駄目親父としっかり娘の珍道中
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第4話 疲れた時は無理せず休め
「出来る訳ないだろうが」
開始一番でこれである。現在万事屋ご一行が向ったのは江戸一番のからくり技師と謡われている【平賀源外】の隠れ住んでいる工房に来ていた。
何故此処の主が隠れ住んでいるのかと言うと、実はこのおっさんは前に幕府の将軍を暗殺しようと企てた重犯罪者なのである。
まぁ、その理由と言うのが攻めて来た天人への忠誠の証としてその時まで天人と戦っていた者達を大量に粛清したのである。そして、その中に源外の息子である【平賀三郎】の姿もあり、それを見たが為に源外の心は何処かで壊れてしまったのであろう。そうしてある時、幕府の将軍が祭りを見に来ていたのを好機と思い決行を起こしたのである。
しかし、其処へ偶々居合わせていた銀時、神楽、新八達万事屋メンバーと真選組達の活躍により暗殺は未遂に終わり平賀は指名手配とされてしまったのであった。
しかし、時は経ち、本人は警戒しているのだが何時の間にか平賀の指名手配は取っ払われてしまっていたのであった。
何故かと言うと、どうやら暗殺されそうになった将軍はその騒ぎが祭りの出し物だと勘違いしたらしく源外を罪に問わなかったのであった。
その為、何時しか指名手配も撤廃されてしまい何時しか【源外? 誰それ】的な事になっていたのであった。
そんな感じで銀時達万事屋一向はその源外の工房に来ていたのであった。
一向が来た理由と言うのが前回や前々回を見れば分かると思うのだが、此処を始めて見る方達の為に分かりやすく説明しよう。
【とりあえず異世界に行きたいのでやってきた】
以上である。そして、冒頭の源外の台詞に至るのである。
「んな事言わずにちゃちゃっと作ってくれよ。お前江戸一番のカラクリ技師だろ? 他の所だと簡単に作って簡単に事故ってんじゃねぇかよ」
「お前、カラクリ技師舐めてんだろ」
銀時と源外の激しい口論は続く。異世界へと飛ぶ装置を作る。事実的に言えば無理な事である。現在の江戸の科学力を凌ぐ天人の力でですらそれをする事は不可能な事だ。
天人ですら出来ない偉業をからくり技師に頼み込む事事態無理がある。源外が言っている事は強ち間違いではないのだ。
しかし、今は哲学や正論を述べている場合ではないのだ。そうこうしている間にも今こうして新八に背負われている小さな少女が危うい。
このままでは何時化け物と化すか分からないのだ。そうなる前に何としても異世界にあると言われるロストロギア専門の組織と思われる時空管理局に向わなければいけないのだ。
しかし、残念な事にその時空管理局にとってこの江戸は管理外の世界である為に彼等がこちらに来る事はまず有り得ない。
そして、自分達が其処に向う為にも普通に飛行機に乗ったりターミナルを用いて行く事すらも出来ない。やはり異世界へと向うしかないのだ。
だが、その最後の頼みの綱である源外が匙を投げる始末である。目の前が一気に暗くなっていく感覚を感じた。もうどうしようもないのだろうか?
このままジュエルシードを体内に宿したなのはは化け物になっていくのを黙って見ているしか出来ないと言うのだろうか?
「大体簡単にお前等異世界に行かせろとか言うがなぁ。そんなのは事実上無理があるぞ! 只でさえターミナルの技術が相等凄いってのにその上異世界へ行かせろなんざ夢物語にも程があるぞ!」
「其処を何とかするアルよ! お前それでも天才からくり技師アルか?」
「あのなぁ、幾らワシが天才からくり技師っつっても無理なもんとかあるんだよ。第一ターミナルとかそう言うのは専門外だしなぁ。それに異世界に行くっつったって具体的な場所が分からないんじゃ無理も良い所だろうが。せめて行きたい場所が分かるんだったら話が変わるんだが―――」
顎に手を当てながら源外は呟く。つまり生きたい場所さえ分かれば行けると言う事なのだろう。だとしたらまだ方法が無い訳ではない。
「居場所の情報があれば出来るんですね?」
「ん? まぁ、出来ない事はないと思うが……っつぅかお前誰だ?」
「僕の事は良いです。それより答えてください! 情報があれば異世界への転移は可能なんですか?」
疑問を投げ掛けた源外を他所に、ユーノは一足前に出て近づいた。
ユーノ自身負い目を感じていたのだ。自分があの時ロストロギア化したジュエルシードを封印出来ていればこんな事にはならずに済んでいたのだ。だが、力及ばずそれが出来なかったが為に今、彼女は危険な状態に立たされているのだ。急がなければならない。
「まぁ、転移が出来るかどうかは分からねぇが装置の類はあるし、後はその行きたい世界の情報さえ打ち込みゃもしかしたら出来るかも知れねぇぞ」
「良かった。それなら僕がそうです」
自分の胸に手を当ててユーノは言った。確かに、ユーノ・スクライアは元々異世界の人間だ。ジュエルシードを封印する為にわざわざ江戸の町へと転移してきたのである。だが、来たは良かったが相手にすらならず、更に懸賞金目当てでロストロギアの異相体を待ち構えていた銀時達に倒されてしまい、それが元でなのははジュエルシードの新たな宿り主となってしまったのである。
だが、彼女の体内に寄生したと言うのにそのジュエルシードが一向に起動を起こさないのは明らかに異常とも言える。
本来何かに寄生したジュエルシードは直ちに起動するのだが、今回こうしてなのはの中に寄生したジュエルシードは全く起動する気配が見受けられないのだ。
だが、それは銀時達にとっては好都合である。それが起動する前に何とかして取り除かなければならない。その為には一刻も早く時空管理局へと向うしかないのだ。
そして、その為には自分の情報が必要になる。ならば自分に出来る事をしよう。それが今自分に出来る事なのだから。
「なる程な、お前さん異世界の人間だったのか。だったら話が早い。ちょっと待ってろ」
源外はそう言うと工房の奥にある大量のガラクタの山の中へと消えていった。その姿が見えなくなると同時に大量のガラクタを退かしたり動かしたりする音が聞こえて来る。一体何をしているのかと疑問に思っている一同を他所に、源外は戻って来た。
そして、源外が持ってきたのは巨大なカプセルの類であった。大きさ的には成人男性一人が軽々と入る位の大きさであり周囲をガラスケースで覆われている仕様だ。どうやらこれでユーノの中にある異世界の情報を吸い出せるのだろう。
「おい、とりあえずこの中に入ってくれ。後はこっちでやっからよぉ」
「分かりました。お願いします」
頷き、ユーノは源外が持ってきた奇妙な装置の中へと入る。ガラスのケースが閉じられ半透明なケースの中にユーノが閉じ込められる形となる。
一体どうやって情報を吸い出すのだろう。期待を込めながらその装置を見る万事屋一同。だが、その直後であった。突如ガラスのケースの周囲を分厚いシャッターが覆いだしたのだ。
「お、おいおい爺! 一体何が起こるんだ? 何でシャッターが出てきたんだ?」
「悪いなぁ銀の字……此処から先はR指定だ」
シリアスそうな顔をしながら源外は装置を操作する。難しい装置のようらしく源外の顔つきも強張っている。
だが、そんな時であった。
「うわああああぁぁぁぁぁ!」
突如、ユーノが入っていた分厚いシャッター越しから声が響いてきた。声色からしてそれは悲鳴の類である事は間違いない。だが、悲鳴の量が半端じゃなかった。まるで何か恐ろしい類に遭遇した様な悲鳴だった。
「げげげ、源外さぁぁぁん! 何か変な物が出てきましたよぉぉぉ! ちょ、ちょっと聞いてるんですかぁぁぁ! 出して、此処から出して下さいぃぃぃぃ! うわ、来るな! 絡むな! 僕に何するんだ! 僕は食べても美味しくない……うわ、うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――あふん///」
先ほどまで聞こえてきた恐怖を演出させる悲鳴から一転し、最後は何処か艶かしい声が響いてきた。本当に一体どうやって情報を吸い出したと言うのだろうか。
疑問と不安に支配されるなか、源外が額の汗を拭い取るような動作をしつつ装置を停止させた。
「よし、情報は粗方吸い出した。これでお前等の言う時空なんちゃらって所に行けそうだぞ」
「おい、一体どうやって情報吸い出したんだ? 何で最後にあいつあんな艶かしい声出したんだ? すっげぇ気になるぞ?」
「気になるんだったらお前等も入ってみるか?」
「全力で遠慮させて頂きます!」
不適な笑みを浮かべる源外に対し、顔面蒼白状態になって首を横に激しく振る銀時達。そして、それと同時に分厚いシャッターが開かれ中が見えるようになる。
その中に居たのは、何故か半裸状態にされグッタリとなっているユーノが其処に居た。
かなり疲弊しているらしく息が荒いのか、はたまた別の意味で息が荒くなってしまったのかは、残念ながら本人にしか分からない事なので此処では遭えて聞かないでおく事にする。
そっとしておくのも優しさの一つなのである。
***
情報を吸い出した後の工程は思っていたよりも手早く済んだ。源外の話によると既に粗方の装置は出来ていたらしく、後はその装置に吸い出した情報を入れれば使えるらしい。
「それで、その装置がこれなのか?」
銀時達の前に置かれたのは先ほどユーノが入れられた装置よりも遥かに巨大なカプセルであった。
されど、以前の薄いガラス膜ではなく鋼鉄の分厚い板で覆われていた。それにこの装置も何処か物々しい感じがする。
「源外さん……この装置って一体なんですか?」
疑問に思った新八が目の前の装置を指差して尋ねる。そんな新八の前で源外は忙しそうに装置の起動準備を行っていた。
「あぁ、そいつは以前幕府に頼まれて俺が作った小型のターミナルみたいなもんだ。まぁ、完成寸前で廃棄しちまったがな」
「凄い! でも何で廃棄にしちゃったんですか?」
「お前等も知ってるだろうが! 俺が幕府に何をしたかってのを」
源外の言葉を聞き新八は思い出した。そう、源外は正しくこの装置の完成直前に例の将軍暗殺を企てたのだ。
その為この装置は完成する事なくそのままお蔵入りとなってしまったのである。もし、あそこで源外が騒ぎを起こさなかったら今頃この装置は幕府の元で今でも元気に稼動していたであろう。
偶然の積み重ねだが今はそれが何とも有り難い事となって帰って来てくれた事には嬉しく思える。
「うし、情報の打ち込みは終わった。お前等、すぐ中に入れ! とっとと装置を使うぞ」
「って、大丈夫なのかよそれ? お蔵入りになってたんだろ? 埃とか被っててぶっ壊れてたりしてるんじゃねぇのか?」
「馬鹿言うんじゃねぇ。俺を誰だと思ってやがる。例えガラクタだろうと大事にしてらぁ! 心配してねぇで早く乗れ! そのガキを助けたいんじゃねぇのか?」
源外の言葉に銀時は頭を掻き毟りながら中に入る。それに続いて新八、神楽、定春、そして一匹の小動物が入り込んだ。
「って、何だこの鼠は?」
突如入り込んで来た小動物を捕まえて目の前に持ち上げる銀時。体毛は黄土色っぽい色柄で鼠よりは若干大きいがその程度の大きさでしかない。
そして、その小動物の首には例にもよって赤い球体が吊り下げられていた。
「鼠にしちゃ大きいなぁ。イタチか何かか?」
「何やってるんですか銀さん。そんな素性の分からない動物なんかほっときましょうよ」
「それもそうだな」
新八の言葉に頷き小動物を捨てようとする。だが、そんな時、小動物が銀時の手にしがみついてきた。
「あ? 何この小動物? 引っ付いて離れないんだけど―――」
「あの……僕ですけど」
「な、小動物が喋ったあああああああああああああああああ!」
正しくそれはカルチャーショック並の出来事であった。何しろ目の前の鼠らしき生き物が突如口を聞いたのだから。
「って、君はもしかして……ユーノ君? でも何でそんな姿になっちゃったの?」
「すみません……暫く人間の姿には戻りたくないんです」
俯いた状態で小動物になったユーノは答えた。どうやら先ほどの装置が余ほど堪えたのだろう。同情する新八であった。
「よし、準備完了だ。お前等の方はどうだ?」
「何時でもオッケィアルよぉ!」
神楽の元気の良い声が工房内に響く。それを見て源外も頷く。
「装置を起動させる前にお前等に幾つか注意を言っておく。一回しか言わないから耳かっぽじって良く聞いておけよ」
「んだよ珍しいな。大概だったら俺等が装置を起動させた後に【それは○○だから今は絶対に押すな】とか言う筈なのによぉ」
「何でもかんでも同じじゃつまらねぇだろうが。良いから黙って聞け」
銀時を黙らせた後、軽く咳払いを交えて源外は説明に入った。
「まず行き先だが、其処の坊主の体からその世界のある程度の情報は手に入れられた。だが残念だが時空なんちゃらって言う奴の情報は今一難しいんで解析に時間が掛かる。しょうがないから簡単な場所に転移させる事にするぞ」
どうやら時空管理局の情報は手に入れられたようだ。だがそれをこの装置で使うにはある程度解析が必要ならしく、しかもそれには時間が掛かると言う事が分かった。なのでそれだと時間切れになる危険性もあるので仕方なく時空管理局の管理している世界に適当に転移させる方針を取ったらしい。
そして、問題はまだもう一つあった。
「それから、この装置だが、まだ未完成でなぁ。片道分しか行かせられねぇんだよ」
「おいおい、片道切符かよ。どうすんだよ爺」
「まぁ、お前等を送り込んだ後で改造しておく。つってもそっちの世界とこっちの世界の時間が同じとは限らねぇ。俺が1週間で改造を終えたとしてもそっちじゃ100年後になるかも知れねぇ。其処んとこを頭に入れておいてくれ」
源外が言ったのは帰りの事と時差の事だ。この装置は行きの方は完璧だが残念な事に帰りに関しては全く機能してないのだ。
と、言うのもこの装置は実は2台でセットとして作る筈だったのである。
そうする事で城同士の行き来を楽にし、辻斬りや追い剥ぎから将軍や家老を守るのがそもそもの目的であったのだ。
だが、前にも言った通り完成寸前で源外が騒ぎを起こしたので結果としてそれが幕府に届く事はなくなってしまったのである。
そして、次に注意したのは今居る世界とこれから行く世界の時差の問題である。
日本とアメリカでは時差があり、日本が昼だとしてもアメリカでは夜と言う感じの時差が発生している。
それでも、たった1日くらいの時差で済んでいる。しかし、それがもし異世界で起こっている事だったとしたら楽観視は出来ない。
下手すると1年や10年、最悪の場合100年位の時差があるかも知れないのだ。
詳細は分からないが下手すると一生江戸に返れない危険性も孕んではいる事になる。
「どうする、降りるんなら今の内だぞてめぇら」
念の為に源外は尋ねた。住み慣れた故郷との永遠の別れになるかも知れないのだ。悔いの残らないようにしてやろうと言う源外なりの優しさでもあった。
「舐めんなよ爺。俺達ぁ万事屋だ! 異世界に行くのが怖くて他人様の依頼がこなせるかってんだ!」
だが、その心配を拭い去るかの様に銀時がおおっぴらに啖呵を切った。それを皮切りに新八や神楽も頷く。
「僕も同じです。銀さんの下で働くと決めた時からこんな日が来るって事は覚悟してました。それに、なのはちゃんは僕達にとっても大事な家族です。見捨てるなんて出来ません」
「私も同じアル! もし帰れなかったらその世界で女王にのし上がるまでアルよ!」
皆覚悟は決まったようだ。ふと、横目でユーノを見ると、彼は何故か号泣していた。
不祥事を起こしてしまった自分の為に皆が命を張ってくれるという事実に嬉しくなって泣いてしまったのだろう。
そんなユーノを見て銀時はふっと笑みを浮かべた。
「勘違いすんなよユーノ。何もお前の為にこうして命を張ってるんじゃねぇ。家の屋台骨の為にこうしてやってんだ。だからこの件が済んだらたんまり謝礼を払って貰うから覚悟しておけよ」
「は、はい……あの、ローンで構いませんよね?」
どうやら今手持ちはあんまりないようだ。まぁ、余り期待はしないで待つ事にしよう。そう思う銀時であった。
「銀の字。お前等の目の前に赤いボタンがあるだろう。それを押すとだなぁ―――」
「おぉっと、騙されねぇぞ! 毎度毎度同じような手を使いやがって! どうせあれだろ? このボタンを押すと【装置が暴走しちまって制御不能になっちまうから今は押すな】って言う類だろうが! 今度は騙されねぇぞぉゴラァ!」
誰も下手に押さないように必死に両手で新八や神楽を抑える銀時。一体ボタンに何があったかは不明だが、とにかく引っ掛からないようにしようと努めているようだ。
「いや、そのボタンを押すと装置が起動するからさっさと押せ。って言おうとしたんだけどよぉ」
「そっちかよ!」
ノリツッコミの如く手を空で叩く銀時。何はともあれ装置が起動するのならば押すに限る。
そんな訳で何の問題もなく銀時は装置のボタンを押した。
唸りを上げて装置が動き出していくのが分かる。どうやら壊れてはいないようだ。
「よし、順調だな。良いか、完成は何時になるか分からんが完成したら連絡を入れる。銀の字、お前確か携帯持ってただろ?」
「んなの持ってる訳ねぇだろうが。こう見えて銀さん金ねぇんだからなぁ」
「嘘つけ。前にそのガキに頼まれて連絡だけ出来る携帯作ったぞ」
「え? あぁ、これね……」
ふと、銀時がポケットから取り出したのは型の古い折り畳み式の携帯であった。
因みに色は銀時の髪型に合わせてある。実はこれを作らせたのはなのはであった。
銀時自身連絡手段を全く持っていなかった為に源外に頼んで作らせたのである。
されど、費用を安くする為に通話による連絡しか使えない。
その為銀時自身持ち歩いてはいるがあんまり使った試しがなかったのですっかり忘れていたのだ。
「そんな訳だから出来次第お前の携帯に連絡するから肌身離さず持ってろよ」
「わぁったよ。なるだけ早く迎えに来いよ。来週のジャンプを買わないといけないしな」
相変わらずな銀時であった。そして、装置の動きが更に活発になり、いよいよ転移が行われるかと思われた正にその時、突如装置が一段と激しく動いた。
かと思うと、辺りに火花が飛び散り、周囲が赤く点滅しだしたのだ。
「げ、源外さぁん! これは一体どうしたんですかぁ!」
「爺、ぶっ壊れてねぇって言っておきながら結局ぶっ壊れてるじゃねぇか!」
壁越しに源外に怒鳴り散らす銀時と新八。だが、それ以上に源外が焦っていたのは見て取れる。
「一体どうなってんだ? 内部から装置を侵食してる奴が居やがる。おい銀の字! お前何か変な物持って来てねぇか? 内部から装置が侵食されてんだよ」
「内部からって……そんなハイテク機器を俺達が持ってる訳……」
「持ってる訳ない」そう言い切る前に銀時は気づいた。確信はないがそんな事が出来る代物を。
そして、ふと銀時は新八に背負われたまま眠りっぱなしのなのはを見た。彼女の中にはユーノの言うロストロギア、ジュエルシードがある。恐らくこいつが原因なのではないだろうか。
「駄目だ、復旧出来ねぇ。銀の字! 緊急停止だ! 隣の青いボタンを押せ!」
「分かった!」
頷き、起動ボタンの横にある青いボタンを押そうと指を伸ばす。
だが、ボタンに触れた途端、激しいスパークと共に指に激痛が走った。
「んでぇっ!」
声を挙げて咄嗟にボタンから指を離す。
「駄目だ! おい爺、そっちで止めてくれ!」
「無理だ! 完全にコントロールを奪われた。こっちじゃもう止める事は出来ねぇ! ハッチの開閉も無理になっちまった。もうお手上げだ」
「冗談じゃねぇぞ」
最悪であった。折角光明が見えてきたと言うのにそれすらもこのジュエルシードは奪おうとしているのだ。
木刀を奮って外に出ようと言う考えもあったが無理だった。先ほどのカプセルより大きいと言ってもその中は電話ボックスよりも一回り位大きい程度でしかない。そんな中では木刀を奮う前に腕が引っ掛かってしまう為に抜く事も出来ない。
それに、もし抜けたとしても恐らく無理だろう。このジュエルシードの影響で壁全体にスパークが走っている。下手に攻撃しようものなら忽ち黒焦げになるのは間違いない。
そうこうしている内に装置が完全に動き出してしまい辺りが閃光に包まれだしてしまった。
「ちっ、しゃぁねぇ。おい爺! ちゃんと修理して俺達の事迎えに来いよ!」
「分かった。その代わりお前も戻ってきたらちゃんと代金払えよな!」
「請求なら俺じゃなくて時空管理局にでもしてくれ。そいつらの怠慢が今回の原因なんだからよぉ!」
最後にそう言い残した直後、閃光はなくなり、装置の中に居た銀時達の姿もなくなっていた。
何処に飛ばされたのかは定かではない。行き先はジュエルシードしか知らないのだから。
飛ばされた世界が人の住める世界であれば良いのだが、もし其処が宇宙空間であれば最悪だ。
「考えてても仕方ねぇか。今は装置の改造と情報の解析が先だな……ま、あいつらなら問題ねぇだろう」
そう自分自身に言い聞かせながら、源外は作業に入った。銀時達との約束を果たす為に。
そして、謝礼を貰う為にである。
つづく
後書き
次回【地図やガイドブックを持ってても迷う時は迷う】
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