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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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番外編
番外編3:地上本部攻防戦
  第4話


なのはやフェイトと別れたティアナ・スバル・ギンガの3人は,
地上本部の建物に向かって走っていた。
ティアナはリインからの情報で地下への突入地点を,地上本部の脇にある
地下水道へのマンホールに定めていた。
後少しで目標のマンホールに着こうかというとき,少し後を走っていた
ギンガが立ち止まった。

「ギンガさん?」

「ごめん,はやてさんから通信。たぶんデバイスの受け渡しの件だから,
 ティアナとスバルは先に行って」
 
「ギン姉?」

スバルはギンガと別れて進むことに不安そうな表情を見せる。

「判りました。部隊長にデバイスを渡したら早く追ってきてくださいね」

ティアナがそう言うと,ギンガは小さく頷き,スバルは目を見開いて
ティアナを見る。

「ティア!?」

「戦闘機人を地上本部の中に入れるわけにはいかない。
 サッサと行くわよ!」
 
ティアナはそう言うと突入地点に向かって走り出す。
スバルは,少し逡巡するとティアナを追って走り出した。
ティアナに追いつくと声をかける。

「ごめん,ティア」

スバルは短くそう言うとティアナの隣を走る。
ティアナはスバルを一瞥すると,再び前を向いた。

「いいわよ」

ようやくガジェットの襲撃に気づいた地上本部の警備部隊が
おろおろする中をかき分けて2人は高速で走りぬけていく。
突入地点であるマンホールに着くと,2人は地下水道へと飛び降りた。
地上の喧騒とは打って変わって,地下水道の中は不気味な静けさが漂っていた。
2人は顔を見合わせ無言で頷きあうと,戦闘機人の反応があった地点に向けて,
再び走り始める。

[スバル。ここからは念話で行くわよ]

[うん]

フェイトが前夜に設置したサーチャーの反応を見ながら,戦闘機人の
反応を追っていく。
戦闘機人がいるであろう地点まで後少しと迫ったところで,
2人を大きな振動が襲い,前方の曲がり角の辺りから土煙が上がるのが見えた。
ティアナとスバルは緊張した面持ちでお互いの顔を見合わせる。

[ティア・・・]

[ええ。慎重に行くわよ]

[うん・・・]

短い念話を使った会話の後,スバルが先行して土煙の方に向かって進む。
すると,土煙の中から数機のガジェットが現れ,2人の方に向かってきた。
スバルは加速するとガジェットの1機を殴りつけて破壊する。
一方のティアナも,他のガジェットに向けて魔力弾を放ち全弾を命中させた。
ガジェットを破壊した2人の前で土煙が晴れて行く。
すると,土煙の向こうから2人よりも小さな人影が現れる。

「ほう・・・もう来たか・・・ずいぶん早いではないか」

土煙が完全に晴れると銀髪の少女が現れた。
羽織っているコートのようなものの下には,以前の戦闘で現れた
戦闘機人と同じ服を着こんでいるのが見えた。

「・・・戦闘機人」

スバルは小さくそう言うと重心を低く構える。

「さっきの爆発はあなたが起こしたの?」

「だったらどうだと言うのだ」

ティアナの問いに銀髪の少女は表情のない顔を変えずにそう言う。
ティアナは数度瞬きすると,先ほどよりも大きな声で宣言する。

「管理局施設の破壊行為および危険魔法使用の容疑で拘束します。
 おとなしく投降しなさい!」

「くく・・・。お前たちが私を拘束する・・・だと?
 できるものならやってみるがいい」

少女はそう言ってせせら笑う。

[ティア,行くよ!]

[ええ,先ずは様子見ね。援護するから突っ込んで!]

[了解!]

スバルはそう言うと,少女に向かって走り出す。
同時にティアナはいくつかの魔力弾を生成すると,少女に向かって飛ばした。
少女は高速で接近するスバルに向かって複数のナイフを投げつける。
スバルは走行軌道を変え,難なくナイフをかわし少女に向かっていこうとした。
が,ナイフがスバルの脇を通過する瞬間,爆風がスバルを襲った。

「きゃあっ!」

爆風によって飛ばされ,壁に叩きつけられたスバルは爆発によって生じた
土煙の中で地面に手をついて咳込んでいた。

「スバル!」

ティアナはそう叫ぶとスバルの方に向かって走り出そうとした。
が,土煙の向こうから飛んできたナイフが眼前に迫っていた。
ティアナは寸前でナイフをかわす。が,ナイフとすれ違う瞬間ティアナを
先ほどスバルを襲ったのと同じような爆風がティアナをも襲う。
ティアナもまた,壁に叩きつけられ地面に倒れこんでしまう。
そんな状態でも,ティアナの頭は敵の能力分析を続けていた。

(ナイフが爆発した・・・これが,あの戦闘機人の特殊能力ってわけ?
 厄介ね・・・。何とかして接近戦に持ち込めば,ナイフを爆発させる能力は
 使えないとは思うけど,どうすれば・・・)
 
その時,ティアナに念話が届く。

[スバル!ティアナ!無事?]

預かっていたデバイスをはやてに引き渡した後,急いで2人を追ってきた
ギンガだった。

[ギン姉!]

スバルは姉であるギンガが来たことに歓喜の声を上げる。
一方で,ティアナはギンガが来たことを状況打開へとつなげる手を考える。

[ギンガさん。現在地点を送ってもらえますか?]

[ええ]

ティアナはクロスミラージュに送られてきたギンガの現在地が戦闘機人を挟んで
自分達とは反対側の壁の向こう側であることを確認すると口元に小さな笑みを
浮かべる。

(戦闘機人はギンガさんの存在には気づいてないはず・・・
 私とスバルが囮になればギンガさんなら戦闘機人に接近できるわよね・・・)

ティアナは考えをまとめると,ブリッツキャリバーに自分たちと
戦闘機人の位置を送る。

[ギンガさん。今私とスバルと敵の位置を送りました。私とスバルが囮に
なるので私が合図をしたら,敵に攻撃を仕掛けて下さい。
ただし,敵の特殊能力はナイフを爆発させる能力です。
なので,迅速に接近して接近戦でカタをつけるのがいいでしょう]

[了解!じゃあ,ティアナもスバルも気をつけてね]

[はい!]

[ちょっ,ティア!?]

スバルは早い展開についていけなかったのか,ティアナに向かって抗議の
声を上げる。

[スバルは,私の射撃とタイミングを合わせて攻撃ね。行くわよ!]

[うん!]

スバルの返事を聞いたティアナは,誘導型の魔力弾と非誘導型の魔力弾を
生成すると,土煙の向こうにうっすらと見える戦闘機人の影に向かって飛ばす。
先行して飛ばした非誘導型の魔力弾に続いて,誘導型の魔力弾を飛ばすと,
ティアナは戦闘機人の方に向かう。
一方のスバルは,ティアナの魔力弾に続いて戦闘機人の方に突撃する。

戦闘機人の少女はというと,高速で襲いかかるティアナの非誘導型魔力弾を
無駄のない動きでかわすと,薄くなってきた土煙の方を見遣る。
少女の目には,うっすらと土煙の向こうで動くティアナとスバルの影が
見えていた。

「ふん。進歩の無いことだ・・・」

少女が小さくそう呟いたとき,先ほどかわしたティアナの魔力弾が
頭上の天井を少し崩して周囲を土煙が覆う。

「なっ・・・」

少女は予期しないことに狼狽する。
そこに,時間差をつけて放たれた誘導型の魔力弾が少女を襲う。
先ほどと同様に最低限の動きでかわそうとするが,自分の動きを追尾してくる
魔力弾をかわしきることはできず,数発を防御でやり過ごすため,
少女の動きが止まった。
そこに,スバルが直線的な動きで急迫する。

「でやぁーっ!」

掛け声とともに突き出されるスバルのマッハキャリバーを少女は
バックステップでかわす。

「舐めるな!」

その様子を見たティアナはニヤリと口元をゆがめる。

[ギンガさん!]

スバルの突きをかわした少女が着地すると,背後の壁が突然音を立てて崩れる。
少女は,突然のことに混乱しながら背後を振り返ると,土煙の向こうから
飛んできた突きが振り向いた少女の顔にヒットする。
少女はそのまま飛ばされ,壁に叩きつけられる。

「くっ・・・」

少女は素早い動きで立ち上がると,土煙の方を見る。
土煙が晴れてくると,そこにはブリッツキャリバーを突き出したギンガが
立っていた。

「さっすがギン姉!」

スバルの声が地下水道の壁に反射して響き渡ると,
ギンガの側にはティアナとスバルが立っていた。

「油断したか・・・」

戦闘機人の少女は一人ごちると,舌打ちをする。

「さあ,観念して投降しなさい!」

ティアナの声に少女は嘲笑を向ける。

「3対1ではさすがに不利か・・・。まあ,役目は果たしたのだから
 十分だな・・・」

少女はそう呟くと,ナイフを3人に向かって投げつける。

「そう同じ手を食うもんですか!」

ティアナの指示で3人はナイフの軌道から距離を取ろうとする。
が,ティアナの予想に反してナイフは3人のはるか手前で爆発した。

「え!?」

予期しないことに3人は狼狽する。
爆風によって発生した土煙が収まると,崩れた天井によって
通路は完全にふさがれていた。
もちろん,そこに先ほどまでいた戦闘機人の少女の姿は無かった。

3人はお互いに顔を見合わせると,一様に肩を落としてため息をついた。

 
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