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コシ=ファン=トゥッテ

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第二幕その十三


第二幕その十三

 そして姉妹は彼女達の部屋で二人向かい合っていた。そうしてそのパスタを食べながらデスピーナの話を聞いているのだった。
「それはいいことですね」
「貴女はそう思うの?」
「最初から申し上げている通りですよ」
 デスピーナは二人の側に立ってにこやかに笑っている。彼女はもう昼食を食べたのか明るい顔だ。姉妹はトマトや茸、それにガーリックのソースの幅の広いパスタを食べていた。
「ところでそのパスタですが」
「確かマッケローニだったわよね」
「はい」
 ドラベッラの言葉ににこやかに笑って答える。
「昔のパスタです。如何ですか」
「ええ、美味しいわ」
「ソースもいいわね」
 フィオルディリージも言う。二人は白い陶器の食器の上にパスタを入れそのうえで銀のスプーンを使ってそのマッケローニを食べているのだった。
「これも昔ながらのなのね」
「ソースも」
「そうです、ちょっと再現してみました」
 笑って答えるデスピーナだった。
「味見してみましたがかなり」
「そう。いつもながら流石よ」
「見事よ」
「ドラベッラ様、おめでとうございます」
「おめでとうなのね」
「それはそうですよ」
 満面の笑顔でまたドラベッラに言う。
「一人前になりましたから」
「一人前なの」
「そう。恋をしてこそですからね」
「最初は誘惑されまいって思ってたけれど」
 早速おのろけに入るのだった。
「けれど口はうまいし態度はいいし」
「それで?」
「あの悪魔の誘惑にかかったら石の心を持っていても駄目よ」
「わかってこられましたね」
 デスピーナは彼女の言葉にさらに微笑むのだった。
「私達娘っ子は恋のチャンスは少ないんですよ」
「けれど貴女は」
「その数少ないチャンスをものにしてるんですよ」
 自分ではこう言うのだった。
「苦労して」
「苦労してるの」
「してますよ、それはもう」
 胸を張っての言葉であった。正直説得力には著しく欠けていた。
「それはもう」
「そんな苦労はしたくないわ」
 しかしフィオルディリージはこう返す。
「絶対に」
「あら、フィオルディリージ様はまだで」
「あの二人もアルフォンソさんも天罰を受けるわよ」
 マッケローニを食べながらデスピーナに抗議してきた。
「私も貴女も」
「私も?」
 デスピーナは今の彼女の言葉にきょとんとした顔を作ってみせて己を指差す。
「私もですか」
「そうよ、悪いことばかり吹き込んで」
 口は尖らせてはいるが何故か目の光はそれ程咎めてはいない。
「おかげで私は」
「あら、それは結構なことですね」
 もうここまで聞いただけでわかってしまうデスピーナだった。
「順調ですね」
「というと姉さんも」
 ドラベッラもデスピーナの言葉でわかってしまった。
「あの黒髪の方に」
「抑えてるのよ」
 隠すことはできなくなってしまっていた。
「それでもよ」
「それじゃあ私はあの栗色の髪の方で姉さんは黒髪の方で」
「何言ってるのよ、ドラベッラ」
「相手が見つかったじゃない、よかったじゃない」
「貴方にはフェランドさんがいるでしょ」
 けれどフィオルディリージはムキになって妹に言い返す。
「何を馬鹿なことを言ってるのよ」
「馬鹿なことって」
「そうじゃない。あの人達は戦場に言ったのよ」
 フィオルディリージはまだこのことを覚えていたのだ。
「それでどうしてそんなに明るいのよ」
「姉さんに七万回もキスしたい気分よ」
 しかしドラベッラの言葉は変わらない。
「本当にね」
「本当にもじゃなくて二人はね」
「けれど姉さん。戦場に行ったのよ」
 ドラベッラはこのことを姉に言うのだった。
 
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