神々の黄昏
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第三幕その二
第三幕その二
「大蛇まで倒したものだが」
「大蛇を」
「それは知ってるわ」
「あの巨人が姿を変えた大蛇ね」
「だからだ」
また言う彼だった。
「熊一匹の代償としてはだ」
「嫌だというの?」
「それで」
「それにだ」
ジークフリートはさらに言うのだった。
「これを君達にに与えたら妻も寂しがるだろう」
「あら、奥さんが怖いの」
「そんなに」
「怖くはない」
それは否定するのだった。
「だが妻を悲しませることはしたくないからだ」
「だからだというの」
「それで」
「やっぱり惜しいのね」
乙女達はその彼にさらに言うのだった。
「それならそうと言えばいいのに」
「そうよ。わかりやすいのに」
「全く」
それぞれ言い終えると河の中に入った。ジークフリートはそれを見届けてからふと気が変わってそれで言うのだった。
「私も吝嗇ではない」
それは自分でも気をつけていることだった。
「それなら。今度出て来たら」
その指輪を渡すつもりだった。しかしであった。
乙女達は出て来ない。そうして河の中から声がするのだた。
「勇士よ、その指輪は必ず」
「貴方に災いをもたらすわ」
「だからその時は」
「私達がその呪いから貴方を救いましょう」
「勝手に言っておくことだ」
ジークフリートは呪いについては戯言と思っていた。
「折角渡そうというのに」
「ジークフリート、気をつけるのよ」
「必ず」
「いいわね」
こう言うのである。
「大きな不幸から」
「何故ならその指輪は」
「私達が護っていた黄金から作られたもの」
「ラインの黄金から」
「ラインの黄金!?」
ジークフリートはそれを聞いて首を傾げさせた。
「それからか」
「それから恥辱の中で指輪を作った男」
「その男の呪いが」
「貴方にも」
「私にもだというのだ」
「そうだ」
まさにその通りだというのだ。
「貴方に殺された大蛇の様に」
「その通り」
「全く同じ様に」
「何かそれを聞いていると」
またジークフリートの気が変わったのだった。
「指輪を渡そうとは思えなくなったな」
「若し呪いを受けたくないのなら」
「滅びたくないのなら」
「その指輪を」
乙女達はさらに話していく。
「ライン河へ」
「私達の河の中へ」
「その指輪を」
「私に脅しは効かない」
恐れを知らないジークフリートだからこその言葉だった。
「そんなものはだ」
「これは本当のことよ」
「呪いのことは」
「私達は今は嘘を言っていないわ」
河の中からまた話すのだった。
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