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ヘタリア大帝国

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TURN75 ベルリン講和会議その八

「この講和会議にね」
「両国共それなりのことを要求してくると思いますが」
「領土の割譲や賠償金はなしにしても」
「それでもです、やはり彼等も国益があります」
「要求は強いと思いますが」
「まあそうだろうね」
 ヒムラーは側近達、表向きのそれである彼等の話を聞きながらもやはり態度は変えずそのうえで言うのだった。
「けれどこっちも譲れないものは譲らないからね」
「果たして上手にいくでしょうか」
「今の我々で」
「確かに戦力があり大怪獣もあります」
「ですが」
 ヒムラーが連れて来た二十個艦隊とサラマンダーがエイリスとソビエトに領土の割譲や賠償金を思いとどまらせている、ドクツにとっては切り札だった。
 だがそれでも彼等がドクツを無条件降伏の一分前まで追い詰めたのは事実だ、それならばその要求もだというのだ。
「技術の引渡しや戦争での前線担当等」
「そうした要求をしてくるのでは」
「言ってくるだろうね」
 ヒムラーもこのことは読んでいた。
「やっぱりね」
「ですからそれは」
「どうすべきかですが」
「だから安心していいよ」
 ヒムラーは不安な顔の側近達に述べた。
「そのことはね」
「総統がそうされますか」
「彼等の要求を突っぱねられますか」
「うん、そうだよ」 
 あくまでこう言うヒムラーだった。
「安心していいよ。それはね」
「私達もですか」
「そうだっていうんだね」
「無論だよ」
 ヒムラーは同席しているドイツ妹とプロイセン妹に対してにこやかに笑って述べる、尚ぴえとろにはイタリア妹とロマーノ妹が同席している。
「君達についても悪い様にはならないからね」
「最前線に立つことは覚悟しています」
「あと色々な勤労奉仕もね」
「それもないね」
 そうした危険な役目も請け負わされることもないというのだ。
「俺がつっぱねるからね」
「そんなに上手にいくかね」
 プロイセン妹は怪訝な顔になりヒムラーに返した。
「エイリスもソビエトもそれなりの要求をしてくるよ」
「この国を降伏寸前に追い詰めたからね」
「この国?」
 プロイセン妹はヒムラーのこの表現に微かに違和感を感じた、だがそれは微かでありしかも一瞬のことだったのでこの時はそれで終わった。
 そしてあらためてこう言うのだった。
「とにかくそれだけ追い詰めたからね」
「要求はっていうんだね」
「してくるよ。この人達も言ってるけれどね」
 プロイセン妹はその表向き、ヒムラー以外はそのことに気付いていない総統の側近達を見てまた言った。
「領土や賠償金の話はなくてもね」
「技術だの前線勤務だのだね」
「それ位は普通に言ってくるよ」
「まあまあ。深刻に考えることはないよ」
 ヒムラーの態度は変わらない。
「何度も言うけれど俺に任せてくれよ」
「だといいけれどね」
「総統にお任せします」
 プロイセン妹もドイツ妹もとりあえずこれで納得した。そしてだった。
 二人は自分達の席に着いた、ドクツがホストの席であり彼等から見て右手がエイリス、左手がイタリンだった。向かい側はソビエトだ。
 そのドクツの中央の席にドイツ妹とプロイセン妹を左右に置いて座っているのがヒムラーだ。彼は軽い物腰でそこにいて言う。
「まあ気楽にいこうか」
「気楽に、ですか」
「これからの欧州のことを決めよう、新生連合国のことをね」
 ドイツ妹に腰を捻って上半身を向けて言う。その目はまだ誰も気付いていないがレーティアとは違い妖しい光を放っていた。ベルリンでの会議が今はじまろうとしていた。


TURN75   完


                   2012・12・14 
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