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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第四十話~地下の攻防~

 
前書き

更新です。
時期的にテストやら何やらが近いので、再来週辺りから一時的に更新が滞ると思いますが見捨てないでいただけたあらと思います。

では本編どうぞ
 

 



ミッドチルダ・地下水路


 唐突ではあるが、スバル・ナカジマには姉がいる。その姉、ギンガ・ナカジマもスバルと同じく時空管理局に所属する陸士である。彼女は父親であるゲンヤ・ナカジマが指揮を取る部隊、陸士108部隊に所属している。
 そんな彼女は今ミッドチルダの地下水路の中を駆けている。なぜこんなところを進んでいるのかというと、今日彼女が担当している事故にその理由があった。
 今日、彼女が通報を受けた交通事故。その事故車両は郵送目的に使われるトラックであった。それだけなら常日頃から処理する事故と特に違いはないのだが、そのトラックの積荷が普通の事故との違いを如実に表していた。
 積荷の中身は何かを培養するために使われるカプセルのようなものであった。そのカプセルのみなら特に怪しくはないのだが、そのカプセルが割れ、その中身を満たしていた薬品と思われる液体が飛び散り、そしてその周りにはガジェットの残骸が転がっている。
 この時点でこれを事故と判断できる人間は皆無である。
 この現場に事件性を感じたギンガは現場に残る薬品の跡が地下水路に続いているのを見つけると、現場を部下に任せ調査のために地下水路の探索に出たのだ。
 カプセルの中身が何かということは彼女も予想できない。しかし、仮にガジェットを簡単に屠れる何かであれば、一般人に何かしらの危険があるという予想は簡単にできた。

(だけど………)

 歩みを進める中、ギンガは現場を思い出しながらあることを思った。

(割れていたカプセルも引きずられていた何かも………結構小さかったわね)



ミッドチルダ・市街地


 ライが気を失った少女を保護して地上に戻ってから数分後、ライからの報告を受けた機動六課のフォワードメンバーはライのいる場所に集まっていた。しかし、今現在聖王教会に出向しているシグナムはその場にはいなかった。
 ライは待っていた間に調べた少女の状態と、彼女が引きずっていたケースの中身がレリックであったこと、更には鎖の形状からもう一つ、レリックが入っていると思われるケースがあった可能性があることをその場にいる全員に伝えた。

「じゃあ、ヴァイス君とシャマル先生はヘリでこの娘とレリックを六課に運んでください。フォワードの皆は地下水路に先行してレリックの捜索を―――」

 そこまでなのはが指示を出した時に新たな情報が文章として空中投影ディスプレイに表示される。その内容は、ある事件で地下水路を捜査していた管理局員がナイトメアフレームと思われる兵器と接敵したと言う報告であった。
 この報告を送ってきたのはギンガである。彼女の所属する部隊ははやてと個人的な繋がりがあり、こういう場合の情報は優先的に六課に伝わるように部隊間の連携がされていた。
 報告にあったナイトメアフレームと言う単語が見えた時点でライは自分の意見を口に出していた。

「スターズF、ライトニングFは指示通りに地下水路の探索を。スターズ1、ライトニング1の2人はヘリの護衛。スターズ2はこの空域一帯の警戒を。僕は地下のナイトメアの殲滅と、ナイトメアと接敵した局員の支援に向かう」

 現場の指揮に民間協力者が口を挟むのははっきり言って異常なことである。だが、ライの過去を知ったことと、ナイトメアフレームが出てきた時点でそれに異議を唱える人間は六課の中には存在しなかった。
 だが、ライの指示通りに動こうとした時に入ってきた報告が状況を変えた。

『ロングアーチより各位、現在そちらにガジェットの編隊が向かっています!』

(陽動?………いや先手を打って、空を抑えるつもりか)

 思考は一瞬。即座にライは新しい指示をとばす。

「スターズ1、ライトニング1はヘリのカバーにまわれる位置をキープしつつガジェットの迎撃。スターズ2はこの空域一帯のガジェットを殲滅、その後地下のフォワード達の援護を頼みます」

 その場の皆が頷き、一斉に行動に移る。ライは再び地下へと通じる穴に自らの身を投じた。



ミッドチルダ・地下水路


 ギンガ・ナカジマは焦っていた。
 報告で聞いていたナイトメアフレームを初めて見た彼女は、当初かなりの苦戦を強いられていた。
 彼女の相手をしていた機体はグラスゴーである。ナイトメアとしての性能は低い部類に入るが、対魔導師との戦闘では装備されているAMF装備のスタントンファなどのアドバンテージがあるため初見のギンガにとっては強敵であった。
 しかし、敵グラスゴーの機体数が一機であった為、結果的にはギンガが持ち前の近接戦闘技術であるシューティングアーツを最大限活かし撃墜に成功していた。
 だが、その戦闘を終わらせ、先に進むギンガが広い通路に出たところで更なる驚異がそこに存在していたのだ。

(報告では驚異になるのは近接用の武装だけだと思ったのにッ)

 ギンンガは内心歯噛みした。
 今ギンガが立っているのは広い通路に直角に接する小さめの通路である。そこから少しだけ顔を覗かせ、彼女はその広い通路の置くに鎮座する敵機に視線を向けていた。
 その敵機は大型の砲台をナイトメア4機で支える形でそこに存在していた。その機体はこの閉鎖空間の中ではかなりの有用性を発揮するナイトメアフレーム、『雷光』であった。

(報告にはなかった、あの砲台………簡単に障壁を突破してくるわね……)

 ギンガは敵機を伺いながら、雷光と遭遇した時を思い出す。
 先程ギンガが雷光の鎮座する通路に出た瞬間、雷光は一度その大型砲台であるリニアキャノンを放っていた。その砲撃に咄嗟に反応したギンガは障壁を張りつつ出てきた通路に直様引っ込んだのだ。その際に、砲撃によって舞った破片がギンガの障壁に接触したのだが、その衝撃が生半可なものではなかったのだ。

(直撃を喰らえば、確実に命を落とす。でもここで立ち往生していれば、救援にきた誰かがあれの攻撃を受けるかもしれない)

 一度、敵機についての情報を通信で送ろうとしたのだが、この辺り一帯に展開されているAMFと地下という環境のせいで情報を送れなかったのだ。
 その時点で、彼女の思考からは別ルートで迂回して進むという選択肢は消えていた。

(見たところ、あの砲台以外に目立った武装は無い……なら、後ろに回り込めれば!)

 ギンガは自分が入り込んでいる通路から出ようとする。その際に自分を鼓舞するために相棒に声をかける。

「行くわよ、ブリッツキャリバー!」

 その掛け声とともにギンガは身を乗り出した。

(初撃を見切れさえすれば!)

 雷光に向かって突撃をかけるギンガ。彼女の視線は雷光の砲台に釘づけになっていた。
 雷光のリニアキャノンは冷却の問題で連射ができない。偶然ではあるが、ギンガはその冷却中に突撃したため、このまま行けばギンガが雷光に取り付くのと雷光がリニアキャノンを放つのは前者の方が先であった。
 だが、雷光の装備はそのリニアキャノンだけではなかった。

「なっ!」

 ギンガの口から驚きの声が漏れる。雷光には基部になっている4機のナイトメアがある。その4機にはそれぞれ腕部に機銃が装備されている。その機銃は今まで格納され遠目では見えなかったが、ギンガが近づき迎撃のために展開されたそれが今はハッキリと見ることができた。
 展開された機銃の全てが火を噴く。

「このッ!」

 咄嗟に障壁を展開しギンガはその弾幕を受け止める。幸いにもその機銃の威力はそこまで高いものではなく、ギンガの障壁が突破されることはなかった。
 しかし障壁は突破されることはなかったが、彼女は足を止めてしまった。そして雷光にとってはそれだけで十分であった。

(マズイ、マズイ、マズイ!)

 心臓が早鐘を打ち、今の自分の状況がどれだけ危険なのかを嫌でも把握する。
 次の瞬間、ギンガは雷光の冷却の終了したリニアキャノンが放たれるのを知覚した。その事について思考する前に彼女は自分の死を受け入れそうになった。

「喋らないで。舌を噛む」

「え?」

 そんな時、いきなり彼女のすぐ近くから声が聞こえた。それと同時に彼女は浮遊感を感じる。その数秒後、雷光の放った散弾式の砲弾が破壊の爪痕を残す音が響く。
 ギンガはその音に反射的に目を瞑ってしまう。だが何秒たっても痛みを感じないことに疑問を感じた彼女は恐る恐る目を開ける。
 彼女の視界に入ってきたのは鮮やかな銀の髪に蒼い瞳を持つ、バリアジャケットを身に纏う青年の顔であった。

「救援に来ました。ケガはありますか?」

「え?あ、はい」

 その青年、ライの質問にギンガは気の抜けたような返事をしていた。そして彼女は自分が今、彼に抱きかかえられていることに気付いた。その事に気付いた瞬間彼女は赤面した。ギンガは今自分がいるのが、先程自分が敵機の砲撃をやり過ごしていた通路にいることに気付いた。
 そんな彼女の反応に気付くこともなく、ライは彼女に事務的な言葉を送った。

「迂回ルートのデータを送ります。それに従って貴方は機動六課のフォワードと合流してください」

「機動六課?じゃあ、あなたがスバルの言っていた……」

 ライの言葉にギンガが反応を見せる。ライの方も彼女の口から出てきた知り合いの名前に反応をしてみせる。

「スバル・ナカジマは自分が協力している機動六課のフォワードメンバーですが………貴方は?」

「あ、えっと、私は彼女の姉のギンガ・ナカジマです」

(スバルの……確かに似ている)

 ギンガの顔を改めて観察すると、確かにスバルと似ている部分があった。更に言えばギンガの展開するデバイスがスバルのデバイスと酷似しているため、ライは妙に納得していた。
 因みにライはこの時点でスバルとギンガのデバイスが六課の技術部が作った姉妹機であることを知らなかった。

「っと、話は一旦ここまでです。あのナイトメアは僕が対処するのでギンガさんは合流を」

「私も手伝います!」

 ライの言葉にギンガは反応するが、ライは彼女を納得させるように言う。

「あれの対処よりもレリックの確保が重要です。敵が狙うのならレリックを追う彼女たちだ。だから早く」

「………分かりました、ご武運を」

 一瞬、顔を顰めたがそう言ってギンガは通路の奥に進んでいった。彼女の後ろ姿を見送ったライは思考を雷光の方に向けた。

「蒼月、チューニングシステム起動。パラディン、モードアルビオン。手早く片付ける」

「イエス マイ ロード」
「ラジャー」

 指示を出した瞬間、パラディンがカートリッジを消費しエナジーウイングを展開する。そしてライは身を隠していた通路から飛び出し雷光の方に突っ込む。
 雷光は既に冷却を終えていた為、散弾式砲弾を放ってきた。砲弾内に仕込まれた小型の散弾が壁となってライに迫る。

(面で攻撃してくるのなら、こちらも面で迎撃する)

 パラディンが更にカートリッジを消費する。エナジーウイングの光が濃くなると同時に、その翼から刃状の魔力弾が多数射出される。
 多数の魔力弾と散弾が接触、爆発する。
 刃状の魔力弾を射出すると同時にエナジーウイングは消失していた。これはエナジーウイングに使われている魔力を使用した為、翼が消えるのは当然であった。
 飛行のための推力を失ったライは地面に着地する。
 着地の姿勢からクラウチングスタートのような姿勢になるとライは呟いた。

「アクセル」

 加速魔法を発動し、ライは雷光との距離を詰めた。
 距離を詰めると同時にライは蒼月とパラディンのMVSを展開、起動し雷光の冷却系と機銃の部分を切り裂いた。
 雷光の機能がほぼ停止したのを確認したライはフォワード陣と合流する為に歩みを進めた。
 この時、ライが携帯していたカートリッジのマガジンは蒼月とパラディンに装填されていたものしかなく、予備のマガジンを携帯してはいなかった。因みに予備のマガジンの常時携帯は管理局の許可が必要である。
 パラディンの左右の翼とヴァリスの3つのマガジンには各6発ずつのカートリッジが装填されている。今はギンガを救う際に使ったものと、戦闘に使ったもので左右の翼のカートリッジをそれぞれ半分消費していた。
 その為、カートリッジの消費を抑えるためライは移動に走ることを選んでいた。



ミッドチルダ・市街地


 ライがギンガを助ける少し前、ライ達の近くにいたルーテシアはある通信を受けていた。

『ヘリの方のマテリアルは私たちの方で回収しますので、お嬢様には地下にあるレリックの回収をお願いします』

 通信相手はウーノであった。要件を言い終えた彼女は少し気になったことを尋ねていた。

『お嬢様、騎士ゼストとアギト様のお二人は?お姿が見えませんが』

「今は……別行動」

『お一人で大丈夫ですか?』

「一人じゃないよ………私にはガリューがいるから……」

『失礼しました。では依頼の方をお願いしますが、何か困ったことがあればそちらにいる妹たちにお申し付けください』

 このウーノの言葉に少しルーテシアは疑問を覚えた。今の彼女の言い方では、元々ウーノの妹たちがこの辺りにあらかじめ来ていたことになるのだから。

「……なにか、あったの?」

『その……ここしばらくやることがなかった妹が彼に会いたがりまして、街に出ていた彼を観察しに行ったようで……』

 その答えにルーテシアは一瞬驚いた表情を浮かべる。しかしすぐにいつもの無表情に戻り、理解できたという意味を込めて頷いてみせた。

『それではお嬢様、お気を付けて』

「うん」

 そのやりとりを最後に通信は閉じられる。そしてその場に立っていたルーテシアは両手に着けているグローブ型のデバイス、アスクレピオスに向け言葉を紡いだ。

「行くよ……ガリュー」

 そして彼女は取り戻すことと再開することを望み、その戦場に足を踏み入れた。




















―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




ラ「うっ、ぷ………司会進行のライです」(前回はひどい目にあった)

ティ「今回のリリなの代表のティアナ・ランスターです」

咲「ギアス代表を務めさせていただく、篠崎咲世子と申します」

ティ「早速なんですが、ライさんに質問があるんですけど………大丈夫ですか?」

ラ「なんとか……質問の内容は?」

ティ「今回と今までで、ライさんがデバイスに口頭で指示を出す時と、そうじゃない時がありますよね?あれってどういうことですか?」

ラ「あぁ、あれはチューニングシステムを使用しているかしていないかで変わるんだよ。システム発動時は思考制御に近いことをしているから、デバイスには口頭での指示が必要ないんだ」

ティ「でも、なのはさんとの先頭の時は声を出して操作してましたよね?」

ラ「うん。あの時も本当は声に出す必要はなかったんだけどね。僕が使用できない筈のモノを使うことをアピールすることで、彼女の動揺を誘うのが目的だったから、あの時はあえて声に出したんだよ」

ティ「なるほど」



ラ「咲世子さんからは何かありますか?」

咲「ライ様、実は前々から気になっていたのですが―――」

ラ「?」

咲「ライ様の本命はルルーシュ様とスザク様のどちらなのでしょうか?」

ラ・ティ「「………………は?」」

咲「なにせ、世界を敵に回し、アーニャ様のような恋人まで振り切ってまで、御二人の味方であり続けたのですよ!そこには愛がなければできないに決まっているではないですか!!それに―――――(以下省略)」



ティ「ライさん、彼女を放っておいていいんですか?」

ラ「咲世子さんは天然だから」

ティ「はぁ、そうですか」

ラ「では、次回もこの作品をよろしくお願いします」




 
 

 
後書き

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