【完結】剣製の魔法少女戦記
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第五章 StrikerS編
第百二十一話 『お茶会と最初のアラート』
前書き
最初はカリムSideから始まります。
サブタイトルに「新デバイス」も入れたかったのですが今回はお茶会の要素の方が多いのでこういう形になりました。
Side カリム・グラシア
私は部屋で書類仕事をしていた。
そこにシャッハから通信が入ってきて、
『騎士カリム。騎士はやてと騎士シホがまいられました』
「早かったのね。私の部屋に連れてきてちょうだい」
『はい』
「それとお茶を三つ。ファーストフラッシュのいいところをミルクと砂糖付きでね。
後、くれぐれもリンディ提督のように入れすぎないようにお願いね?」
『か、畏まりました…』
シャッハとはそれで通信は切れる。
少し最後のセリフの後に苦笑いを浮かべていたから分かってくれただろう。
そしてすぐにターバンを巻いた姿のはやてとシホが部屋に入ってくる。
「カリム、久しぶりや」
「久しぶりね、カリム」
「はやて、シホ。いらっしゃい」
それから三人でお茶会を開きながら話を交わしていた。
「ごめんなぁ、すっかりご無沙汰してもうて」
「気にしないで。部隊の方は順調みたいね。シホの方は大丈夫…?」
「ええ。魔術を封じる手は今のところ魔術回路そのものを封印する以外に手はないからね。
だからいつでも全開で戦闘が出来るわ。そこは大丈夫よ」
「そう」
「なにもかも全部カリムのおかげや」
「ありがとね、はやて。
でも、そういうことにしておくと色々とお願いもしやすいかな…?」
「なんや。今日会って話すんはお願い方面か?」
「なにか重要な話…?」
はやてとシホは気づいたようだ。
だから私は部屋に暗幕をかけて映像を映し出す。
「これ…ガジェット? 新型?」
「今までの一型以外に新しいのが二種類。戦闘性能はまだ不明だけど、これ…」
三型の画面を拡大する。
「人よりかなり大きいわね…」
「大型ね。本局にはまだ正式に報告はしていないんだけど監査役のクロノ提督にはお伝えしたけど…」
もう一つの画面を映す。
そこにはレリックに似たケースが映し出される。
これに二人はやはり表情を変えてじっと見ていた。
「レリックやね」
「これはどうしたの…?」
それで一昨日からの事を二人に伝える。
二型と三型も昨日からの出現だということも。
「ガジェットがレリックを見つけ出すまでの予想時間は…?」
「調査では早ければ今日明日よ」
「でも少し早いな…」
そうなのである。
だから今日二人を呼んで話がしたかったのだ。
レリック事件では失敗をするわけにはいかないから。
でもはやては突然暗幕を解除して、
「まぁ、なにがあってもきっと大丈夫。
カリムが力を貸してくれたおかげで部隊はもういつでも動かせる。
即戦力の隊長達はもちろん…新人フォワード達も実戦可能。
予想外の緊急事態にもちゃんと対応できるよう下地ができているからな。
そやから大丈夫や!」
「そうよ、カリム。それに私達には他にも心強い味方が何人もいるから平気よ。
いざとなればサーヴァント戦闘承認を許可してくれれば、サーヴァントも全員出動できる。
それでなら全員力を合わせればなんでも解決してあげるわよ」
「そう…頼もしいわね」
サーヴァントの皆さんは私かクロノ提督の許可がないと極力戦闘に参加できないという決まりが機動六課を作る際に決められたから面倒なのよね。
「それにいざって時はレリックを闇に葬っちゃえばいいんだし…」
「シホちゃん、またそんな過激なことを…」
「できるできないかで言えばできちゃうのがシホの恐ろしいところよね…」
それで三人で笑いあった。
それから紅茶を飲みながら談笑している時である。
ふと私はある事を思い出した。
「あ、シホ。まだ時間はあるわよね?」
「どうしたの、カリム。改まって…?」
「ええ。もしよかったらだけど、また古いベルカ語の書の解読作業を手伝ってもらってもいいかしら?」
「………また無限書庫からの依頼?」
「そうなのよ。
昔の古いベルカ語を読めて解読できる人は限られてくるからシホと、それとオリヴィエ陛下は貴重な戦力なのよ。
私もそこそこできるけどシホ並みにはいかないし…。
それにオリヴィエ陛下の手も煩わせるわけにはいかないのよ。
だからシホが一番気兼ねなく頼めるのよね」
そう。
シホは『聖なる錬金術師』、シルビア・アインツベルンと魂と記憶が融合しているから古代ベルカ語がペラペラなのである。
それでよくユーノ司書長から依頼を受けることが多いという。
「ユーノもいい加減な仕事をするわね…。
私だって色々と忙しい身なのはわかっているでしょうに…。
私より考古学者の人を使えばいいじゃない…」
「あはは。それでもやっぱり解読できるスキル持ちは嬉しいものやし手伝ったらどうや? シホちゃん。
解析魔術の幅も増えたことやしな」
「ま、そうだけどねぇー…」
シホはもう何度も翻訳をしているからその面倒さが身に沁みて分かっているからなのか、シホにしては珍しくダルそうに答えている。
と、そこにシャッハから通信が入ってきて、
『騎士カリム。騎士シホの使い魔であるアルトリアさんとネロさんが到着されました』
「そう。それじゃ追加でお茶を、それとアルトリアさん用にケーキも用意してね」
『畏まりました』
「悪いわね、カリム。わざわざケーキまで出してもらっちゃって…」
「いいわよ。アルトリアさんのケーキを食べる姿はある意味癒しだから」
でも本人の前では言わない。
言ったらきっと、
『カリム、あなたは勘違いしている。決して私はケーキが美味しいという理由だけで顔を綻ばせているのではありません。これは、そのですね…』
と、必死に言い淀む姿がすぐに思い浮かぶのは、もう慣れたからだろう。
アルトリアさんは騎士道精神とプライドが高いから素直ではないのである。
それから二人が部屋にやってくるなりケーキをご馳走すると、思ったとおり。
アルトリアさんは想像通りの反応をしているのである。
それで私は思わず「クスッ」と笑ってしまった。
「…? む、どうしたのですか、カリム。私の顔を見ながら笑うのはよしてください」
「それは無理な相談であろう。アルトリアよ。
まずは鏡で自分の顔を見つめ直してみることだな。
ほっぺたにクリームがついておるぞ…?」
「ッ…! 恥ずかしいところをお見せしました」
「むぅ…仕方がないな。ほれ、顔を貸してみよ?」
それでネロさんがアルトリアさんの顔をハンカチで拭いてあげている。
その光景は、二人の容姿が似ていることもあり姉妹のやりとりのような光景に映ってしまう。
シホとはやても和む光景で思わず笑みを零して二人を見ているから私のこの想いは間違いではないだろう。
「す、すみません。ネロ…」
「よい。姉妹同盟では余が姉の立ち位置なのだからこれくらいの事は雑作もないからな」
えっへん!と胸を張るネロさん。
背は小さいから背伸びしている子供のように見えて微笑ましい。
「………カリムよ。なにか失礼なことを考えはしなかったか?
特に余のコンプレックスである背のことに関して」
「い、いえ…そんな事はないわよ? ネロさん」
「そうか…? まぁ、別に構わないがな」
よかった…。やっぱり勘が鋭いからヒヤヒヤものである。
そんな感じでお茶会はつつがなく行われていったがそこで緊急のアラートが鳴り響く。
それですぐにシャッハに通信を入れて、
「シャッハ、どうしたの…?」
『はい。ガジェットの大群が出現したそうです。狙いはやはりレリックだと思われます』
「わかったわ!…というわけよ。はやて、シホ。お願いね?」
「任せとき!」
「任せて、カリム!」
それで慌ただしくなる室内。
はやてを送り届けるようにシャッハに準備をさせる。
シホ達も裏手から飛べるように手配をする。
…これが機動六課初の任務なのね!
打つ手はもう出来る限りは打ってあるから、後は任務に失敗しないことを祈るだけだわ。
◆◇―――――――――◇◆
…時間は少し遡り、
Side ラン・ブルックランズ
「これが…」
「あたし達の新デバイス、ですか…」
スバルさんとティアさんが驚いている。
でも、私とレン、エリオとキャロは特に驚きはないかな。
待機状態はとくに変わりはなさそうだから。
「そうでーす。設計主任あたし!
協力、なのはさん、フェイトさん、シホさん、レイジングハートさん、リイン曹長」
やっぱり豪華な顔ぶれだなぁ…。
「ストラーダとケリュケイオン、バルムンクにアウルヴァンディルは変化なしかな?」
「うん。そうなのかな…?」
「違いまーす! 違うのは外見だけですよ」
「リインさん!」
「はいです!」
そこにリインさんが登場する。
「四人はちゃんとしたデバイスの使用経験はなかったですから感触に慣れてもらう為に基礎フレームと最低限の機能だけで渡していたです!」
「あ、あれで最低限…?」
「本当に…?」
「あれでかぁー…それじゃこれからいろいろと振り回されちゃうかな?」
「気をつけなきゃね、ラン姉さん」
「みんなが扱う6機は六課の前線メンバーとメカニックスタッフが技術と経験の粋を集めて完成させた最新型。
部隊の目的に合わせて、そしてエリオやキャロ、ランにレン、スバルにティア。それぞれの個性に合わせた機能の付いた文句なしに最高の機体です!
この子たちはみんなまだ生まれたばかりですが、色々な人の願いや思いが込められていていっぱい時間をかけてやっと完成したです。
だからただの道具や武器と思わずに大切に、でも性能の限界まで思いっきり全開に使ってあげてほしいです」
すごい…。
こんな最新式をもらえるなんて嬉しくなっちゃうな。
あ、でも、
「魔術式は積んであるんですか? これってすずかさんが積んでくれたんですけど…」
「うん。しっかりと積んであるよ。そこらへんはしっかりと学ばせてもらったからね」
「そうですか。なら、よかったです」
「で、この子達もきっとみんなに使われることを望んでいるから」
そこにドアが開いてなのはさんが中に入ってくる。
「ごめんごめん! おまたせ!」
「なのはさん!」
「ナイスタイミングです。これから機能説明をしようかと」
「そう…。もう、すぐに使える状態なんだよね?」
「はいです!」
それでシャーリーさんが機能説明に入る。
「まずそこの子達はみんな。何段階に分けて出力リミッターをかけているわけね。
一番最初の段階だとそんなにびっくりするほどのパワーが出るわけじゃないから、まずはそれで扱いに慣れていって」
「それで各自が今の出力を使いきれるようになったら私やフェイト隊長、シホ隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから」
「ちょうど一緒にレベルアップしていく感じですね。わかりやすく言いますとですけど」
「出力リミッターっていうと…なのはさん達にもかかっていますよね?」
「ああ、私達はデバイスだけじゃなくて本人にもだけどね」
「ええ? リミッターがですか?」
それは一応シホさんに聞いていたから理解はしている。
「能力限定って言ってね。うちの隊長と副隊長はみんなだよ。
私とフェイト隊長、シホ隊長、ヴィータ副隊長、シグナム副隊長、フィアット副隊長も」
「はやてちゃんにもですよね。後、士郎パパもです!」
「うん」
「ええっと…」
それでキャロは少し迷っている。
「ほら、部隊ごとに保有できる魔導士ランクの総計規模って決まってるじゃない」
「ああ、うん。そうですよね…」
スバルさんが少し乾いた声で答えていた。もしかして忘れていたのかな?
「一つの部隊でたくさんの優秀な魔導師を所有したい場合はそこにうまく収まるように魔力の出力リミッターをかけるですよ~」
「ま、裏ワザってみたいなものだけどね」
「うちの場合ははやて部隊長が4ランク、シホ隊長が3ランク、あとの隊長たちは2ランクダウンかな。おまけに士郎さんも2ランクダウンしているね」
「四つ…八神部隊長はSSランクだから…」
「Aランクまで落としているんですか…?」
「シホさんも3ランクだからAAランクまで…」
「はやてちゃんとシホさんも色々と苦労をしているです」
「それじゃなのはさんは…?」
「私はもともとS+だったから2.5ランクダウンでAA。だからもうすぐみんなの相手もそう簡単にできなくなるかな?」
「隊長さん達ははやてちゃんの。
はやてちゃんは直接の上司のカリムさんか、部隊の監査役でもあるクロノ提督の許可がないとリミッター解除ができないです。
そして許可は滅多なこと以外は出せないそうです」
「そうだったんですか…」
「でも話は変わりますが、シホさんに関しては魔導師ランクはあってないようなものですから」
「なんでですか…?」
「シホさんの本質は魔導師じゃなくて魔術師…今の管理局の技術では魔術師にリミッターをかけられるほど神秘の理解はされていないんですよ。
だからシホさんが魔術だけを使用しようと思ったら軽くSランクは突破です。
でもシホさんの魔術は強力ですから滅多なことがない限りはあんまり使うなって何度も口うるさく言われているんですよ。
そしてサーヴァントの人達も許可がない限り極力戦闘には出られませんから」
「八神部隊長以上の最高戦力ということですか…」
「そういうことです。それと食堂にいる士郎パパもシホさんと同じくSSランク魔導魔術師ですからね?」
食堂にも最高戦力がいる部隊ってあんまりきかないよね?
それだけこの部隊の異常さが際立っているってことだね。
「ランとレンも魔術師だけの方なら魔導師ランクより高いですよね?」
「あ、はい」
「うん…リミッターがないからやるならどこまでも力を高めることができます。
上げすぎると自滅の可能性も孕んできますけど…」
「そうですね。それで魔術師に関してはここまでにしておきましょうか」
「そ、そうですね…」
それでティアナさんが少し考え込んでいるけどどうしたのかな?
「話は戻して隊長達の事は心の片隅くらいにおいといていいよ。
今はみんなのデバイスの話だから」
「新型もみんなの訓練データを基準に調整しているからいきなり使っても違和感はないと思うよ」
「午後の訓練の時に微調整しようか」
「遠隔調整もできるから手間はそんなにかからないと思いますよ」
「ふえー、最近は便利だよね」
「便利です~!」
なのはさんとリインさんがそう言って驚いている。
「スバルの方は、リボルバーナックルとのシンクロ機能もうまく設定できてるから」
「ほんとですか!?」
「持ち運びが楽になるように、収納と瞬間装着の機能もつけといたよ。
これでいちいち持ち運びしなくて済むよ」
「わぁ~、ありがとうございます!」
これから一緒に過ごしていく相棒を片手に私達はやる気を出していた。
でも、そんな時にいきなりアラートがなった。
これって、
「一級警戒態勢!?」
エリオがそう叫ぶ。
タイミングがいいのか悪いのか分からないね。
「グリフィス君!」
『はい。教会本部から出動要請です!』
そこに八神部隊長が画面に映ってきて、
『なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君! こちらはやて!』
「うん! 状況は?」
『教会騎士団の調査部で追っていたレリックらしきものが見つかった。
場所は山岳丘陵地区。対象は山岳リニアレールで移動中!』
『移動中!?』
移動中のフェイト隊長も画面越しで驚いている。
「まさか!」
「そのまさかや。内部に侵入したガジェットが列車のコントロールが奪われてる。リニアレールの車内のガジェットは最低でも30体。
大型や飛行型の未確認タイプも出てるかも知れへん。
いきなりハードな初出動や。
なのはちゃん、フェイトちゃん、いけるか…?」
『私はいつでも!』
「私も」
『スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ラン、レン、みんなも大丈夫か?』
「「「「「「はい!」」」」」」
『いい返事や。
シフトはAの3。グリフィス君は隊舎での指揮。リインは現場管制。なのはちゃんは現場指揮!
…シホちゃんもすぐにこちらから向かわせるわ!
…ほんなら、機動六課フォワード部隊、出動や!!』
「「「はい!」」」
『了解。みんなは先行して! 私とランサーもすぐに追いかける!』
「うん!」
フェイト隊長からの言葉もあり私達は準備を開始した。
そしてヘリに乗り込み私達は隊舎を後にする。
「新デバイスでぶっつけ本番になっちゃったけど練習通りで大丈夫だからね?」
「はい…」
「頑張ります!」
「ランとレンも自分のペースでね」
「わかりました!」
「が、頑張ります…!」
「エリオとキャロ、そしてフリードも頑張るですよ」
「「はい!」」
「キュクルー!」
「危ない時は私やフェイト隊長、シホ隊長とリインがフォローするからおっかなびっくりじゃなくて、思いっきりやってみよう!」
「「「はい!」」」
ようし! 初任務だけどシホさんに褒められるように頑張ろう!
「レン、頑張るわよ!」
「う、うん! 僕も頑張る!」
「その意気!」
それで落ち着いて周りを見回してみるとやっぱり緊張の色が見え隠れしている。
特にキャロは落ち着いていない。
でもエリオがしっかりと気遣っている。
やっぱり同い年、わかりやすいのかもね。
年下三人に負けないように頑張るわよ!
後書き
今回はアラートまでを描きました。
カリムよ…なぜリンディ茶の事を知っている…?
それとアルトリアとネロの姉妹同盟で場を和ませてみました。
それからスパム感想は対策はしてくれるそうですが、まだ来ますので来るたびに削除していきますのでよろしくお願いします。
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