八条学園怪異譚
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第三十二話 図書館その八
「で、気付いたら烏天狗さん達に保護されてってことが多かったのよ」
「妖怪さん達にですか」
「そうだったんですね」
「そうよ、後はね」
「後は?」
「後はっていいますと」
「お酒も覚えたのよ」
常に飲んでいるそれもだというのだ。
「中学生の頃にね」
「というか先輩にお酒誰が教えたんですか?」
愛実が茉莉也にそのことを尋ねた。
「うわばみさんですか?」
「違うわ、ろく子さんよ」
博士の助手である彼女がだというのだ。
「あの人に勧められてなのよ」
「あれっ、あの人お酒飲まれるんですか」
「そうだったんですか」
「そうよ、あの人酒豪でもあるのよ」
ろくろ首である彼女はというのだ。
「あれでうわばみさん位飲むから」
「そこまでなんですか」
「無茶苦茶飲まれるんですね」
「凄いわよ、私にお酒を教えてくれたのはあの人だから」
それでだというのだ。
「うわばみさんとさしで飲むこともあるわよ」
「ううん、知的美人こそ酒豪なんですね」
「そうなんですね」
二人もその話を聞いて言うのだった、そして。
そうした話を聞いてそうしてだった。
三人であれこれ話していた、その中で茉莉也は今度はこう言ったのだった。
「図書館だけれどね」
「今日はそこに行くつもりですけれど」
「あそこに」
「あそこも十二時よ」
その時に行けばというのだ。
「十二時に奥の本棚が並んでいるところを時計回りに何度か回ればね」
「それで、ですか」
「そこが泉かどうかわかるんですね」
「そうなの、ただ問題は」
「問題?」
「問題はっていいますと」
「あそこにいる妖怪さんだけれどね」
ここで話すのはその妖怪のことだった。
「ちょっと困った人だから」
「先輩みたいな人ですか?」
聖花はこう茉莉也に返した、困った人と聞いて。
「それじゃあ」
「私が困った人ってね」
「いえ、そうですよね」
「私って困った人だったのね」
「どう見てもそうですよね」
「言うわね」
むっとした顔で返す茉莉也だった。
「私はこれでも面倒見がいいのよ」
「それはそうですけれど」
「挨拶が駄目とかいうのかしら」
「セクハラしてくるじゃないですか」
言うのはこのことだった。
「それを考えたらやっぱり」
「私が困った人っていうのね」
「セクハラ止めて下さい」
聖花だけでなく愛実も茉莉也を挟んで言う。
「お願いですから」
「私達そういうの駄目なんで」
「寂しいわね、それは」
「いや、寂しいとかじゃなくてですよ」
「セクハラは駄目ですよ」
「セクハラじゃなくてスキンシップとは考えないの?」
まだ言う茉莉也だった、流石に今は二人を抱き寄せたりはしないが左右に侍らした状態で話すのだった。
「そういう風には」
「いえ、全然」
「全く考えないですから」
二人はその茉莉也に即座に返した。
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