もう私を騙さないのね」
「絶対に」
「私に誓ってくれるかしら」
「誓うとも」
本当に調子に乗っているレポレロだった。
「夢中で口付けしてその手にかけて。そしてその美しい瞳に」
「やや、危ないですぞ」
今度はジョヴァンニがレポレロのふりをして言うのだった。
「追手だ。旦那、下手をしたら」
「ドン=ジョヴァンニ、ここは」
「う、うむ」
レポレロは自分をジョヴァンニと思っているエルヴィーラの言葉に頷くのだった。
「去りましょう、難を避ける為に」
「わかった。それでは」
こうして二人は姿を何処かへと消した。あとに残ったジョヴァンニは一人になったところで満足した笑みを浮かべて。そのうえで窓辺の下にまた立つのだった。
そうしてマンドリンを掲げて上を見上げて。歌いはじめるのだった。
「さあ窓辺においで私の宝よ」
こう歌うのだった。甘い声で。
「私の涙を慰めて欲しい。私に慰めを与えてくれないならば」
さらに歌う。
「貴女の目の前で死んでしまいたい」
これは偽りの言葉である。
「貴女のその口元は蜂蜜より甘く心は砂糖の様な甘さに満ちている」
これも同じだ。
「私の宝よ、これ以上来るしまさせないでその姿を見せて欲しい」
ここまで歌うとだった。窓辺に誰かが出て来ようとしていた。彼はそれを見て満足した笑みを受かべて一人こう呟くのであった。
「来たな、もう少しだ」
順調にいっていると思っていた。ところがこの夜道に。物騒な者達が来た。
「ここにいるかも知れないよ」
「ここに?」
「いるっていうんだねマゼット」
「うん、ひょっとしたらね」
マゼットが彼等の先頭にいる。見れば彼等はあの村人達だ。皆その手にそれぞれ銃やら棒やら持っていてかなり物騒である。
その彼等を見てジョヴァンニは。また呟くのだった。
「あれはマゼットか」
「待て、誰かいるな」
「気付いたか?」
「誰だ?そこにいるのは」
マゼットは小銃を手にそのジョヴァンニに問う。
「誰なんだ、一体」
「一人でもないし気をつけるか」
ジョヴァンニはそれを聞いてまたしても呟く。そうしてそのうえでマゼットに応えるのだった。
「貴方はマゼットですか?」
「そうだけれど」
「そうか、よかった」
ジョヴァンニはここでは芝居をしていた。
「それは何よりです」
「何よりだって?」
「わかりませんか?」
こう彼に対して言うのだった。
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