神々の黄昏
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第一幕その十二
第一幕その十二
「貴方はいいのか?」
「私か」
「そうだ。貴方はいいのか」
「私はこの家の者だがそれに入る資格はない」
「何故なのだ?それは」
「私には高貴な血は流れてはいない」
だからだというのである。
「グンターの母から生まれたがそれは普通に生まれたのではないのだ」
「?どういうことなのだ?」
「だが種をその中に宿させて生まれただけなのだ」
そうだというのである。
「アルプの種をな」
「アルプの種を」
「ハーゲンはアルベリヒの子なのだ」
ここでグンターがジークフリートに話してきた。
「彼は愛を断ち子供を作れなくなったが」
「それでもなのか」
「その種だけを我が母に宿させてもらい」
「私が生まれた」
ハーゲンも言ってきた。
「無限の財宝と共にだ」
「そうだったのか」
「そうだ。だから私はその誓いに加わることはできない」
こう言うのである。
「悪いがな」
「そんなことを気にすることはないのだがな」
「私もそう思うのだが」
ジークフリートだけでなくグンターも言うのだった。
「しかしだ。それでもそう言うからな」
「仕方ないか」
「何分気難しい男でな」
ハーゲンをこう評するグンターだった。
「ああ言ったらもう引かない。放っておこう」
「そうか」
「それではだ」
話が戻ってきた。
「いいのだな、それで」
「今から行く」
グンターに対して答えた。
「それではだ」
「うむ、吉報を待っている」
「船で岩屋に急ぎ」
そのことをもう頭の中に入れていた。
「そのうえでだ」
「行ってくれるか」
グンターはジークフリートに言い終えるとハーゲンに顔を戻して告げた。
「それでは私はだ」
「残らないのか?この屋敷に」
「ジークフリートと共に行く」
そうするというのである。
「私が夫となるのだからな」
「そうか。なら行くといい」
「それではな。留守を頼む」
「わかった、ではだ」
こうして二人は屋敷を後にした。残ったのはグートルーネとハーゲンだけだった。しかしそのグートルーネもハーゲンに顔を戻して声をかけてきた。
「ハーゲン、私もこれで」
「休むのだな」
「ええ、お兄様とあの方が戻って来られるまで」
もうジークフリートに恍惚となっていた。
「それじゃあ」
「休むといい」
こう告げてグートルーネを見送る。ハーゲンは一人になるとだった。
「ここで屋敷を守りや方に迫る敵を防ぐ」
それが彼の仕事である。
「ギービヒの息子は嵐に送られ妻を求めに旅に行く。舵を取るのは無双の勇士、危険を恐れずに立ち向かう」
グンターとジークフリートのことである。
「グンターの為に自分の妻をこのラインに連れて来てそして」
言っているうちに言葉が強くなる。
「私に指輪を。さあその為に進むのだ、ニーベルングの息子である私の為にだ」
こう呟きながら自分の椅子に座る。そのうえで瞑想に入る。彼は今不気味な闇の中にいた。
ブリュンヒルテは今は岩屋に一人いた。そこに誰かが来た。
「あれは」
天から馬を駆って来る。それは彼女がかつてよく知った者だった。
「ワルトラウテ」
「姉さん、まだここにいたのね」
「懐かしいわね」
ワルトラウテを見て懐かしさを込めた笑顔を見せた。
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