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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epic13魔法少女戦隊でも作っとく?~The MagiciaN~

 
前書き
The Magician/魔術師の正位置/さぁ、始めよう。自分が望むことを実現させるため、今、スタートラインに立った。まずは願おう、イメージしよう、これからどうしたいのか。己の願望をハッキリさせることが重要だ。 

 
†††Sideルシリオン†††

「答えて。フェイトはどこであの魔法、雷槍連穿衝を学んだ? ああ違う。回りくどいな、コレ。グランフェリアとはどこで知り合った?」

フェイト達が活動拠点としている遠見市のマンションで、リビングのソファに座るアルフに問い質す。フェイトは今、寝室でゆっくり眠っている。ここに来る前に目を覚まし散々暴れたため、力づくでまた眠ってもらった。その時にアルフとも揉めたが、殺気を叩きつけて黙らせてやった。もう形振り構っていられなかったからな。

(はぁ、これはこれで面倒なことになってしまったな・・・)

◦―◦―◦回想だ◦―◦―◦

はやてとの買い物から帰ってすぐ、私の魔力探査能力にジュエルシード覚醒直前の魔力が引っ掛かり、はやてに一言断ってから海鳴臨海公園へやって来た。先の次元世界でも起こった樹の暴走体。まずはなのはとユーノが現れて、戦闘を開始。アリサとすずかはどうやらバイオリンの習い事のようだな。ばら撒いたイシュリエルを通して2人の様子を見る事が出来る。

「なのはは・・・まだ粗いな。あれではフェイトに勝てないぞ」

なのはの魔導師としての腕を見る限りでは、今のフェイトには及ばない。先の次元世界では、なのはの側には完成された戦士であるシャルが居たからな。その差があるんだろう。苦戦しているなのはを見守っているところで、「この感じは・・・!!」信じられない魔力を感じ取った。
空に渦巻く雷雲。ゴロゴロと稲光が鳴り、そして落雷。その落雷の中に、フェイトの姿を見た。落雷によって出来たクレーターの中央に、フェイトとアルフが佇んでいるんだが・・・。

「なぜ・・フェイトからあの子の・・・グランフェリアの魔力を感じるんだ・・・!?」

“堕天使エグリゴリ”の1機、宝雷の矛グランフェリアの魔力を、フェイトがその身に宿している。驚愕一色に染まる私の精神。しかし“エグリゴリ”の手がかりを見つけることが出来たことで、「ふふ、はは、ははは・・・!」すぐに全身が歓喜に震える。

「馬鹿が! 今はフェイトの心配だろうが・・・!」

だがフェイトが被害に遭っていることを一瞬とは言え度外視したことに怒りを覚え、自分の額を殴る。本音を言えば今すぐにフェイトとアルフから事情を聴きたいが、どうやらフェイトはグランフェリアに何かしら仕掛けられているようで、昨日までの心の揺らぎを失い、ただ戦意しか放ってない。アルフが庇って傷ついても知らんぷりで、攻撃一辺倒。

「グランフェリアの雷槍連穿衝まで使うのか・・・!」

雷槍の柄頭を武装で打つことで、射出時の通常スピードに打撃力と打撃時の魔力爆発を加えることで高速射出させる、というものだ。なのはの砲撃とフェイトの雷槍による挟撃で暴走体を撃破、休眠状態のジュエルシードが姿を現した。
対峙するなのはとフェイト。まずはアルフが動くが、ユーノのチェーンバインドで捕縛された。それをきっかけとしたようにフェイトが動き、続いてなのはがジュエルシードの回収に動いた。

「っ! この、魔力は・・・まさか!!」

グランフェリアの時とはまた違う意味で驚く。この懐かしい魔力は間違いない。なのはとフェイトの間に浮かぶジュエルシード。そこに転移反応が1つ。そして「はい。ちょっと待ってね~♪」1人の少女がその姿を現し、デバイスでフェイトの“バルディッシュ”を受け、素手でなのはの手を止めた。

「・・・シャルロッテ・フライハイト・・・」

外見は正しく私の知るシャルだ。アクアブルーの長髪にアザレアピンクの双眸。騎士甲冑も真紅の魔力も、そして何より魂までもが、彼女の物だ。

「君の魂が望んだ居場所は、やっぱりこの世界なんだな」

戦いの無い世界に転生してほしかったが、けどこれが最も正しいこととも思える。そんなシャルの転生体(名前はイリスというらしい)とフェイトの戦闘が始まった。が、イリスの前ではフェイトも無力だった。速度を活かしてもイリスの反応速度を超えることが出来ず、ついには撃墜された。

(っと、このままではフェイトが捕まるな)

いま彼女たちが捕えられるのは勘弁してもらいたいな。グランフェリアのことを聴き出さなければ。そういうわけで「仕方がないな」私はフェイトを助け出すために動くことにした。術者と定めた対象の姿を消すというティアナの幻術魔法、オプティックハイドを解除し、フェイトのソニックムーブを使って20mの距離を移動、地面に叩き付けられる前にフェイトを抱き止めた。私の登場に驚きを見せるイリスやなのは達。

「痛っ?・・・テスタ、メント・・・?」

(イリス・・・。あまり良い傾向じゃないな)

私の名や姿を見て、頭痛を起こしているのか顔を歪ませている。前世の記憶が僅かに残っているのかもしれない。フェイトをアルフに任せ、カートリッジをロードしてデバイスの刀身に雷光を付加、そして閃駆で突撃してきたイリスの迎撃に意識を注ぐ。
右隣に姿を見せたイリスの斬撃(おそらく雷牙月閃刃)をスッと半歩横移動するだけで回避。見てからの反応ではなく、体が憶えている。シャルの斬撃のクセなど。それをそっくりそのまま得ているこの子の攻撃なら、容易く紙一重で回避できる。

(すまないな)

がら空きな顎にアッパーを一発打ち込む。綺麗に入ったことで、イリスは倒れるまではいかないがデバイスを支えにしてやっと立っていられると言った感じに陥った。このまま放置でもいいが、回復したイリスや、何故か出てこないクロノが出て来て追撃されても面倒だ。
ならば、負傷者を出しておいてそちらに労力を使わせることで逃げる時間を稼ぐのが良い。そうと決まれば。海水で龍を作り出す、水流系下級術式アルティフォドスを発動。

(さぁ、どうする・・・?)

ここで動いたのがなのはだった。海龍とイリスの前に立ちはだかり、臨戦態勢。ここら辺りがいいだろう。なのは達へ海龍の首をもたげさせ、全員の意識がそっちに向かった瞬間を狙って、術式解除。アルティフォドスが海水の塊となって歩道に大波を創り出す。それと同時、フェイトを背負っているアルフの元へ走り、腕を掴んで再度オプティックハイドを発動。なんとか追跡も免れることが出来、無事に撤退することが出来た。

◦―◦―◦終わりだ◦―◦―◦

リビングソファに腰掛けるアルフの前に仁王立ちし、「グランフェリアとはどうやって知り合った? そしていつから?」若干苛立ちを持たせてもう一度問い質した。私の様子が普段通りじゃないことにアルフは「どうしたんだい?」なんて訊き返してくるが、私が今一番欲しい言葉はそれじゃない。だから応じることなく黙ったままアルフを見下ろす。

「うぅ・・・。えっと、グランフェリアは元々フェイトの母親、プレシアの客だったんだよ」

「客?」

「ああ、そうだよ。グランフェリアは情報屋らしいんだけどね。ジュエルシードの情報をプレシアに持ってきたのもアイツさ」

(おいおい。どういうことだ、それ。あの子が情報屋? しかもジュエルシードをプレシアに教えた?)

あまりに想像を超えた事態に頭痛が。アルフが続けた「初めて会ったのが1年くらい前だよ」という話には頭を抱えたくなった。1年も活動しているのか。それに、プレシア程の魔導師が目を付け、その情報を信じるに足ると判断したとなると、グランフェリアの活動期間はもっと長いはずだ。マリアならすぐに気付けるだろうが、彼女にも契約があるため、運悪く素通りさせてしまったんだろう。

「貴重な情報をありがとう」

グランフェリアが近くに居る。それが判っただけでも大収穫だ。時の庭園の座標も判っているし、転移することも出来る。が、問題は、いつぶつかるか。

(ジュエルシードが10個。上手く使えれば、現状の私でもグランフェリアになら勝てるか・・・?)

“エグリゴリ”の三強であるガーデンベルグ、リアンシェルト、シュヴァリエルの3機以外ならおそらく勝てる・・・気がする。グランフェリアとの戦闘をイメージしているところで、ふと壁に掛けられている時計に目が行き、もう18時を回っていたのを確認した。

「そろそろ失礼するよ」

はやてを待たせているし、早々に帰ろうとしたんだが「待ちな!」アルフが外套の裾を引っ張ってきた。

「あんた。フェイトを元に戻すことが出来ないかい!? アイツと知り合いなんだろ!? だったらアイツの妙な魔法に掛けられたフェイトを治せるんじゃないのかい!? グランフェリアについて喋ったんだ。それに見合う報酬くらいは受け取れるんじゃないか!?」

まぁ、当然の主張か。フェイトの様子を思い返す。感情を抑え込まれ、戦闘意識だけが強化されている。精神干渉系の術式を扱える“エグリゴリ”は、闇黒系のレーゼフェアだけなんだが。調べてみると、確かにレーゼフェアの精神干渉系の術式が、フェイトの脳に施されていた。とりあえず名前は出さずに「グランフェリアが誰か連れてきたことは?」と訊くと、アルフは首を横に振った。

「(ということは・・・)グランフェリアから何か貰った?」

「何かカードのようなもんを貰ったよ。フェイトのおでこに張り付けた後、なんか呟いて、そんで剥がしてた」

術式をカード化した、ということか。神器作成能力の一種と見ていいな。

「もう一度診てみよう」

フェイトの眠る寝室へ入り、ベッドに横になっているフェイトの顔を覗き込む。私がフェイトに余計なことをしないかと警戒しているアルフに、「グランフェリアのことで知っていることを全部教えてほしい」と告げる。だがアルフは口を噤む。まさか「なにかと取引き?」と訊くと、アルフはコクリと頷いた。足元を見られているな。しかしこれはこれで良い展開だと思い至る。

「グランフェリアの情報の代金として、未回収のジュエルシードの在処を教えよう」

組織力を得、しかもイリスが加わったことで戦力的にも負けている今、この子たちに必要なのは確かな情報だ。なのは達が集め出すより早く、フェイト達に回収してもらいたい。その方が都合がいい。

「はあ!? それ、本気で言ってんのかい!? あんたもジュエルシードが欲しいんだろ! だって言うのに、そんな敵にジュエルシードの在処を教えるなんて・・・あっ、罠じゃないだろうね!」

「違う。私にとってジュエルシードよりグランフェリアの方が重要だから、だ」

「・・・いつも余裕そうなあんたがそんなに感情をむき出しにするんだから、よっぽどグランフェリアと何かあったようだね」

「ノーコメント。で? 悪くない話だと思うけど、どうする?」

「そうは言っても、あたしだってアイツのことなんかあんまり知らないよ。ただ、何度か模擬戦をしてもらったことがあるくらいだ。雷槍何たらって魔法も、そん時に形だけ教えてもらった感じだよ」

あの子と模擬戦か。フェイト達との初戦で感じ取った妙なアルフの落ち着き払いは、グランフェリアとの模擬戦が影響していたんだな。それからいくつかアルフから情報を貰ったが、確かに目ぼしいものはなかった。今度は私の番だと、残りのジュエルシードの在処をアルフに伝えるんだが、「お、憶えきれない・・!」頭を抱えた。

「じゃあ何か紙を用意!」

性別を偽る演技を続けるのが辛くなってきた。早くはやての家に帰って、あの子の作った料理を食べ、ゆっくりと休みたいなぁ・・・。

「あ、ああ。ちょっと待っておくれ」

ドタバタと探しに行くアルフ(もう私への警戒を解いているな)を横目に、フェイトの額に触れ、

呪われし者に(コード)汝の施しを(ラファエル)

中級補助系術式、ラファエルのバリエーションを発動。これには一切の治癒能力は無い代わりに、対象に掛けられた付加術式を強制的に解除する降下を持つ。結構大した効果を持っているんだが、大戦当時はごり押しで勝てていたし、これまでの契約でもわざわざコイツを使うまでもなく何とかなっていたため、ほぼ放置。
フェイトの額に浮かび上がるのは、二重円の中に五角形と逆五角形を合わせた十角形、その中に円と五角形を収めたスヴァルトアールヴヘイム魔法陣。

「砕け」

ラファエルの効果を高めると同時に砕け散る魔法陣。これでレーゼフェアの呪縛から解き放れるだろう。そこに「持って来たよ! これでいいかい!?」アルフが1枚の紙を手に戻って来た。その紙に把握している場所を書き記しつつ、「フェイトは治しておいたから」と告げる。

「本当かい!? 助かったよ、テスタメント!」

「礼は結構。コレ、フェイトに渡しておいて。それじゃあね」

記し終えた紙をアルフに手渡しながら寝室を後にしようとした時、

「あ、うん・・・。なぁ、あんたさ、よかったらあたし達の仲間にならないかい?」

「はあ?」

そんな提案を、あのアルフが出してきた。

†††Sideルシリオン⇒なのは†††

「あのぉ、イリスちゃん? もうちょっと離れてくれるといいなぁ、なんて・・・」

「え~、イリスじゃなくてシャルって呼んでよ♪」

「じ、じゃあ・・・シャルちゃん」

イリスちゃん改めシャルちゃんに案内されたアースラっていう船の通路を歩く私たち3人なんだけど、シャルちゃんがピッタリ横にくっ付いて来る。全然嫌じゃないし、むしろ嬉しいって思えるんだけど、ちょっと歩きにくいかも。
にゃはは、と苦笑していると、私たちの後ろをついて来るユーノ君が「コホン」と咳払い。そんなユーノ君は、今はなんと元の人の姿に戻っているのです! ようやく元の姿になって活動できる程に回復したってことみたい。

「えっと、シャル、でいいのかな?」

「うん、それでいいよユーノ」

「君たち管理局が来たってことは、その・・・」

「詳しいことはアースラ(ウチ)のボスから伝えられると思うけど、一応、わたしからも。スクライアのペリオさん・・・メッチャ怒ってる。帰った時、ある程度、覚悟しておいて方が良いかも」

「うわぁ~・・・どうしよう~・・・」

「にゃはは。その、頑張って、ユーノ君・・・」

頭を抱えて苦悶するユーノ君に、私はそんなことしか言えないよ。シャルちゃんから「怒るのは心配の裏返し。逃げないように♪」って諭されたユーノ君は、「うん。判ってる」キリッとした表情で頷いた。
通路を歩く中、何も知らない私は時空管理局やアースラって船のことをシャルちゃんに説明してもらった。私の住む世界以外にもたくさんの世界が在るってユーノ君から聞かされていたけど、本当にすごいことに関わってるんだなって、改めて自覚する。

「――でも、シャルちゃんって私やユーノ君とそんなに歳、変わらないよね・・?」

「8歳。で、今年の11月16日で9歳になるんだよ」

「同世代なんだぁ・・・。それなのにすごいな、シャルちゃん。管理局ってところでもう働いてるんだもん」

「しかも執務官って、管理局の中でも結構なエリートじゃないか。もしかして最年少で執務官になったんじゃ・・・?」

「そうなの!?」

羨望の眼差しを向けてシャルちゃんに訊いてみると、「ごめん! 嘘吐いた! 本当は執務官補なの!」って思いっきり頭を下げた。なんで謝られたのか意味が解らなくて、説明してほしくてユーノ君に振り向いてみる。

「執務官の補佐のことだね。未来の執務官の卵って言えばいいのかな。それでもやっぱりすごいことだと思うよ。8歳でそこまで行けるなんて」

「なんだ。シャルちゃんって、やっぱりすごいんだ!」

「あ、ありがとう。いっぱい勉強して、なれたんだ。褒めてもらえて、すごい嬉しい」

照れ笑いを浮かべるシャルちゃんは、やっぱり可愛い女の子だった。そして私たちは、このアースラで一番偉いリンディ艦長さんの居る部屋に着いた。私は失礼が無いように服(シャルちゃんに言われて変身は解いた)をチェック、髪にも触れて、乱れていないかを確認。

「大丈夫。可愛いよ、なのは」

「うぇ? あ、え、ありがとう」

ハネてたらしい私の髪をシャルちゃんが撫でて直してくれた。ボッと顔が熱くなっちゃうのが判る。シャルちゃん、さっきと違ってなんか男前だ。

(それにしてもどうしてシャルちゃんはこんなにも私のことを親しんでくれるんだろう?)

まるで以前から私たちが知り合いだったかのよう。そういう私も、なんとなくシャルちゃんとは前から知り合いだったような気がする。

(不思議な感じ。こんな気持ち、初めてだ・・・)

そう思ってるところで、シャルちゃんが「リンディ艦長。来ていただきました」と一歩踏み出すと扉が横に開いた。まず目の前に飛び込んできたのが「野点・・?」お茶の席とかで見る、アノ野点だった。あと盆栽や鹿威し(ししおどし)があって、どこからともなく小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
ハイテクな機械とそんな日本文化のミスマッチな部屋の中に、

「お疲れ様、イリス。そして、そちらのお2人にはようこそ♪ 当艦船、アースラの艦長をしている、リンディ・ハラオウンです」

すごく優しそうな女の人、リンディさんが赤いフェルトの上で正座してた。

「高町なのはです」

「ユーノ・スクライアです」

「はい♪ ささ、立ち話もなんだから座って座って」

リンディさんに勧められて、私とユーノ君もフェルトの上に正座した。そしてシャルちゃんは「はい。お茶とお茶請けね」私たちにようかんとお茶を用意してくれた。みんなで美味しく頂きながら(リンディさんがお茶に砂糖を入れたのはビックリしたけど)私たちがここに呼ばれた理由、ジュエルシード探索についての事情を説明した。
ユーノ君と初めて出会った時のこと、魔法を貰ったこと、ユーノ君の助けになりたいからジュエルシード探索の手伝いをしていることなど。説明を終えると、リンディさんもシャルちゃんも黙っちゃって、その緊張感が息苦しい。

「ユーノ君。管理外世界の原住民に魔法の存在を教え、なおかつ授与することは、管理局法では違法となっています。それは解っていますね」

「はい・・・。ごめんなさい」

リンディさんに厳かに注意されたユーノ君は体を小さくして、謝った。私は前に決めた通り、ユーノ君だけの所為じゃないってことを言おうとしたんだけど、その前に私の隣に座るシャルちゃんに手で制されたから黙ることに。

「ペリオ氏から連絡を頂いた時は本当に驚きました。ジュエルシードは第一級のロストロギアですから。発掘したのがあなたで、その責任を負って回収しようというのは立派なことだと思います。ですが、そんな危険物を1人で回収しようとしたのは無謀なことだと叱責しましょう」

「・・・はい」

「では次ね。ペリオ氏からの連絡には、セレネさんとエオスさんの2人も居るという話なんだけど、その2人はどうしたのかしら?」

その質問に、ドキッとなる。でも黙っておくことも出来ないから、私の様な経緯で魔導師になったアリサちゃんとすずかちゃんのことも話す。温泉での一件だ。私を守るために魔導師になってくれたアリサちゃんとすずかちゃん。そのことを話し終えると、リンディさんは「あらあら」さっき以上に困ったように手を頬に添えて、シャルちゃんは「アリサ・・すずか・・・?」2人の名前を何度も呟いてる。

「なのはさん。その子たちとは今、連絡が取れるかしら?」

「えっと、たぶんですけど・・・。ちょっと失礼します」

携帯電話の時刻を見れば、もうバイオリンのお稽古も終わってる時刻だ。私もお父さんに帰りが遅くなることを連絡しておかないといけない。でも今はとりあえずアリサちゃんに電話をかけてみる。数コールもせずに『はいもしもし。なのは、どうしたの?』アリサちゃんは出てくれた。

「あ、アリサちゃん。今、電話いいかな? 魔法の事でちょっと話があるんだけど」

『いいわよ。ちょうどすずかやセレネ達も揃ってるし。今ね――』

アリサちゃんは今、すずかちゃんと一緒に自宅で今日のお稽古の復習をしてるとのこと。スピーカーフォンモードの電話からわいわい騒いでるセレスちゃんとエオスちゃんの賑やかな声が聞こえてくる。そんなところに管理局の話をするのは悪い気もするけど、しょうがないよね。

「えっとね、アリサちゃん。実は――」

管理局って人たちが来て、ちょこっと大変なことになってることを伝えた。すると電話の奥で、『ぎゃああ! ついに来たぁぁ!』ってセレスちゃんの悲鳴らしきものと、『終~わったぁ、終~わった~♪』エオスちゃんの現実逃避っぽい鼻歌が聞こえてきた。

『どうしよう、セレネちゃん達が壊れちゃったよ・・・』

『あー、放っておいて。で? あたし達はどうすればいいの?』

「えっと・・・。今、管理局の艦長さんが側に居るから、代わるね」

「初めまして、アリサさん。時空管理局のリンディ・ハラオウンです。こうして連絡をしたのは――」

リンディさんは、アリサちゃん達の顔を見ながら話をしたいから、今から空間モニターとかいうのを使いたいってお願いした。

『『空間モニター、ですか・・・?』』

アリサちゃんとすずかちゃんはそれがどういうのか判らないみたいで困惑してるよう。そこに「テレビ電話のようなものだよ」ってシャルちゃんが教えた。それだけで察してくれたようで、『しばらく部屋に誰も来ないようにしますから、大丈夫です』アリサちゃんが承諾。
魔法を知らない人が、宙に浮かぶモニターを見ればビックリするし、魔法がバレちゃうもんね。少し間を置いた後、『もう大丈夫ですよ』ってアリサちゃんが知らせてくれた。それを合図としたように私とユーノ君とシャルちゃん、そしてリンディさんの間にモニターが浮かび上がった。

『おお、すごい!じゃなかった。えっと、初めまして、アリサ・バニングスです』

『月村すずかです』

『セレネ・スクライアです』

『エオス・スクライアです』

モニターに映るアリサちゃん達が小さくお辞儀した。リンディさんが改めて自己紹介してるのを聞きながら、私はシャルちゃんから目を離せなかった。シャルちゃんは私と初めて会った時のように涙ぐんでいて、袖口で涙をゴシゴシ拭ってる。なんかその姿が愛おしく思えて、「はい。シャルちゃん」持ってたハンカチで涙を拭いてあげる。

「ありがとう、なのは。もう大丈夫」

優しい笑顔を浮かべてくれたシャルちゃんに、「どういたしまして」私も笑顔で応える。

「――では。今連絡が取れるなのはさん達に、とても大事なお話があります」

リンディさんから私たちに教えられたロストロギア、ジュエルシードの詳しいお話。たった1つのジュエルシードの本格的な発動でも街1つくらい消滅させることが出来て、複数が同時に発動したらそれこそ幾つもの世界が消滅するかもしれないってことで。危ない物だっていうのは判っていたけど、世界が消えちゃうほどに危ないなんて思ってもみなかった。

「少し前に観測したんだけど、一度大きな発動があったでしょ? ソレが、世界を滅ぼす現象である次元震なの。ま、規模はうんと小さくて、1%にも満たない。けど、もしアレが同時に複数起こったら・・・」

シャルちゃんのその話で、ゲームセンターでの魔力の爆発を思い出す。あんなのでも小さいなんて。ブルッと体が震える。想像も出来ない、酷いことになる。以前にもそう言った次元震が起きて、いくつもの世界が消えちゃったってお話をしてくれたシャルちゃん。それを聴いて、私もモニターに映るアリサちゃん達も顔を青くした。

「なのはさん、ユーノ君。アリサさん、すずかさん、セレネさん、エオスさん。これまでのジュエルシード探索、ご苦労様でした。よく頑張ってくれましたね。でももう大丈夫。ジュエルシード探索は、現時刻を以って時空管理局が全権を持ちます。なのはさんとアリサさんとすずかさんはデバイスを返却して、日常に戻ってください」

「『『え・・・?』』」

「そしてユーノ君とセレネさんとエオスさんは、私たちがペリオ氏の所まで送ります。今回の一件に関しては厳重注意で済ますことにしますから、今後、こういった無茶も無理もしないように」

「『『あ・・・』』」

リンディさんから告げられた、私たちのジュエルシード探索の終わり。そのあまりの呆気なさに呆けてしまう。

(どうしよう。私、まだフェイトちゃんに友達になりたいって伝えてない。アルフさんやテスタメントちゃんにも。でもこのままじゃ、魔法を失くしちゃったら・・・)

焦りが溢れ出てくる。魔法を使えるからこそぶつかれる、言葉を交わすことが出来るのに。今まで通り魔法を使って、ジュエルシード探索を続けたいって思いを言わないと、本当にこれで終わっちゃう。

「みなさん、それでいいわね? もう危ない目に遭うこともなくなるし、日常を削ってジュエルシードを探さなくても済むのだから、断る理由はないと思うわ」

リンディさんの言葉が、ユーノ君たちと出逢う前の日々を私に思い出させる。平和だった。痛いことも危ないこともなくて、アリサちゃんやすずかちゃんと楽しく過ごせてた。でもその代わり私は空っぽだった。アリサちゃん達のようにハッキリした将来像なんてなくて、ぼんやりした中を漂ってた。だけど、ユーノ君たちと出逢って、魔法を知って、こんな私でも出来ることがあるってことが判った。

(ユーノ君・・・)

俯いたままのユーノ君を見る。と、ユーノ君も私の方を向いたから目が合った。目で語り合うなんて出来ないけど、今だけはなんとなく判る。私の意思次第だってことが。すでにいろいろと違法行為をしちゃってるユーノ君は大きく出れない。なら、私しかいない。

「あのっ!」

「どうしました? なのはさん」

「私、このままジュエルシードの探索を続けたいです!」

意を決してリンディさんにお願いしてみる。返ってくるのは「それはどうしてかしら?」そんな問い。ここで間違えたら拒否される。でも私に上手なことは言えない。だから思ったことを全力で伝えるだけ。

「フェイトちゃんやテスタメントちゃんのことをもっとよく知って、友達になりたいからです! 確かに今はぶつかっちゃってるけど、でもきっと判り合えると思うんです。だって2人とも優しいから! 私、フェイトちゃんに助けてもらったことがあるんです。テスタメントちゃんはこの前の暴走で、私たちの代わりにジュエルシードを抑えてくれて。だからこのジュエルシードの一件が終わったら、時間は掛かるかもしれないけど、きっと・・・!」

それが私の本心。最初は、独り頑張っていたユーノ君の助けになりたいだけだった。魔法の力で誰かを助けることが、何かを守ることが出来るなら、私は戦うことも出来る。そしてテスタメントちゃんやフェイトちゃん、アルフさんと出会って、それぞれのジュエルシードを集める理由を、全部じゃないけど知った。大切な誰かを助ける為。それはきっと優しいからこその理由なんだ。

「そう言えば、あなた達へはちゃんとした自己紹介がまだだったよね。 わたしはイリス・ド・シャルロッテ・フライハイト執務官補よ。よろしく。わたしから質問があるの。アリサとすずかは、どうして魔導師になったの?」

言い切ると同時、シャルちゃんがモニターの向こう側に居るアリサちゃん達に訊いた。

『もちろん、なのはを守るためよ!』

『アリサちゃんと同じく。大切な友達を見放すような真似は出来ないから』

何度聞いても泣いちゃうほどに嬉しいことを即答してくれるアリサちゃんとすずかちゃん。けど、今回はその後に続きがあった。

『あと、あたし個人としてフェイトやテスタメントと友達になりたいってことかしら』

『私もそうかな。テスタメントちゃんって面白くて、フェイトちゃんも優しいから、きっと友達になれると思う』

「アリサちゃん、ずかちゃん・・・」

2人もそうだったんだね。

「じゃあ、セレネとエオス。あなた達はどうしてジュエルシードを探しに来たの?」

『『それは・・・!』』

セレネちゃんとエオスちゃんが黙っちゃった。そういえば聴いたことがないなぁ。私たちの視線を一手に引き受けて、『うぅ』たじろいじゃってる。シャルちゃんは小さく溜息を吐いて、「話したくない? それとも聞かれたくない相手が居たりする?」って訊くと、2人はチラッとユーノ君を見た。

「え、僕?」

「ん。じゃあユーノ。ちょこっと失礼するよ」

シャルちゃんはそう言ってユーノ君自身に耳を両手で塞がせて、その上から自分の両手を重ねた。二重の耳塞ぎ。そして改めて、「はい、理由は何?」って尋ねた。

『ユーノにもっと尊敬してもらいたかった。私たちの方が年上なのに、ユーノの方が頭も良いし魔法の腕だって良い』

『ユーノに気付かれずにジュエルシードを集めて、詰まったところで姿を現して渡す。そうすれば、私たちのことをもっと尊敬してくれるって思ったの。結局、アリサとすずかを巻き込んじゃう形になって、申し訳ないって思ってる』

『そうだったんだぁ・・・へぇ~』

『それって、なんて言うか・・あれ、だよね・・・』

アリサちゃんとすずかちゃんはその理由に何か思うようなことがあるみたいなんだけど、私にはサッパリ。見ればリンディさんも「いいわねぇ、初々しいわぁ♪」なんか機嫌が大変よろしいです。シャルちゃんも「そうなんだぁ」って面白いことを聴いたって笑顔になっちゃってる。
解っていないのはどうやら私だけみたい。なんか疎外感を感じちゃう。そんなみんなの様子に、セレネちゃんとエオスちゃんは『もう! だから話したくなかったのに!』ってジタバタ暴れる。

「とにかく一応、全員の理由を聴いた。そのことを踏まえて結論を出す。リンディ艦長、わたしからもお願いします。この子たちを、一時的な民間協力者として手伝わせてあげてほしいんです」

「イリス・・・?」

「なんと言うか、ここまで来たら最後まで見届けてほしいと思ったんです。ここまで関わっていおいて、今さら全てを忘れて日常に戻れって言っても無理があるかと」

ユーノ君から離れたシャルちゃんが私たちの味方になってくれた。それに『ちょっと言い方が癇に障るかもだけど、ちょっと我慢してね』ってわざわざ念話をくれた。

「ジュエルシードの暴走体との戦闘と封印、他魔導師――フェイトとその使い魔、アルフ。そしてテスタメントとの戦闘でも役に立つと思います。先ほどモニターした限りではなのはの魔力や射砲撃は目を瞠るものがあります。わたしとクロノの2人だけで十分かと思ってましたが、テスタメントには嫌な感じがするんです」

クロノ? 誰のことだろう? でもきっとシャルちゃんみたいに強い人なんだろうなぁ。シャルちゃんは「それに」って前置きして、リンディさんに耳打ちし始めた。

「ジュエルシードの運搬船を襲撃した何者かが現れるかもしれません。ソイツと衝突するとき、わたしやクロノがジュエルシードの封印で疲れていてはダメです」

ん? なんか物騒な話をしてる? 聞き取れないけど、リンディさんの雰囲気からそう感じる。リンディさんはシャルちゃんのヒソヒソ話に納得したみたいで、「そうね」って頷いた。

「なのはさん、アリサさん、すずかさん。ジュエルシードの探索には危険が付き物です。それでも続けますか? ジュエルシードの探索を」

リンディさんの問いに、私とアリサちゃんとすずかちゃんは顔を見合わせて、

「『『はいっ!!』』」

強く頷いた。シャルちゃんは満足そうに微笑んで、リンディさんは少し考える仕草をした後、「判りました。あなた達にはこのままジュエルシード回収を手伝ってもらいます」って私たちのジュエルシード探索の続行を認めてくれた。

「ですが。条件があります。あなた達の身柄を一時、時空管理局の預かりにすること。そのことから私の管理下に入ってもらうことになりますから、こちらの指示には絶対遵守ということになります。よくって?」

「「『『『『はいっ!』』』』」

こうして、私たちは管理局と一緒にジュエルシードを回収することになった。リンディさんの説得に協力してくれたシャルちゃんに「ありがとう、シャルちゃん!お礼を言う。するとシャルちゃんは「ううん。わたしとしてもあなた達と一緒に居たいと思っただけ♪」私にコソっと教えてくれた。

「アリサ、すずかもよく聴いておいて。今後について少し話すから。基本、わたしと、わたしの上司であるクロノ・ハラオウン執務官はアースラで待機。ジュエルシードの在処の探索・発見はこちらが担当するから、もう探し回らなくていいよ。で、戦闘及び封印はこれまで通りにあなた達の担当になる。それでいい?」

「私はそれでいいよ」

『あたしも。それでいいわ。というか、それで文句が言えるわけないじゃない』

『うん。探して見つけてもらえるだけでも十分助かるよ~♪』

「ん♪ あ、もしあなた達でも敵わない奴が出てきたら、わたしが助けに行くから安心して。じゃあそういうわけで、魔法少女戦隊アースラ、頑張ってジュエルシードを集めるぞぉーー!」

チーム名はともかく、シャルちゃんが拳を突き上げたから私たちも「おおーー!」同じように拳を突き上げた。シャルちゃんが後ろに控えてくれているってことが判るだけでも安心して戦えそう。これからは上手くことが進むと思って笑い合ってるところに、リンディさんが「でも・・・」って困ったように首を傾げた。

「なのはさん達、この世界ではまだ教育機関に修学している最中じゃなかったかしら? ジュエルシードの回収は一刻を争います。通学していては間に合いようがないわ」

「『『あ・・・』』」

学校があるのを忘れてた・・・。

 
 

 
後書き
ヨー・レッゲルト。ヨー・ナポット。ヨー・エシュテート。
今話は、そうですね、終盤への繋ぎと言ったところでしょうか。次回から後半戦です。
管理局の組織力を得たなのはチーム。グランフェリアの尻尾を掴んだルシル。ルシルに協力を求めたアルフ。
そして、忘れ去られそうになっているメインヒロインのはやて。

「別にええもん。あとちょっとの辛抱や!」

「そうだぞ、はやて。もう少し耐えれば、君が主役だ??」

「なんで疑問系なん!?」

少女たちはそれぞれの望みの為、海鳴市の空を翔けます。
 
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