魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~
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Chapter6「日常の一コマ」
機動六課の私有地である戦闘訓練専用のシュミレーター。かの有名な教導官高町なのは一等空尉監修の実体を持ったホログラムであり、人材育成には持ってこいというところだ。
今のところは新設された六課のみだが、このシュミレーターの実用性と有用性が証明されれば管理局の人材育成に大きく貢献されるだろう。
そしてそのシュミレーターは今は森林地帯を再現しまさに使用中。勿論使用しているのは六課の実働部隊であるフォワード隊とその隊長達。
幾つかのグループに分かれそれぞれ隊長達から厳しい指導を受けている。
「はぁぁぁ!!」
フォワード隊スターズ分隊センターガードのティアナ・ランスターが勇ましい掛け声を上げ、銃型デバイスを片手に自分の担当の教官にその銃を撃つ。その相手はティアナの攻撃を側転で交わす。
しかし躱し終えた先にもティアナの攻撃が襲う。跳躍しそれを更に躱す。着地すると背後から自分に向け走ってくる気配が感じられる。どうやらティアナは相手が何処に降りるかがわかっていたようだった。その背に近づくと銃身を相手の背中に叩き込む。だかそれは鈍い音と共に双銃の片割れで受け止められた。しかも相手は背を向けたままでた。
距離を取り照準を合わせる。だが…銃を向けた直ぐ目の前には相手の透き通るようなエメラルド色の瞳がティアナの視界に入る。早いと思いながらもとにかく銃を撃つ。だがそれは簡単に右に逸れる事で避けられる。
「!!」
「足がガラ空きだ、ティアナ!」
「しまっ…!」
気付いた時に既に遅そし。相手は一瞬で体を下に持っていき、右足でティアナの足を蹴り態勢を崩させ、うつ伏せに倒れところに一瞬でティアナの背に跨り、武装解除させる。
「痛ぅ……」
今のはいけると思ったいたティアナは再び自分の考えが甘かった事を組み伏せられた状態で思い知らせれる。今日の訓練だけで17回もティアナは自分の後ろにいる教官に組み伏せられた。
自分の腕を拘束する相手の力が緩んだ事を感じて、教官が立ち上がれと言っていのだと悟り、すぐ行動に移る。
「銃をぶつけた時の行動が愚そかだったな。背後からやったとはいえ、敵が考え無しに簡単に背を向けると思うか?あと銃士は相手に受け止められたら長くはそこに留まるな。男女差別じゃないけど特に相手が男だった場合は女の子では力の面では分が悪い事が多いんだ」
「はい」
たった今あった近接戦のティアナの悪い部分が指摘される。ティアナは不満な表情せず教官の指摘を黙々と聞き、次で生かそうと心掛けよとしている。
「銃はあくまでもアウトレンジでの武器……今ティアナに教えてる銃士の為の格闘戦は銃士でも近接戦主流の相手でも対等に戦える事ができる」
銃型の射撃武器は、遠距離・中距離では圧倒的に優位だが、近接戦に持ち込む、または仕掛けられた場合は取り回しの問題からナイフや短刀などにはどうしても遅れを取る。その銃士の弱点を補う為にこの教官はティアナに教えているのだ。
「だがこれはあくまでも補助的な戦闘法だ。銃主体でやるなら自分から仕掛けるのは基本やらない方がいい…ティアナに教えたのはその素養が見えたからなんだ」
「…私ってそんなに器用じゃないですよ?」
「よく言うよ。あの幻術って言う魔法はかなり神経を使うってなのはから聞いたんだ。力に頼らず戦略で相手を征す…それがティアナの戦い方だよな?」
「はい。私は凡人なもので……」
はぁとティアナの卑屈すぎる発言に思わずため息を吐く教官---ルドガー・ウィル・クルスニクは困ったように頭を掻き、自分を過小評価するなと諭す。ティアナの教導を受け持って4日目。
日によって午前と午後をなのはと交互に替えながら今までやってきた。初日で彼女の銃技を見せてもらったが中々な物だった。魔法の補助があるとはいえあの動き回り、攻撃も加えてくるターゲットを殆ど外さずに命中させる精度は彼女年齢からすると優秀な方だとルドガーはティアナを評価している。
この近接戦の対処方を教えているのは彼女が近接戦はそれ程得意ではないと思い、試しにルドガーのカストールの片割れを貸して自分と戦わせてみたが、不慣れな所はやはりあるが思った以上に反撃も防御も銃一筋にしては初心者とは思えなかった。
そう言った意味でルドガーはティアナを誉めたりしてるのが、それでもあまり効き目はなさそうなので、どうした物かと頭を悩ませる。
「…俺はティアナが凡人ではないと思うが。射撃の腕なんてその歳で考えたら凡人なんて言葉は似合わないんじゃないか?」
「ルドガーさんと比べたら全然です……しかもルドガーさんって魔法を一切使ってないんですよね?それと比べたら私なんて……」
「てい」
「きゃっ!」
前触れもなくデコピンを食らわされ、小さい悲鳴をティアナは上げる。
額を抑え、加害者であるルドガーを睨む。
「な、何するんですか!?」
「余りに自虐的な事を言う生徒に喝をいれたのさ」
「いきなり女の子の額を弾いて傷でもできたらどうするですか!?」
「それくらいで傷ができるわけないだろう…。というか管理局員なんてやろうとしてる人間が言うセリフじゃないんじゃないか?」
「うっ…そ、それはそうですが……」
いくら魔法とバリアジャケットがあるとはいえ、怪我をしない訳がない。
「兎にも角もだ……あまり自分を過小評価していたら、伸びるところも伸びないし、仲間に迷惑を掛ける事もあるんだよ」
「そう‥ですね…すみません」
自分だけに悪い影響がでるならまだいいが、それで同じチームのスバル達の足を引っ張る訳には行かない。特に自分はフォワードのブレイン。少しの心情の変化でチームの動向に変化が起きてしまう。日頃スバルに足を引っ張るんじゃないよと口癖のように言っている身からすればよろしくないのだ。
(けど…私は……)
ルドガーに過小評価をするなと注意を受けたティアナだが、やはりそう直ぐには考えを改める事はできない。それにこのある意味ではこの執拗なまでのティアナの自分に対する低評価がここまで彼女を強くさせ、ひたすらめげずにやってこれたはずだ。決してティアナの思っている事全てが間違っている訳ではい。
「はぁ……とりあえずもう一回いくか?」
「当然です。まだいきますよ」
この気持ちと強くなりたいという想いを持って訓練に励めばいつか自分が決して弱くない事にも、強いという事にも気づいてくれる…そして“力”を持つ者に必要な物にも必ず気付くとルドガーはそう信じる。
「ルドガーさ~ん!」
「 ? 」
これからティアナに位置に着けと言おうとしたら自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、そちらを見る。
「あれ、リイン曹長?」
2人の元へ身長30センチ程の銀髪の少女が宙を浮きながら近づいてくる。なんと言うか、大きさこそ違うがその姿をみるとミュゼを思い浮かべるのは仕方のない事なのだろう。
「どうしたんだリイン?今日の昼の調理担当は俺じゃないから要望の物は食えないからな」
「えー!折角トマトソースパスタのソースの量をもう少し増やしてもらおうかとお願いしようと思って…ってそうじゃないですぅ!」
いや、ノリノリで自分の要望を垂れ流してたくせに何否定してるんだと教官と生徒は目の前の小さい少女に内心ツッコミを入れる。
「ルドガーさん、はやてちゃんから何か言われてませんでした?」
「はやてから?」
何やらリインは頬を含ませてルドガーに話している。あと目も少々吊り上がっている事から怒っているのか。顎に手をやりリインが言うはやてが自分に言った事を思い出そうと頭を使う。
「あっ……」
ようやく思い出した。それは昨日の夜の事だった。風呂上がりに販売機でコーヒーを飲んでいる時にはやてから午前11時に部隊長室に来るように言われていた。なんでもミッドに飛ばされて日が浅いルドガーにミッドの一般常識及び文字の読み取りを教えるとの事だった。
「しまった!ごめん、リイン!」
「ぶー!その言葉は私にじゃなくはやてちゃんに言う事だと思いますです!」
あたふたしながら、部隊長室に向かうとするルドガー。
途中ティアナに何も言っていない事に気付き振り返り距離があるので大声で話す。
「悪いティアナ!完全に俺のミスだ!残りの時間は軽く自主練でもしてくれ!本当にすまない!」
手を振り今度こそ走り出す。そんなルドガーの背中を見ているティアナは普段なら顔には出さずに少なからず憤慨するところだが、ルドガーが本当に申し訳なく思っているのが伝わってくるため責めるきにはなれない。
「どうですかぁ、ルドガーさんはティアナにとってはいい教官さんですかぁ?」
「まだわからないです…けどあの人が一生懸命私にものを教えてくれてるのはわかります」
「ってそれってもうルドガーさんの事を気に入ってるって言ってますですよ?」
「えっ!?」
小さい上官に指摘されてその事に気づくティアナ。その反応を見たリインは人間って自分では自覚していない事をあっさり口にしてしまうのだなと、目の前で狼狽している部下を見て実感するのであった。
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「たく、ルドガー何私との約束忘れてるんよ」
急いで部隊長室に向かい、ドアを開くとはやてが自分の椅子に座り机に両肘を着き手の上に顎を乗せ、最高の笑顔をルドガーに送っていた。……無論その目は笑ってはいなかった。
「本当にごめん……何も言えないな」
「はぁー別にそこまで怒ってないよー。ただ時間が時間やし、『感激!八神はやてとドキドキ★プライベートレッスン♪』はまたの機会やな」
「なんだよ、その受けたくなくなるような痛い教室名は?」
というかはやてが自分に教えてくれるつもりだったのだと今になって気付いた。部隊長の仕事は忙しいなどと言っていたのでてっきりリイン辺りが教えてくれるのかと思っていたので、少しだけ驚いた。
「失礼やな、こんな美少女と勉強会できるって言ったら普通泣いて喜ぶのが普通なんやないの?」
「そう言った発言で自分の株を下げてるじゃないのか?ったく黙ってたらそこそこは行けるはずなのになぁ」
「ちょ、そこそこって何や!そこそこって!」
「さぁ?他人に乗り移って自分を見れたらいいのにな」
いつの間にか立場が逆転しているような気がするが、これはこれで結果オーライなのだと思う。
後は仕上げに……
「ルドガーなんてここに落ちてこんで、無人の管理外世界に落ちてればよかったんやー!」
「悪かったって。お詫びにデザートで最高の一品をはやてだけに出してやるからさ」
「ホンマか!?」
物でご機嫌を取ればこれで丸くすむという事だ。これは男女問わず当てはまる。
ユリウスも実際トマトさえ食べさせておけば大抵機嫌が取れていた。その事をユリウス自身も俺にトマトを食わせておけば機嫌取れるって思っているのだろうとルドガーに告げていたが、それで機嫌が取れている事も認めていた。
「しゃーないなぁ、今回はそれでルドガーの失礼な発言は不問にしたる」
「…チョロ甘だな」
「ん?なんか言ったかぁ?」
「何も言ってないよ。気のせいじゃないのか?」
だが同時にこんな何気ないひとときが人間にとって幸せなのだとルドガーはあの旅の中で知る事ができた。だから彼は大切な存在であるエルに生きて自分の分までたくさんの幸せを感じてもらいたかった。未来のルドガー・ウィル・クルスニクの“娘”エル・メル・マータとしてではなく、
ルドガー・ウィル・クルスニクの“相棒”エル・メル・マータとして。ルドガーがエルに願う事はただそれだけだ。
後書き
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