【完結】剣製の魔法少女戦記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五章 StrikerS編
第百二十話 『シホのシュートイベイション』
前書き
原作の『ファースト・アラート』の話を前半後半に分けました。
新デバイスは次話で登場します。
Side ティアナ・ランスター
あたしは今、書類仕事の傍らでなのはさんやシホさん達の事を調べている。
局入りは10歳からでそれ以前にも幾度か事件を解決したというがその詳細はあまり詳しく載っていなかった。
でもどんな事件に関わったかくらいは割り出すことはできた。
内容は分からないが『P・T事件』と呼ばれる事件。
次は『闇の書事件』。
そして最後にこの世界に魔術という新たな体系を知らしめる切欠となった『聖杯大戦事件』。
三つの事件ともおそらくなのはさん達は関わったとあたしは予想する。
それでどんな9歳よ?と思ったくらいだ。
なんかこうして並べてみると、しかしどれもデタラメで本当に関わっていたのかどれが嘘か真なのか分からなくなってくる。
でも、少なくとも聖杯大戦事件には関わったことは確かだ。
ランとレンに聞いたがセイバーさん、ランサーさん、ファイターさんは聖杯大戦でしか呼び出せないサーヴァントという最上級の使い魔だという。
しかもファイターさんはバレていないと思っているだろうが少し容姿を調べればすぐに名前が割れてくる。
ベルカ時代の聖王『オリヴィエ・ゼーケブレヒト』。
調べてみたら分かった事でこんな有名人を使い魔にしているなのはさんってどんだけ…?とも思ったし。
「…ティア、何を調べているの?」
「ん? なのはさん達のこと。昔になにがあったらこんなに事件に関わることがあったんだろうってね…」
それでスバルにも詳細のデータを見せる。
「あー…確かにいっぱい事件に巻き込まれているね。これってまだ管理局に所属する前だよね?」
「そうなのよ。だから不思議なことばっかりでね…。内容は秘匿で詳しく見れないし…」
「そっか。ま、いつか話してくれるよ。それよりティア、書類仕事手伝って~」
「バカスバル、自分でやりなさい!」
「えー!?」
「慣れていないエリオとキャロはともかく年下のランとレンはあんたよりデスクワーク作業が得意じゃない!
だからあんたももっと頑張りなさい!」
「は~い…」
それでスバルはすごすごと引き下がっていき、またデスクワーク作業に取り掛かっていった。
あたしもなのはさん達のデータを保存して閉じ、またデスクワークを再開した。
………………
……………
…………
そんなこんなでなのはさんとシホさんに鍛えてもらいながら一ヶ月、
「はーい整列!」
「「「「「「はい!」」」」」」
あたし達はあちこちボロボロになりながらもなのはさんの言葉に従って整列する。
「それじゃ本日の早朝訓練、ラスト一本。みんな、まだ頑張れる…?」
「「「「「「はい!」」」」」」
「それじゃシュートイベーションをやるよ。今回のお相手は…セイバーズ隊長のシホちゃん!」
「よろしくね」
シホさんがそう言って笑みを浮かべながらやってきた。
「で、でも…シホさんは古代ベルカ式でこういった細かな訓練は向いていないんじゃ…?」
ランがそう言う。
そうなのよ。
この人、古代ベルカ式の使い手でかなりの上級者なのだ。
実力は八神部隊長と同じでSSランクという強者。
あたし達で敵うかどうか。
「大丈夫よ。これでも私はトリニティーデバイスの使い手よ?
ミッド魔法もそこそこ使えるわよ」
「というわけ。だから私は見学しているね」
なのはさんは制服に戻った。
本当にシホさんがやるみたいだ。
シホさんはその赤い朱銀髪の姿をさらにバリアジャケットで真っ赤にしてデバイスを弓形態にして構える。
「…私の攻撃を五分間、被弾無しで回避しきるか私に一撃を与えればクリアといった簡単なものよ」
簡単なのかしら…?
あたしにはとても難しそうとしか感想が持てない。
「誰か一人でも被弾したらやり直しだからねー? 頑張ってねー!」
なのはさんがそう言ってくるけど今は集中したい。
みんなに、
「このボロボロ状態でシホさんの攻撃を5分間避けきる自身はある?」
「ない!」
「僕もありません!」
「一撃を当てたほうがいいと思います!」
「私もないかなー…シホさん、きついし…」
「う、うん…怖いほどだよね」
スバル、エリオ、キャロ、ラン、レンの順にそう言葉を返してくる。
っていうか、ランとレンは日頃どんな魔術訓練を追加でやっているのかしら…?
レンは怯えようが半端じゃないわね。
それでも男か!って内心で思ってしまう。
少し女顔だしね。
「ふぅ…それじゃ絶対に一撃入れるわよ! あたし達が乗り切るのはそれしかないから!」
それであたしは一息ついた後、全員に発破をかける。
「はい、わかりました!」
「頑張ります!」
「やるぞー!」
「よし。レン、気合を入れるよ!」
「うん! ラン姉さん!」
エリオ、キャロ、スバル、ラン、レンの順に気合を入れている。
みんないい具合にやる気を出しているわね!
こちらの準備が出来たのを確認できたのかシホさんが、
「それじゃ準備はいいかしら? それじゃスタート!」
そう始まりの宣言をする。
そして始まった瞬間、シホさんは弓を構えて、
「ナインライブズ!」
ナインライブズという魔力矢が放たれた瞬間、魔力矢は一斉に九つに分かれてあたし達に殺到してくる。
それで避けたはいいが一個か二個かがあたしに追尾してくる。
九本がそれぞれ全員に分散して向かって行っている!?
それも誘導弾ならともかく矢が追尾してくる!?
そんな馬鹿げた攻撃があり!?
「ほらほら。じっとしていると当たっちゃうわよ?」
威力を弱めていると思うけどこの追尾性能…やっかいね。
《スバル!》
《うん!》
思念通話でスバルに合図を出す。
そしてスバルが魔力の矢を何度も避けてシホさんに一撃を当てに突っ込む。
でも、伊達に長い間あいつとコンビ組んできていないのよ!
シホさんが放った矢はスバルを貫通するがそれはあたしのフェイクシルエット!
本命は、頭上!
スバルのウイングロードがシホさんに迫る。
そして姿を現したスバルがリボルバーナックルを当てに行くがシホさんはその場をなにかの移動術で避けた。
ソニックムーブ…?
いや、魔力の気配はしなかった。
「ティアさん!
今のはシホさんの瞬動術という魔力を使わない純粋な歩法です!」
「魔力無しであんなに動けるの!? あの人!?」
「そんな話をしている隙を、ついちゃうわよ…?」
「ヤバッ!?」
シホさんがあたしに向けて弓を構えてくる。
「ティア! やらせない! ウオォォォォォーーー!!」
そこにすぐにスバルが反転してシホさんに殴りかかった。
今度こそシホさんの動きを捉えた。
でもシホさんはバリアを展開してそれを危なげもなく片手で防ぎ切り、反対の手で、
「反撃よ!」
なにか独特の手の構えをしてスバルに反撃した。
それは後にシホさんの特別武術訓練で浸透勁という術の構えだと知る。
だけど、まだ分からないスバルはシホさんのその手の構えを本能的に危険だと判断したのか、それをなんとか避けきり距離を取る。
だが、ウイングロードの上に飛び降りた途端にローラーが変な音をしだし、それでスバルは足を踏み外している。
デバイスの不調!?
「うん。いい判断ね。でも、そんな姿を見せたら危ないわよ? 赤原を往け、緋の猟犬!」
《Hrunting.》
また違う種類のなんかゴツゴツとした魔力矢を放ち、それはどこまでもスバルを追尾していく。
スバルはいろんな方向に逃げていくがそれを追っていく。
あの矢も追尾性能! しかもさっきのより精度がいい!
これが魔弾の射手と呼ばれる人の弓の実力!
「スバル! 今援護するわよ!」
あたしが魔力弾を放とうとするが、
ボスッ!
「不発!? ああ、もうこんな時に!」
あたしは焦りながらも玉を詰め替えて再度魔力弾を放つ。
それでなんとかあの追尾の矢は撃墜したけどそれでもシホさんは余裕を崩さない。
いや、あの人に余裕とか慢心なんてものはないだろう。
常に本気でやっているのはこの一ヶ月で十分身に沁みているから。
「いくよ! ストラーダ!」
「エリオ君、頑張って!」
そこにライトニングのエリオ・キャロのコンビが、キャロがデバイスをブーストさせてエリオがチビ竜の炎とあたしの魔力弾を避けているシホさんに向かって槍を構えて突っ込んでいった。
でもシホさんはまた瞬動術という歩法で避ける。
でも、
「今だ! ランさん! レンさん!」
通り過ぎながらもエリオは二人の名を叫ぶ。
瞬間、ビルの上からセイバーズのランが剣を振り抜いていて、隠れていたのか下からレンが円上の魔力刃を構えて突っ込んでいた。
二人同時の一撃!
これで喰らって!
「「斬氷閃!!」」
そしてそれらはシホさんに直撃する。
でも、二人はそのまま吹き飛ばされてしまっていた。
「失敗!?」
あたしは思わず叫ぶ。
でもシホさんは、
「…うん。最後の攻撃はバリアを抜けていたわね。
まだまだ拙いけど連携はよくできているわ。合格よ」
そう言ってシホさんは制服姿に戻りなのはさんのところに戻っていった。
でも、なのはさんはシホさんに少し微妙な表情を向けて、
「…シホちゃん。ナインライブズとフルンディングはまだちょっと六人にはきつかったんじゃない?」
「威力とスピード…どちらも落としていたから大丈夫よ。
それと、あれくらい切り抜けてもらわないとね」
「そうだけど………前に、はやてちゃんがシホちゃんのお仕置きと表した本気のフルンディングでサンドバック状態になっていたよね?」
「そんなこともあったわね…懐かしいわね。あの頃は私もまだまだ考えが若かったわねぇ…」
なんか、そんな恐ろしい会話が聞こえてくる。
八神部隊長ほどの人がサンドバック状態って…。
…よかったわね、スバル。シホさんが本気を出さなくて。
二人は会話を終了させてあたし達のところに歩いてきて、
「さて、それじゃみんなもチーム戦にだいぶ慣れてきたね」
それであたし達は揃って「ありがとうございます」と返事を返す。
それからなのはさんはあたしの事を褒めてくれて「指揮官訓練受けてみる…?」って言ってきたけど、まだあたしにはそんなものは早いのでやんわりと断っておいた。
「きゅくる~…」
そこにチビ竜がなにか言っているようだ。
「フリード、どうしたの…?」
「なんか、焦げ臭いような…」
それであたしも匂いを辿ってみると、スバルのローラーが焦げ付いていた。
やっぱりさっきの不良な動きは故障している合図だったのね。
「ああー! いけない!! しまったなぁ~。無茶させすぎたみたい…」
「オーバーヒートかな? 後でメンテスタッフに見てもらおうか」
「はい…」
それでスバルは落ち込む。
でも、あたしも結構やばいのよね。さっきの不発はガタが来ていた証拠だし。
「ティアナのアンカーガンも厳しい?」
「はい。騙し騙しです…」
「みんな、訓練にも慣れてきたし、そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかな…?」
「そうね。ランとレンのも試作品だからそろそろ厳しいだろうしね」
「「「「「「新デバイス…?」」」」」」
そんなものも用意されているんだ。あたしなんかの為に…。
いいのかな? こんな凡人のあたしに新デバイスなんて…。
◆◇―――――――――◇◆
Side シホ・E・S・高町
「それじゃ一旦寮でシャワーを浴びて着替えてロビーに集まろうか」
「「「「「「はい」」」」」」
六人がなのはの言葉に返事を返している。
ふと、前方から黒い車…フェイトの車が走ってくる。
「あの車って…」
「フェイトのね」
それで車は止まり中からフェイトとはやて、そしてランサーが姿を現す。
「フェイトさん! 八神部隊長! ランサーさん!」
「すごーい! これフェイト隊長の車だったんですか?」
「そうだよ。地上での移動手段なんだ」
「みんな、練習の方はどないや…?」
「あー…あはは」
「頑張っています」
「なんとかついてこれています」
「お、同じくです…」
全員が少し疲れ目だがなんとかはやてに言葉を返している。
そこにフェイトが申し訳なさそうな表情をして、
「…エリオ、キャロ、ごめんね。私は二人の隊長なのにあんまり訓練見てあげられなくて」
「あー、いえ…」
「大丈夫です」
「六人ともいい感じに慣れてきてるよ。いつ出動があっても大丈夫!」
「そうね」
「そうか。それは頼もしいな」
「三人はどこかへお出かけ?」
「なのはちゃん、三人やなくて四人や」
「そうね。それじゃフェイト、ちょっと狭くなっちゃうけどよろしくね」
「うん、シホ」
それで私も同乗させてもらう。
「シホさんも一緒ですか?」
「うん」
「私とランサーは6番ポートまで」
「教会本部でシホちゃんとカリムとで会談や。夕方には戻るよ」
「私達は昼前には戻るから、お昼は一緒に食べようか」
「「「「「「はい!」」」」」」
「ほんならなー」
「行ってくるわ」
それでみんなと別れて私達は聖王教会まで向かうことになった。
車内で、
「聖王教会騎士団の魔導騎士で管理局本局理事官、カリム・グラシアさんか。
私はまだお会いしたことないんだけど…」
フェイトがそんなことを話しだす。
「あ、そやったね」
「はやてとシホはいつから…?」
「私達は…そうね。管理局に勤めてからそんなに時間が経っていない時だったから9年前からの付き合いかしら?」
「そうやね。同じ古代ベルカ式の使い手として呼んでもらったんよ。オリヴィエさんも一緒に」
「オリヴィエさんも…?」
「ええ。聖王教会っていうからやっぱりオリヴィエ陛下は名前が有名だからね」
「そうなんだ」
「カリムと私は信じてることも、立場も、やるべきことも全然違うんやけど、今回は二人の目的が一致したから。
そもそも、六課の立ち上げの実質的な部分をやってくれたのはほとんどカリムなんよ?」
「へー…」
「だからおかげであたしは人材集めの方に集中できた」
「信頼できる上司って感じ…?」
「仕事や能力はすごいんやけど…上司って感じはあんまりせえへんのよ。どっちかっていうとお姉ちゃん、って感じや」
「そっか」
「レリック事件がひと段落したら紹介するよ。フェイトちゃんもなのはちゃんも気が合うと思うで~?」
「楽しみにしてるよ」
「しっかしこう訓練ばっかだと飽きてくるぜ」
「ランサーは鍛える方なんだからそう言わないの。エリオも感謝しているから」
「へいへい…」
そんな話をしながら私達はフェイトに送ってもらった。
◆◇―――――――――◇◆
六課隊舎に戻ってスバル達女性陣はシャワーを浴びているところだった。
シャワーを浴びながら、
「えっと、スバルさんのローラーブーツとティアさんの銃ってご自分で組まれたんですよね?」
「うん。そうだよ~」
「自作で組むってすごいよねー」
「訓練校でも、前の部隊でも支給品って杖しかなかったのよ」
「あたしはベルカ式で、それに戦闘スタイルがあんなんだから。そしてティアもカートリッジシステムを使いたいからって…」
「そうなると自分で作るしかないのよ。訓練校じゃオリジナルデバイス持ちはあたしとスバル、それにリオンって子の三人だけで…。
それが縁でトリオを組んでいたけど、ほかにはいなかったから目立って仕方がなかったわ」
「あ! それでスバルさんとティアさんのお二人はお友達に?」
「腐れ縁とあたしの苦悩の日々の始まりって言って」
「あははー。でも…リオンは今、元気にしているかな…?」
「スバルさん、リオンさんってどんな人だったんですか…?」
ランがそうスバルに聞く。
それにスバルは、
「…ん? そうだね。
同じ訓練校であたしとティアとトリオを組んでいて、ちょっと背が小さくてよく背伸びをしているのが微笑ましかったかな。
でも頑張り屋さんでなにをやるにも一生懸命だった。
それにレアスキルで五秒先の未来を予知するとかいう能力を持っていたんだよ」
「へー…すごいですね」
「うん。今は連絡も取れていないし、どこの部署に配属しているのかわからないんだけど、元気にやっていたらいいなって、思うんだ。…ね、ティア?」
「そうね。…それになにかあの子、少し訳ありっぽそうだったしね」
「そうだね。…っとと、リオンの話はまたあとで教えてあげるね。
それで、話は戻ってランとレンは誰にデバイスを作ってもらったの…?」
「はい。魔術事件対策課のデバイス技術班の月村すずかさんという人に作ってもらったんです。
でもやっぱり試作品だけあって初期形態しか組まれていないんですよ」
「そうなんだー。さて、それじゃキャロ、頭洗おうか?」
「お願いします」
「あたし、先に上がっているから」
「あ、私も上がります。スバルさんとキャロはゆっくりとしていっていいですよ?」
「「はーい」」
…一方で外で先に待っていたエリオとレンは、
「みんな、まだですかね…?」
「女性は長いもんなんだよ、エリオ君。うちの家族は僕以外は全員女性だからお風呂長いし…」
「そういえばシホさんとは一緒に暮らしているんでしたよね」
「うん。今は寮暮らしだけどね。
特にネロさんが長いんだよ。隙を見せたらすぐにバラのお風呂にしちゃうから…」
レンはそんな話をしながらエリオと笑い合うのだった。
後書き
シュートイベイションとは弾丸回避訓練。
ですから矢はシュートイベイションに一応分類されるかな、と。
はやてがサンドバックになったのは、『揺れ動く心、動き出す子鴉』の話の後日談です。
今回少し忘れられているかもしれませんのでリオンの話を挟んでみました。
そして次回、最初のアラートです。
ページ上へ戻る