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万華鏡

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第三十話 江田島その十

「もっともあれって固形だからルーになるけれど」
「じゃあ私もビーフシチューを作られるのね」
「肉じゃが出来るわよね」
「得意料理よ」
 こちらについては何の問題もなかった。
「美味しくて栄養もあるし素晴らしいお料理よね」
「じゃあビーフシチューもよ」
 出来るというのだ。
「絶対にね、というか肉じゃががね」
「まさかビーフシチューから出来たなんてね」
「思いも寄らなかったっていうか」
「別物よね」
「そういうのってこう言うのよね」
 ここで彩夏が出した言葉はこうしたものだった。
「ほら、魔改造ね」
「ゲームにありそうな言葉よね」
「プロアクションリプレイを使ってね」
 お世辞にも褒められた楽しみ方ではないかも知れないがこれを使えばキャラクターの能力は格段に上がる、特に育成が関わるゲームでは。
「そうした感じの」
「ううん、本当に凄いわね」
「その頃の海軍ですが」
 案内役のえ自衛官が微笑んで話してきた。
「イギリス海軍を手本にしていました」
「じゃあそのビーフシチューもですか」
「イギリスからなんですね」
「カレーも他の洋食もです」
 カレーは先生が話した通りだった。
「全てイギリスからです」
「あの食べ物がどうにもならない国からですか」
「勉強したんですか」
「そうです」
 こう話すのだった。
「実は」
「ううん、それはまた」
「よくそれで美味しくなりましたね」
 ビーフシチューもカレーも他の洋食もだというのだ。
「イギリスを手本にして」
「奇跡みたいですね」
「作るのは日本人です」
 最重要事項である、この件に関しての。
「ですから」
「だからですか」
「美味しいんですね」
「私もまさかビーフシチューから肉じゃがが出来るとは思いも寄りませんでした」
 自衛官は笑って五人に礼儀正しく話す。
「全く別ですから」
「けれど考えてみればですね」
「素材は同じですよね」
「調味料が違うだけです」
 イギリスのものと日本のもの、それが違うだけでだ。
「作り方も基本同じです」
「煮ますからね、どっちも」
「汁気はシチューの方がずっと多いですけれど」
 肉じゃがには汁気は殆どない、ここは違う。
「本当に違いますね、そこは」
「かなり」
「そうです。そしてその肉じゃがの元を生み出したのがです」 
 自衛官は誇らしげな笑みになった、そのうえで絵の中にいる東郷を見て五人に話した。
「この方です」
「東郷平八郎ですか」
「この人なんですね」
「海自でも神様みたいな方です」
 その敬愛は神格化の域にまで達しているというのだ。
「本当に凄いですよ」
「あの戦争ってそんなに凄かったんですか」
 琴乃は自衛官に日露戦争自体について尋ねた。 
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