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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第5章:導かれし者達…トラブルを抱える
  第19話:我が家流、商魂魂撃破方!

(砂漠)
シンSIDE

今日も朝早くから砂漠を縦断している。
砂漠の気候は極端で、日が昇り直ぐに気温が上昇……
まだ夜明け一時間なのに、暑さで体力を減少してます。

そんな中、一晩中見張りをしてくれてたウルフさんの様子がおかしい……
やはり寝不足にこの暑さが堪えてるのだろうか?
俺が約束を破ったばかりに……

昨晩、ウルフさんが見張りを買って出てくれた時、俺は『数時間したら俺が代わりますから、ウルフさんも休んで下さいね』と交代する事を提案した。
だが俺は、砂漠での疲労が大きかったらしく途中で起きることなく、朝まで眠り続けてしまったのだ!

途中で代わるなど大口を叩いたクセに、一度も起きることなく全てを押しつけてしまうリーダー……
そりゃ怒るよ!
何も言わないでくれてるのは、若輩者の俺に気を遣ってくれてるからだろうなぁ……

昨日、一番最初に暑さにやられたリューノちゃんに対し、心底労る言葉と態度で接しているウルフさん。
普段だったら、ワザと怒るようなことを言って彼女の元気を確認するのに……彼らしくないです。

「あ、あの……ウルフさん。昨晩はごめんなさい! 俺、交代するとか言っておきながら、朝まで起きれませんでした……本当にごめんなさい!」
「何言ってるんだ、起こして交代しようとしなかったのは俺だよ。シン君が謝る事なんて無い……むしろ気を遣わせちゃってゴメンな!」

俺はウルフさんに近付き深く頭を下げて謝罪した。
しかしウルフさんは、俺の頭を上げさせて優しい表情と口調で謝罪の必要を否定し、逆に謝ってくる!

「俺は日中、戦闘をしてないし馬車を入手してから荷物持ちもしてないから、体力が有り余っているんだ。逆にシン君は戦闘指揮を行いながら自らも戦い体力を消耗している……元より俺一人で番をするつもりだったのだから、交代の為起きなくても俺は文句を言うつもりはないよ」

どうやらウルフさんは怒っているわけでは無い様子だ……
では、いつもの彼と違って見えたのは何だったのだろうか?
やっぱり寝不足でテンションが上がらないのかな?

シンSIDE END



(アネイル)
ウルフSIDE

俺はロリコンでは無いハズなのだが、昨晩のリューノの告白により少なからず動揺し、そして気持ちが上擦っている。
その所為か、昨晩交代要員を名乗り出たのに起きてこなかったシン君が、普段と違う俺に気付き謝罪してきた。

参ったな……彼が起きてこなかった事に、怒りなど微塵も無いのに……むしろ起きてこなくて助かったくらいなのだから。
やはり“勇者”と呼ばれる人間は、根が真面目に出来ているのだろう。
義兄カップルが良い例だ。
アレは“馬鹿”が付くほど真面目だから……

「おや、お兄さん達。この町は初めてだね!? 温泉街と知られた『アネイル』は、温泉だけじゃ無いんだよ……どうだい、俺が無料で観光地案内を引き受けるけど?」
昨晩の事に絡んでリューノとシン君の事を考えて歩いていたら、町一番の大きな宿屋の前で観光案内を買って出てくれる人物に遭遇する。

見た感じ今から入ろうとしている宿屋の人間ではないな……
もしそうだとしたら宿屋に入る前に勧誘する必要性が皆無だ!
沢山の荷物を持ったままの客をそのまま待たせるなんて、サービス重視の宿屋が行う行為じゃ無い!

これはアレか……
サービス・設備・その他諸々も大手に敵わない弱小宿屋が、客をかっさらう目的で始めた観光案内だろう。
どうするか……いつもの俺である事を証明する為に、コイツ相手にリュカさん節を炸裂させるか!?

「観光に来たワケじゃ無いからいいッス!」
マーニャさん・ミネアさんは勿論、リューノもホフマンさんも乗り気になっていた観光案内を、俺の一存で断り切る。
皆、声には出さないが不満そうだ!

「いや……観光じゃなくても町の事を知るには良い機会だろう!? そんなに時間を取らせないから、俺に任せてみてはどうだろうか? 何てったって無料なのだから!」
6人という宿泊人数……小さな宿屋には見逃せない客だろう。
ましてや俺達には馬車がある。馬の管理料も無視できない!

「しつこいなアンタ……“無料”をアピールしてるけど、そんなにこの町を紹介したいのか? 何でそんなに紹介したいんだよ!?」
ここで素直に『俺の宿屋に泊まらせたいから!』って言えば、俺の負けを認めコイツの勧めに乗ってやろう。

「そ、そりゃ……俺はこの町が大好きで、色んな人に町の良さを知って欲しいからさ!」
はい、アウトー!
『お前等を騙して、俺が得をする』って感情を抱いてしまったね。
これでリュカ家からは嫌われる事必至だね。

「全部お前の都合じゃねーか! こっちは忙しいんだって言ってんだろ! 沢山の荷物を持って、宿屋の手前でお前の長話を聞かされ……いい加減ムカついてんだぞ! お前の案内は無料だろうが、俺達の貴重な時間を奪った事は有料なんだよ! 今すぐ金払え! 俺達の時間を奪った代金100ゴールド払え馬鹿者!」

「え……な、何で俺が逆に金払わされるんだよ!」
「“逆”って何だ!? お前のは無料だろうが! それとも無料ってのは嘘だったんだな! 後から法外な料金を騙し取る算段だったんだろ! 不届き者め……斬り殺してくれよう!」

俺は奴の言うとおり、逆に金を要求しそれに反論したところで激怒して見せ、ゆっくりと腰から剣を抜き放つ。
そんな俺を見て顔面蒼白になる無料観光案内男とマーニャ達……
慌てて俺を止めようとするが、事の次第を理解しているリューノによって止められる。
流石は身内……よくぞお見通しで(笑)

「ま、待ってくれ……お、俺はそんなつもりじゃ……ゆ、許してくれ!!」
「許すも何も……俺達は今なおキサマに貴重な時間を奪われ続けてるんだ! キサマはどの様に始末を着けてくれるんだ!?」

俺は言外に『命が惜しかったら金払え!』って含め言い放つ。
直接言ったら単なる恐喝になっちゃうからね。
その辺は気を付けるようにと師匠からアドバイスされてるんだ!
リュカさん素敵です。

「わ、分かった! は、払うよ……100ゴールドを払いますよ!」
泣きながら財布を取り出し、一番手近なホフマンに100ゴールドを手渡す男……
しかし……この程度で終わらないのがリュカ式 商魂(しょうこん)(だましい)撃滅(げきめつ)作戦。

「馬鹿かお前は!?」
ここでは怒りを露わに声を裏返させて言い切るのがポイント。
「俺達は6人居るんだぞ……先ほど俺が言った料金は、1人の時間を奪った代金だ! お前はそんな計算も出来ないのか!?」
後出し料金、待ったなし!

手に持っている剣を地面に突き刺し、金属音を響かせて追加料金を平然と突き出す。
目の前の武力的恐怖に加え、常識の通じないキチガイを相手にしている恐怖で反論を奪うのだ。
世の中、どんな奴が非常識なのかは見た目では判断付かない……
奴は今後二度と、同じ勧誘行為はしないだろう。

それを考えると、リュカさんはこの町に立ち寄ってはいないのだろう。
本家本元が立ち寄っていたのなら、この男だけでなく誰もが似た様な行為を行っているハズ無いからね。
真似てる俺などよりも遙かに理不尽なお人だからね!

「わ、分かった……600ゴールドだな! ほ、ほら」
合計600ゴールドをホフマンに渡し、これ以上課金されては堪らないとがかりに、脱兎の如く逃げて行く自称無料観光案内人。
リューノ以外の全員が、鼻白んで俺の事を眺めてる……

「流石ねウルフ。お父さんの弟子だけはある……一瞬だけどお父さんが居るのかと思っちゃたわ♡」
意味ありげな口調で抱き付き、俺の行為を賞賛するリューノ……
昨晩の事が無ければ『俺に惚れるなよ☆』って彼女にセクハラしたのだけど……今は出来ません!

ウルフSIDE END



 
 

 
後書き
ウルフ君は正しい人生を歩んでいるのだろうか?
もし道を間違えてしまったとするならば、一体何処で間違えたのだろう? 
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