八条学園怪異譚
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第三十一話 マウンドのピッチャーその三
「見てみる?私は夏でもいつもストッキングなのよ」
「学校でもですか?」
「そう、素足だとね」
どうかというのだ、それだと。
「冷えるからね」
「ああ、先輩冷え性なんですか」
「実はそうなのよ」
このことも話す。
「だからお酒を飲んでもおトイレが近かったりするわ」
「お店でそんなこと言わないでくれます?」
聖花がむっとした顔で突っ込みを入れる。
「おトイレのこととかは」
「駄目?」
「駄目です。というか先輩さっきから道を行く人を見ては変なこと仰いますけれど」
「見えるのよ、仕事柄ね」
「巫女さんだからですか」
「そう、人の後ろにいるのがね」
そうした存在がだというのだ。
「私には見えるのよ」
「背後霊がですか」
「動物霊もね。あまりにもその力が強いとね」
茉莉也は聖花に笑顔で話す。
「見えるわ」
「背後霊ですか」
「あんた達のは見えないけれどね」
「見なくていいですから、そういうのは」
「あら、いいの」
「特に。そういうのは」
いいとだ、正華は茉莉也に言う。
「いいです」
「そうなのね、じゃあいいわ」
「それにお店でそういうこと話されると他のお客さんが不気味に思いますから」
「何ならお客さんのそういうのも見てあげるけれど」
「うちはパン屋です」
聖花は茉莉也に今度はぴしゃりと返した。
「それも普通の」
「心霊相談とか入れたら面白くならない?」
「ならないですから。というか先輩本当に何しに来たんですか?」
「パン買いに来たのよ」
こう聖花に返す、愛実も見ているところで。
「決まってるじゃない」
「それで何で背後霊とかいうお話になるんですか?」
「いや、私巫女だから」
「巫女さんに見えないですし、今は」
聖花はその格好も見て突っ込みを入れる。
「ですから普通のことをお話して下さい」
「芸能界とか学校とか阪神タイガースとかお酒とか?」
「そういうお話をして下さい」
「わかったわ。じゃあお酒のおつまみにね」
一応話を聞きながら話していく。
「メロンパンも買っておくわ」
「えっ、日本酒のおつまみですよね」
愛実は茉莉也の今の話を聞いて思わず問い返した。
「それにメロンパンですか?」
「今日の晩のおつまみよ」
「それにメロンパンですか?」
「そうよ。おかしい?」
「日本酒にメロンパンは」
愛実はこのことに真剣に突っ込みを入れた。
「あの、それは幾ら何でも」
「先輩ジャムパンとクリームパンとチョコパンもなのよ」
聖花も困った顔で返した。
「日本酒のおつまいにするっていうのよ」
「美味しいんですか?」
「美味しいわよ」
茉莉也は愛実の気持ち悪いものを見る様な顔での問いにも笑顔で返す。
「あんた達も一度やってみたら?おはぎとかね」
「遠慮します」
「私もです」
愛実だけでなく聖花も言う。
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