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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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出会い
  Trick05_そのほうが面白そうだからです



風紀委員(ジャッジメント)って、ほ、ほんとですか!?」

御坂と同じく口をパクパクと開閉させながら質問する佐天が聞いた。

「はい。今日の昼間に手続きが終わり、配属先のみなさんに挨拶しようと
 来ました。正式な配属は明日からになります」

「でも、どうして風紀委員になったんです? 西折さんの学校であれば、正式でなくても
 風紀委員と同じ扱いを受けると思いますよ」

「初春さんの言うことはもっともです。
 ですが、私の学校の知名度はあまり高くありません。
 現に今、初春さん達が調べていたじゃないですか。

 不良に対しては“風紀委員”という看板が警告にもなるので
 そちらの方が便利なんですよ」

「あ~、なるほど~」


会話が終ったところに、奥の部屋からセミロングの髪でメガネをかけた女性が出てきた。

「あら? もしかして君が西折信乃くん?」

「はい、西折信乃です。明日からこちらの支部でお世話になるということで挨拶に。
 よろしくお願いします」

「丁度、君の資料を見ていたのよ。私は"固法 美偉"(このり みい)よ。
 よろしくね。何か分からないことがあったら遠慮しないで聞いてね」

固法は笑顔を浮かべて、二人は握手をした。
固法は白井と初春の風紀委員の先輩にあたり、特に白井には新人研修からお世話になった
せいで今でも頭が上がらない存在である。

「そういえば昨日は色々あって、わたくし達も挨拶がまだでしたの。
 わたくしは白井黒子と申します。昨日はいろいろとありがとうございましたわ」

「私は初春飾利です。よろしくお願いします」

「わわわ私は佐天涙子です! 初春とは親友です! 風紀委員じゃないですけど
 よろしくおおおお願いします!」

「よろしくお願いします。」

笑顔であいさつを返した西折。
その後に唯一、自己紹介をしていない御坂の方を向いて、

「御坂さんも風紀委員だったとは少し驚きました。学園都市第3位が風紀委員なら
 名前を聞いただけで逃げる人が多そうですね」

「女の子に相手が逃げるとか失礼なこと言わないでよ。
 それに私は風紀委員じゃないわよ」

「そうなんですか? 昨日の事件を見てると風紀委員とあまり変わらないように
 見えましたけど」

「お姉様は風紀委員ではありませんの。ですがよくこちらの方に出入りしてますの。
 ・・勝手に」

「昨日の事件と言えば西折くん、あなたの活躍についての資料がさっき警備員から
 送られてきてるから読ませてもらったわよ」

固法は手に持った紙束をみんなが見えるようにテーブルの上に置いた。

西折以外の4人は覗き込むようにテーブルの周りに集まる。

「資料を見る限りだけど西折くん、あなたは発火能力者(パイロキネシスト)
 みたいね」

「固法先輩、それはおかしいですの。西折さんは空間移動者(テレポーター)
 ですわよ。昨日の事件でも2回ほど能力を見せてましたの。」

「え? おかしいわね。逮捕された誘拐犯は体が動かなくなったときに炎を見たとか、
 車の前に炎の壁を出して逃げるのを邪魔された、って言っているみたいよ」

固法が資料を指しながら説明した。確かに同じことが書かれている。

「どういうことですの西折さん? どちらがあなたの能力ですの?」

「う~ん・・では、ここはあえて黙秘権を行使します」

「・・なぜですの?」

「そのほうが面白そうだからです」

ズコッ

ずっこける5人。

「何言ってますの!? 変なことを言ってないで教えてくださいませんこと!?」

「そうですよ、急に変なこと言わないでください!」

白井と初春がすぐさま反論してきた。

「では、問題として出します。私の能力はいったい何でしょう?

 解ったら言ってください。答え合わせをします。ちなみに、正当な理由や
 証拠も言ってくださいね。

 あと、答えられるのは1人1回までです。外れたらその人には二度と
 答えを教えないので慎重に考えてください」

「なんで問題にするんですか? 同じ風紀委員なら教えてくれてもいいじゃないですか」

少し不満げに言う初春。西折はさらに楽しそうな笑顔で返す。

「さっきも言ったじゃないですか。面白そうだからです。

 まあ、正当な理由を付けるとしたらスキルアウトに能力者がいた場合、
 相手の能力を瞬時に見極めて対処するための訓練、といったところです」

「それはいい考えね。白井さんと初春さん、西折くんの能力を何かを考えてみて。
 私は能力を実際に見てないから、もっと後に答えるわ」

固法も意見に賛同したようで、2人に問題を解くように言った。

「いえ、答えるのはいつでもいいですよ。お二人も焦らずに考えてください。
 今日は挨拶に来ただけなのでこれで失礼させていただきます。
 それでは明日からよろしくお願いしますね」

そう言って西折は部屋から出て行った。



「最後にすごいことを言って出て行きましたね、白井さん。 ・・白井さん?」

苦笑していた初春が白井を見ると、俯いてプルプルと肩を震わせていた。
そしていきなり顔をあげて叫ぶように言った。

「固法先輩! 今日の業務は終わりでいいですわね! わたくしは西折さんを
 追いかけてもっと話を聞き出してきますの! 風紀委員の名にかけて絶対に正解を
 答えてやりますわ!!」

西折の≪面白い≫発言で頭にキていた。
ちなみに白井の脳内では、勝手に変換されて
≪面白い、実に面白い≫と某変人物理学者のように言う信乃になっていた。

白井は恐い顔をして部屋を飛び出て行った。

「待ってください白井さん! 固法先輩お疲れ様です!」

「黒子ちょっと待ちなさいよ!」

「固法先輩、失礼しました~!」

続くように初春、御坂、佐天も追いかけて行く。

「まったく・・西折くんは丁寧で大人しそうな印象があったけど、
 どこかトラブルメーカーみたいなところがあるわね・・

 なんだか御坂さんに似ている気がするわ」

呆れたように4人が出て行ったドアを見つめる固法だった。








「お待ちください西折さん! 逃がしませんの!!」

第177支部を出てすぐに西折を見つけることができた。
白井はその前へとテレポートをして西折の足を止めさせた。

「どうしたんですか白井さん? まさか! もう答えがわかったのですか!」

「あ? いいえ・・その」

意外な返しに白井は戸惑った。
問題に答えがまだ出てなく、そのヒントを引き出そうとして追ってきたのだが、

「いやすごいですねさすがですね私は自分の能力はすぐにはバレないと思ったの
 ですけどはやり現役で風紀委員というみなさんの治安を守るひとは違いますね
 私も見習ってもっと修行しないいけませんね白井さんのような頭脳明晰な人に
 なれるよ努力を「あの!」 ・・どうしました?」

西折の息継ぎもしないしゃべりを遮った白井。表情は怒りで引きつっている。
逆に西折は笑顔を浮かべている。しかしその笑顔には悪戯を感じさせ、
白井をからかってそう言ったことは明らかだ。

「私が解けていないことを知っていてそのようなことを言ってますの?
 あなた・・意外と性格が悪いですわね・・」

「なんのことでしょうか? 私は素直に白井さんに感心してるだけですよ。
 それに『いい性格している』と言われた事はありますよ」

白井の怒りの言葉もどこ吹く風。簡単に受け流す西折に再び怒りをぶつけようとしたが

「黒子、ちょっと待ちなさいよ! 私達も一緒に行くわ!」

御坂が声を出して初春と佐天も一緒に西折と白井に走ってきた。

白井はタイミングを逃したせいか、苦虫をつぶした顔をして御坂を見ていた。

「どうしたんですか3人とも? 私に何か用事ですか?」

「黒子が西折さんの能力を聞き出「余計なことは言う必要はありませんの初春!!」
 ・・何怒っているんですか白井さん?」

「なんでもありませんわ! お姉様たちはどうして追いかけてきたのですか!?」

御坂達(正確には初春だけ)へと八つ当たりのように声を荒らげる白井。

「黒子、落ち着きなさいよ。私達も信乃にーちゃんの話を聞こうと思って来たのよ」

「はい! 西折さんのことをもっと知りたくって!」

「佐天さん、それじゃ能力調べじゃなくて西折さん調べになってますよ」

「いや、その!? ちょっと言い間違えただけじゃない!?」
(しまった! また変なこと言っちゃった!)

内心言い間違いに気づかれて焦る佐天。

「とにかく歩きながら話しましょう。道路で立ち止まっては他の人の迷惑になりますし」

「そそそうですね。西折さんの言うとおりです! 
 白井さんも行きましょう!ね! ね!」

「なんだか変ですよ佐天さん。ほら、白井さんも行きましょう。
 怒っていても仕方ないですよ」

西折の提案で歩き出す5人。白井も睨みながら渋々ついてきた。



「それにしても信乃にーちゃん、能力「信乃にーちゃんって言わない」・・」

西折は呆れた顔をした。

「さっきも言いましたが、常盤台中学のお嬢様がそんな言葉使いは良くないと
 思います。ですからその呼び方は訂正してください」

「別にいいじゃない。それに、西折って呼ぶのはいやよ。
 雪姉ちゃんだって西折なのよ!」

“雪姉ちゃん”という知らない人物が話に出てきて初春と佐天は頭に「?」を浮かべた。
しかし2人はそのまま話を続ける。

「確かにそうですが、でも男性に対しては下の名前で呼ばない方がいいですよ。
 周りの方が勘違いしますし」

「気にすることじゃないでしょ。親戚、というより兄妹みたいなものでしょ!
 だから、信乃、一応≪さん≫もつけて≪信乃さん≫って
 読んであげるわよ!」

「なぜか上から目線ですね・・」

「じゃあ、私も≪信乃さん≫って呼んでいいですか!?」

話に入ってきたのは佐天だ。

「///私も≪信乃さん≫って呼びたいですっ////」

「佐天さん、また顔が赤いですよ」

「いやでも、男の人を名前で呼ぶのは・・」

「でも確かに名前で呼ぶ方が短いですし、今から風紀委員として
 仲間になるのでしたらその方がいいですの」

「・・白井さん、笑顔が黒いです・・私がふざけた事を根に持ってるんですか?」

「なんのことかしら? 別にわたくしはあなたが嫌がることがしたいというわけでは
 ありませんの。一矢報いたと思っていませんの。お~ほっほっほっ!」

「明らかに悪意を感じますね・・でも、風紀委員で仲間になるのでしたら
 呼びやすい方がいいですね! 私も名前の方で呼んでいいですか?」

初春も3人に便乗してきた。

「・・・もう好きにしてください・・」

西折、あらためて信乃は諦めたようにつぶやいて呼ばれ方を渋々了承した。



しばらく歩いて雑談をしていた5人だが、

「そういえば、さっき御坂さんが言っていた“雪姉ちゃん”とは誰ですか?
 お二人の共通の知り合いみたいですが」

初春が話の途中にで出た疑問を聞いた。

「それはですね「西折のおにーちゃーん~!!」」

信乃が答えようとしたときに遠くから聞こえた声で遮られた。
その声の先には赤い髪をした少女がいた。

「あれ、あの女の子は昨日の誘拐されていた?」

誘拐から救出した少女。名前は氏神ジュディス。

御坂が昨日のことを思い出している間に少女が走って近づいてきて

「西折のおにーちゃーーん~~!!!」

勢いをそのままに信乃に抱きついてきた。

「グホッ!」

その抱きつき見事に鳩尾に直撃した。


つづく

 
 

 
後書き
作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。

皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。 
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