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万華鏡

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第三十一話 怪談話その三

「ええと、水産科の海軍の人とか」
「工業科の屋上よね」
「夜のね」
「色々あるわよね」
「本当に幾つもあるわね」
「ええ、そんなにあるのね」
 琴乃はこう言った。
「うちの学校の怪談って」
「あるのよ、これがね」
「そうなのね」
「私も幾つあるか知らないの」 
 里香もそうだというのだ。
「多過ぎてね」
「七つどころじゃないっていうのは」
「本当にそれどころじゃないから」
 七つよりも遥かにだというのだ。
「何十もあるわよ」
「何十ねえ」
「高等部、商業科の娘達がよく行くね」
「あっちの食堂なのね」
「あそこの冷凍室には雪女が出るらしいし」 
 寒いと出て来るこの妖怪も出るというのだ。
「あの妖怪もね」
「雪女が出る学校も珍しいわね」
「普通ないと思うわ」
「そうよね、やっぱりね」
「あっ、雪女はね」
 ここで彩夏が話す。彼女は秋田出身で雪女がよく出る東北人だからだ。
「暑い場所は本当に苦手だから」
「冷凍庫にいるのね」
「そうなの、そこからは出られないと思うわ」
 こう琴乃に話す。
「特に今の季節はね」
「夏の雪女っていないわね」
「夏でも生きられると思うけれどね」
「大丈夫なの?」
「多分ね、妖怪だからね」
 妖怪はそう簡単に死なないというイメージからの言葉だ、確かに妖怪の生命力は普通の人間より高い。
「夏でも大丈夫よ」
「そうなのね」
「けれどお外に出ることはね」
 それはというのだ。
「好きじゃない筈よ」
「大丈夫でも好きじゃないのね」
「小泉八雲の雪女はいつも一緒にいたでしょ」
「あっ、そうね」
「話したら殺すと忠告した相手のところにお嫁に行ってね」
 相手を夫婦になったうえで監視していた、その場でもだというのだ。
「そうしていたわよね」
「夏も一緒にいたわね、確かに」
「だから雪女も夏は大丈夫なのよ」
「溶けたりはしないのね」
「溶けることはないわ、ただやっぱりね」
「苦手なのね」
「それは間違いないわ」 
 雪は暑さに弱い、雪の妖怪が暑さに弱いというのは自明の理である。
「だからこことかはね」
「絶対に自分から積極的には来ないのね」
「特に沖縄にはね」
「ああ、そんな話は全然ないからな」
 今度は沖縄出身の美優が言って来た。
「キジムナーはいるけれどな」
「そのガジュマルの木に住んでる妖怪ね」
「ああ、沖縄は雪降らないからな」
「というか降ったら怖いわよね」
「雪じゃなくて台風が来るんだよ」
 沖縄はそうだというのだ。
「雪女はないな」
「じゃあ雪男とか雪ん子も」
 彩夏は東北の雪にまつわる妖怪達を出して来た。 
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