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万華鏡

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第三十一話 怪談話その十一

「そやけどや」
「そういう話があるんじゃな」
「そういうことっちゃ」 
 こう宇野先輩に話す。
「凄い話じゃろ」
「確かになあ。わしもかなり驚いたわ」
 宇野先輩は呆然とした顔になっている、無論五人もだ。
 里香もその顔でこう言うのである。
「そんな話があったんですね」
「そう聞いたで」
「じゃあその牛女もですか」
「偉いさんのところ転々とさせられて囲われてたみたいやさかいな」
「予言してたんですね」
「そうやろうな」 
 考える顔で里香に答える。
「やっぱりな」
「そうなんですね」
「信じられん話やけどな」
 高見先輩自身こう言うのだった。
「ちょっと以上にな」
「そうですよね」
「そやけどこうした話もあるってことや」
 怪談としてだというのだ。
「神戸の牛女以外にもな」
「あの牛女も予言するんでしょうか」 
 今度は琴乃が言う。
「やっぱり」
「どやろな、車を物凄い速さで追っかけてくるらしいけれど」
 これはもう一方の妖怪も同じだ。
「あれはな」
「予言はですか」
「どやろな」
 神戸の牛女は、というのだ。
「予言するやろか」
「せんじゃろ」
 宇野先輩はこう高見先輩に言った。
「ちょっとちゃう種類みたいじゃけえ」
「そやから山の中におってか」
「件みたいなのとは多分違うけえ」
 これが宇野先輩の予想である。
「そやからじゃ」
「車も追っかけるんやな」
「その東京におったのは多分件のあれじゃけえ」
 それになるというのだ、東京の方は。
「予言してたんじゃ」
「戦争のこととかですね」
「それじゃろ」
 宇野先輩は里香にも答える。
「戦争中の話じゃしな」
「それで、ですね」
「そうでないと偉い人に匿われんわ」
 それ自体ないというのだ。
「ほんまな、まあとにかくじゃ」
「牛女もですね」
「山も怖いんじゃ」
 海だけではないというのだ。
「山も一杯妖怪がおるんじゃ」
「それも怖いのがですね」
「狒々は怖いで」
 高見先輩はまた狒々の話をする。
「あれな、めっちゃ女好きやねん」
「えっ、猿なのにですか?」
「女好きなんですか」
「そや、ヒヒ爺って言葉あるやろ」 
 所謂好色爺のことだ、親父からなるものだ。
「その言葉にあるやろ」
「ああ、あれ狒々からですか」
「その妖怪からだったんですね」
「そやねん、狒々ってのは女の子が大好きやから」
「迂闊に近寄ったら何されるかわからないんですね」
「食べられるだけじゃなくて」
「そやから怖いねん」
 狒々はその好色さからもだというのだ。
「近寄らん方がええで」
「そうですか」
「そうなんですね」
「山他にも一杯怖い妖怪おるしな」
 それは山姥だけではないというのだ。 
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