とある碧空の暴風族(ストームライダー)
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虚空爆破
Trick09_まったく、あいかわらずだな
「面白い能力ですね・・」
太陽が落ちて辺りが暗くなり始めた頃。市街地から少し離れた信乃は土手の上にいた。
常盤台中学の修理作業を昼間に行い、4時以降は風紀委員の仕事をする、
という生活リズムを信乃は送っていた。
今日も風紀委員のパトロールをしていたが、爆発に似た音が聞こえたために
河原の近くに来たのだ。
そこには1組の男女が能力を使ってバトルをしていた。
「ちょこまかと逃げ回るんじゃない!」
「ってそんなの振り回されたら誰だって逃げるに決まってんだろ!!」
バトルと言っても、片方だけが攻撃をしている一方的な展開であった。
しかも攻撃されているのは男、しかも年上の方だ。
「えい! とりゃ!」
「うわ!? うぉ!」
女の方は黒い刀のようなものを振り回して男を攻撃している。
このままでは怪我人が出てしまい、風紀委員としては止める状況だろう。
それなのに信乃がそのまま見続けている理由は・・
「へ―、御坂さんの能力って電気だけじゃなくて磁力で砂鉄の操作もできるんですか」
そう、戦っているのは御坂美琴である。
対する男の方は、
「ってちょっと待てビリビリ! そんなのくらったら痛いじゃ済まないって!
上条さん死んじゃいますよ!」
何も能力を発動させているように思えない上条と名乗る男。
2人からは距離があったため、大きな声で言った内容しか聞き取れない。
ただ逃げているだけなので被害者にしか見えないのだが御坂が手加減をすると勝手に
考えて信乃は手出しせずに傍観していた。
というより、
「おー、がんばれがんばれー」
レベル5の戦いを見て楽しんでした。
「お~刀が鞭にもなるんですか。あ、避けられない・・」
上条の避けられないタイミングで御坂の攻撃が当たった。
しかし
当たったはずの御坂の鞭は砂鉄へと戻った。
「手加減しすぎて砂鉄が弱かった・・という表情ではないですね・・」
驚いた顔の御坂を見て信乃は訂正した。
「今度は空中の砂鉄でそのまま攻撃で・・てまた攻撃が!?」
2度目の攻撃も再びただの砂鉄へと戻された。
さすがに違和感を感じた信乃だが、御坂は計算内のようで男の隙をついて
接近して右手を掴んだ。
御坂の電撃を直接浴びたらただでは済まない。(直接浴びなくてもただでは済まない)
(終わり。不思議な戦いでしたが、これで御坂さんの勝ちですね・・)
信乃は上条が白井のようにピクピクと痙攣する姿を想像したのだが
「・・・あれ、手を握っているだけ?」
御坂は全く動かずに握っている右手を見ている。
数秒後、男が握られていない左手を振り上げると御坂は怯えるように
手で顔を覆った。
今度は上条の攻撃で御坂が勝ちと思われたが
「いや~~! (ポテン)」
いきなり上条は倒れた。
しかしその声は攻撃されたことによる悲鳴ではなく、感情のこもっていない棒読み
だった。
「ふざけるなー!!」
御坂が再び電気で上条を攻撃した。
今度はバトルではなく、鬼ごっこのように上条は河原から走り去り、
御坂はそれを追っていった。
信乃はそんな二人のことは忘れ、上条の能力について考えていた。
「レベル5の実力がすごいことは解りましたが・・なんですか彼の能力は・・」
御坂の電撃、砂鉄は全て当らなかった。いや、当たっていたが効果がなかった。
「彼の能力は無効化? しかも、攻撃は右手に当たったものが全て・・
右手限定での能力ですかね・・」
独り言をブツブツと呟く信乃。しかし、なんのために自分がここに来たのかを
思いだして
「って、一応あの鬼ごっこを止めに行きますか・・」
2人を追いかけて行った。
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「連続爆破事件?」
「正確には連続 虚空爆破事件ですね」
初春が佐天へと説明した。
連続 虚空爆破事件
ここしばらく、連続で発生している爆破事件。
爆発そのものは小規模なものばかりだが、事件を重ねていくにつれてその被害は
大きくなっている。
事件予防に動いていた風紀委員が数名の怪我人が出ている。
事件の発生直前に学園都市の衛星が重力子の急激な加速を捉えていた。
その重力子はアルミを基点に重力子を爆発的に加速させ、一気に周囲へ
撒き散らす。
つまり、『アルミを爆弾に変える』能力を使った事件である。
「私も黒子から聞いた。めんどくさい事件がおきてるわね」
「ええ、白井さんはそれで今日一緒に来れなかったんですよ。
『まだ調べたいことがある』って言ってましたから」
歩いているのは佐天、初春、御坂の3人だ。
本当は白井を含めて4人で買い物に行こうと予定していた。
しかし、風紀委員で忙しいために白井は来れなくなったために
今は3人でデパートに向かう途中だ。
同じ風紀委員の初春がなぜ遊んでいるのかは謎だ。
「でも、面白そうな能力者よね。愉快犯ってことを抜きにしたら戦ってみたわ」
「さすがレベル5、常盤台の超電磁砲ですね! 私も力が
あったら初春たちに協力したいけどな~。
あ~、幻想御手があったらなー」
「え? なんですかそれ」
「私も詳しいことは知らないんだけど、能力の強さ(レベル)を簡単に
引き上げてくれる道具があるんだって。
それが≪幻想御手≫
ま、ネット上の都市伝説みたいなもんなんだけどさ」
「そりゃそうですよ、そんなのがあったら苦労しません」
「でもさ、本当にあるなら私でも・・」
佐天はつぶやいた声は誰にも聞き取れなかった。
「? 佐天さん?」
「アハハ、なんでもないよ。
ところで今日は買い物ってことですけど、御坂さんは何か欲しいものとか
あるんですか?」
「ん~、新しいパジャマとか服がほしいけど・・」
「それじゃ、≪seventh mist≫に行きましょう! あそこならいろいろそろってるし、
小物とかもあるからちょうどいいと思いますよ!」
「そうね、そうしましょうか」
3人は行き先が決まり、意気揚々と歩いていた。
しばらくの間、3人は雑談をしながらデパートへと向かっていたが
「御坂さんの超電磁砲ってかっこいいですよねー、必殺技みたいで」
「必殺技って・・そんなんじゃないけど。
あれ? あそこにいるのは信乃にーちゃんじゃない?」
「え!?」
御坂が指さしたのは通りかかりの公園。そのベンチに何をするでもなく
空を見上げている信乃がいた。
佐天は驚いて急に止まり、そのせいで後ろを歩いていた
初春が背中にぶつかった。
「痛! 佐天さん急に止まらないでください! 花を、じゃなくて鼻を
ぶつけたじゃないですか」
「///し・・信乃さん////」
「佐天さ~ん? 顔が真っ赤ですよ。またですか。・・あれ、もしかして」
「信乃にーちゃん、どうしたのこんな所で?」
御坂一人で信乃の元へと近づいて行った。
佐天は顔を真っ赤にして動けないようで立ち止まっていた。
「佐天さん、もしかして信乃さんのこと?」
「え!? いやわたしはべつに・・/////」
「はは~ん。そういうことですか」
初春は悪戯っぽい笑みを浮かべながら信乃たち2人の元へと歩いて行った。
「ちょっと初春違うわよ」
佐天も急いで追いかけて4人がベンチに集まった形になった。
「琴ちゃ・・・御坂さん、どうしたんですか? 3人でお出かけで?」
気を抜いていたからだろう。昔の愛称を言いかけて直した。
「私は別に『琴ちゃん』でいいんだけど。まあ、そうよ。今から3人で
買い物に行くところ。信乃に・・さんはなにしてたの?
風紀委員は忙しいって聞いてたけど」
「あー、風紀委員は強制的に休まされました。
風紀委員に所属してから一日も休んでいないせいで風紀委員の労働基準誓約書
とか言うやつですかね? まあ、それに違反しているから、
固法さんに『明日は1日休みなさい!』と言われて今日は非番です。
それで1日を使ってA・Tの整備をしてたんですけど、少し行き詰って。
それで公園で気分転換してたんですよ」
「なるほど、また空を見てたと」
「その通りです」
御坂は信乃の笑顔に呆れたように笑った。
同時に4年間も会わなかった人だが、一番の癖が全く変わってなかった事に
少し安心をしていた。
(まったく、あいかわらずだな)
御坂がそんなことを考えていると初春が信乃に話しかけた。
「ってことは信乃さん! 今暇ってことですね!?」
「まあ、A・Tの整備も急ぐことではないですし、今現在暇と言っていいですね」
「なら、私たちと買い物に行きませんか!?」
そういったが、その目は信乃ではなく佐天の方を見ていた。
「う初春!? え、その、そうですね行きましょう信乃さん!」
「いいんですか? 女性3人で楽しんだ方がいいと思いますけど・・」
「大丈夫よ。あんたも買い物に付き合いなさいって」
最後に御坂にまで言われて信乃は断れない状態となった。
「まあ、わかりました。お供します。荷物持ちでもなんでもやりますよ」
「そうと決まったら早速行きましょ!」
御坂が3人を急かして歩き出した。
後を追って歩いた3人だったが、
「佐天さん、よかったですね(ボソ)」
「初春、あんたやっぱり・・」
「どうかしましたか、初春さん、佐天さん?」
「いえ、なんでもありません!」
「早く御坂さんのところに行きましょう!」
内緒話が信乃に聞かれそうになったため、慌てて御坂の方へと2人は逃げて行った。
つづく
後書き
章機能を使ってみました。
新章突入、といっても原作と同じ流れになりますが。
作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。
皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。
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