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万華鏡

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第三十一話 怪談話その一

               第三十一話  怪談話
 五人は他の面々と共に海上自衛隊幹部候補生学校、かつての海軍兵学校を回り続けていた。五人はまたグラウンドの前に出ていた。
 そのグラウンド、よく手入れされた白く綺麗なグラウンドを見ていると。
 少し年配の痩せた先生が傍にいた、その先生が五人に話すことは。
「この学校は怪談話でも有名なんだよ」
「えっ、そうなんですか」
「怪談もあるんですかここは」
「そう、あるんだよ」
 こう話すのだった。
「結構ね」
「そういえば自衛隊とか軍隊にはそういう話が付きものですし」
 里香が先生に応えて言う。
「私もちょっと聞いたことがあります」
「そう、例えばあの砲台ね」
 右手を指差す、そこに二連装の巨大なあの陸奥の砲台があった。
「あれが動くって話があるんだよ」
「あの砲台がですか?」
「動くんですか」
「そんな話があるんだよ」
 このことを話すのだった。
「夜の十二時にね」
「回転するんですか?」
 琴乃は何気なく言った。
「そうなるんですか?」
「そうなんだよ、回転するらしいんだよ」
 今は動く気配なぞ全くないが、というのだ。
「十二時にね」
「謎の爆発をした砲台がですか」
「そのせいかどうかわからないけれど」
 回転するというのだ。
「それでそれを見ようとした人がいてね」
「どうなったんですか?」
「そう、ある部屋に入ってずっと砲台を見ていたけれど」
 部屋の窓から見てだというのだ。
「十二時になったんだけれど」
「砲台が回転したんですか?」
「いや、それがね」
「それが?」
「その部屋の中が急に騒ぎ出してね」
 そうなったというのだ。
「ものが吹き飛んだり嵐みたいになったそうだよ」
「えっ、それって」
 琴乃はその話を聞いて目を丸くさせてこう先生に言った。
「ポルターガイストですよね」
「うん、それだね」
 先生もそうだと言う。ものが自然に暴れ回る怪奇現象だ、霊がそうさせているという説が有力である。
「それが起こったらしいんだよ」
「それで砲台の方は」
「ポルターガイストが起こったからね」
 先生はそれでだと話す。
「ちょっとね」
「見られなかったんですか」
「それどころじゃなくなったから」
 だからだというのだ。
「砲台のことはわからなかったらしいんだよ」
「それ本当のことですか?」
「さて、真相はね」
 わからない、先生は首を傾げさせて答えた。
「そうなったよ」
「それにポルターガイストが起こったって」
 琴乃はこのことについても言う。
「そっちも凄いことですよね」
「怪奇現象だよね」
「凄いことですよね」
「他にも色々話があってね」
 この幹部候補生学校は、というのだ。
「何処にどういった幽霊が出るとか」
「そんな話が多いんですね」
「あちこちにある場所だよ」
 青い空の下で話す、今はそうした存在とは全く無縁そうな中で。
「ここはね」
「そうみたいですね、前にここに来た時も」
 里香もグラウンドや海を見回しながら言う。 
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