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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第1部 転生者のプロローグ
  第1話 カミテンには気をつけろ!

 
前書き
こんな転生もありかな?と 

 
 深夜、仕事から帰り疲れ切ってベッドで寝たはずが、いつの間にかコミケ会場の開場間近の列もかくやと言う程の行列に並んでいた。

 な………、何を言っているのかわかんねーと思うが、「オレ」にもわけわかんねぇ。

 そう思っていたら、行列の脇を係員の人?が大声で説明しながら歩いて来る。
 ?がついたのはその係員の頭に角があったからだ。

「あ~。あなた方は死にました~~~」

 はぁ? 何を言ってやがる。

「納得いく人もいかない人もいると思いますが、これは事実ですので話を続けます」

 いあいあ、何を………。

「ぶっちゃけ、皆様には転生してもらいます。いわゆるカミテンっていうやつですね。ちなみにどうしても納得いかない人はそのまま消滅してください。」

 はぁ?!

 とか思ったら、所々で並んでいる人が消えていく。これはつまり納得がいかない人が消滅したと言うことなんだろう。
 ふと隣の人を見たら頭の上に輪っかが浮かんでいる。
 きっと、「オレ」の上にも浮かんでいるんだろう。

 ………「ドラゴン・ボール」かよ!
 そういや、あの世界は地獄の住人は輪っかをつけてるか鬼だったな。

「ちなみに現在、五月蠅くならないように皆さん話せなくなっていますのでご了承下さい。それでは引き続き説明させていただきます………」

 丁寧に説明されたことを要約すると今から「オレ」達はいわゆるゲームやアニメ、小説と言った創作物の世界へと転生するらしい。もっとも世界そのものではなくあくまでもよく似た世界なんだそうだ。

 で、その前にそれぞれ魂の(カルマ)に応じた転生特典を「オレ」達はもらえるようだ。
 ちなみにデフォルトとして、その創作物の世界の主人公らと同じ種族に転生するらしいが、その世界に別の種族がいる場合、確率は低いがランダムでその別の種族に転生する可能性もあるそうだ。一応、特典でその辺は選択は可能みたいだ。

 例に挙げられた「ドラゴン・ボール」の世界だと7割でサイヤ人(ハーフ含む)、2割5分で地球人、4分でナメック星人、1分でその他らしい。

 つーか、転生するとしても「ドラゴン・ボール」とか死亡フラグ満載の世界は勘弁して欲しい………。



 そう何故か「転生すること」について疑問に思わず、今後の転生プランを積極的に真剣に考えていると列が進み、転生会場内に入っていく。

 ちなみに転生会場の外観はまんま東京国際展示場、いわゆる東京ビッグサイトでした。
 何故そんな表現をしたかというと「オレ」は20代後半にさしかかるいわゆるオタリーマンで、大学の頃から夏冬のコミケには毎回欠かさず買い専で参加しているオタクだからだ。
 どう見てもそちら方面が好きな神さまがパクッたようにしか見えません。





 入口でカタログをもらい、転生会場内を進んで逝く。

 おなじみの東館に入るとコミケの3日目のように人がいっぱいだ。

 どう見てもコミケ会場にしか見えん。

 コミケで言う壁サークルらしき位置にはNARUTOのうちは3人(サスケ、イタチ、マダラ)のポスターがでかでかと貼ってあったり、型月のAUOと英霊エミヤと式のポスターが貼ってあったりする。
 ちなみに特典は自分の(カルマ)と引き替えで特典の説明書である小冊子をもらうと魂に特典が付与されるらしい。もらったカタログにはそう書いてある。が、その小冊子がどう見ても同人誌---だってある「王の財宝」の小冊子の表紙は、AUOのバックから宝具を打ち出すシーンなんだぜ---にしか見えず、特典(の小冊子)=同人誌、(カルマ)=お金ということなんだろう。

 尚先程の壁サークルをカタログで確認するとそれぞれ「写輪眼」やら「王の財宝」やら「無限の剣製」やら「直死の魔眼」の特典がもらえるみたいだ。
 ………、人気があるわけだ。

 めだかボックスの球磨川さんや安心院さんがでかでかと貼ってあるところは全力でスルーした。
 この辺もやはり人気があるようで、その列も会場外周へと続いている。

 なお一番列が長そうなのは「ニコポ・ナデポ」みたいだ。


 ちなみに「オレ」の持つ(カルマ)は1万ポイントで、先程出していた人気のある特典はだいたい3千~5千ぐらいだった。
 「オレ」の1万ポイントが多いのか少ないかはわからないが、チート過ぎて困るなんてことはできないポイントだというのは確かだ。
 
 で、会場をよくよく見渡すとコミケで言う島サークルにも同じ特典がたくさんあった。そして同じ特典でも必要な(カルマ)に振り幅があった。ぶっちゃけ、「王の財宝」は百~3万ポイントも振り幅がある。

 なんか意味があるのかなぁ? と担当というか売り子に聞くと要領を得ない返事しか返ってこない。
 ちなみにこの人らにも角が2本頭に生えている。
 どう見ても鬼ですね。
 なるほど、お仕事なんですか。大変ですね。





 で、とにかく足を使って「王の財宝」の説明を幾つか聞いてみたらとんでもないことがわかった。

 なんと同じ特典といってもそれぞれ内容がまったく違う。

 というか百ポイントの「王の財宝」の特典は悲惨すぎる………。
 転生後、転生先の世界に行く前に「王の財宝」の中身を集めに行かされるみたいだ。

 ………なんて無理ゲー。AUOを追体験とかないわ!

 そこそこ高い「王の財宝」は、「財宝の中身が無い」とか「前世の自分の宝が中身」とか、使いようによってはかなり使えそうな感じだが、アニメやゲームのように宝具を打ち出したいと考えて特典を取ったら、バッタもんをつかまされたとしか思えんだろう。


 なんか、碌でもないな………。

 これはよくよく考えると、カミテンの中でも「転生者が新しい人生で七転八倒するのを神さま達が娯楽として楽しんでいる」パターンなんじゃないか?

 というか、今の今までこの辺についてまったく考えつかなかったのも、「思考に何らかのバイアスがかかっているのがお約束」と考えれば肯ける。

 ナニソレコワイ。





 ………うん、気づけて良かったとポジティブに考えよう。

 そうなるとより安全に快適に転生人生を送るためにはどうすればいいかを考えよう。





 で、人混みの多い東館から逃げ、コミケで言う西館企業ブースにあたる場所に赴いた。
 一応カタログによるとこの辺りで生まれや人種の選択できる特典があるはずだが、まるで3日目の15時以降の企業ブースかのごとく閑散としている。

 ………もしや、重要なモノは売り切れたか?







 セーフでした。

 どうやら東館に最初に着く流れのせいで、そちらの派手な特典に目を奪われ、ここまで来るのがまれらしい。

 で、まず『今と同じ性別で両親から容姿その他の性質を受け継ぐ』5千ポイントを購入。

 うん、これを購入して愕然とした。
 転生先の性別は基本ランダムなのだと。
 下手するとTS(トランス・セクシャル)の可能性が5割だったんだと!

 精神は男性、身体は女性とか、フィクションならともかく、自分の身には起こって欲しくない。

 しかもランダムで髪の毛の色や瞳の色が決まるとか、予想通りなら悪意ある神さまによって銀髪オッドアイが大量生産される可能性が「大」だ。


 ランダム要素が多すぎて酷いスタートの転生人生になりそうだと、とにかくランダム要素を排除しようとそれらしい特典を捜して西館を練り歩く。

 で、転生先を確定する特典なんだが、どれもこれも高かった。

 どう考えても悪意を感じる。

 最初に考えたのはとにかくバトルものは避けようということだった。

 そうなると現代物の学園物が一番良い。
 とりわけスポーツ物が最高だ。
 野球マンガの世界でサッカーをするとか、サッカーマンガの世界でバスケをするとかすれば、いちモブとして生きていけるだろう。
 「To LOVEる」とかのラブコメも良いけど、実は主人公はもちろんその友人やモブですらけっこう酷い目に遭うからな。そう考えるといまいちだ。
 しかし、さっきの特典を取らずに「To LOVEる」の世界に転生して、TSとかさせられ、あまつさえ、攻略ヒロインとかに加えられたら鬱過ぎるな。

 まぁ、どちらにしろスポーツやラブコメ主体の作品群は転生先に指定するのは無理だ。ポイントが高すぎる。

 ちなみに人類滅亡寸前の作品群(マブラブとかガンパレとか)とか、明らかに文化文明レベルが低い作品群(恋姫とか)は必要ポイントが低かったが、死亡フラグ満載過ぎて選ぶ気にすらならん。
 あと、死亡フラグ満載や基本戦争しまくりの作品群もポイントが低いのは確認した。

 『原作知識補完(3千)』か、RPG系(西館1階がそうだった)の『ステータス閲覧(2千)』とか、地味に欲しいモノはたくさんあったが、結局(カルマ)が足りなくて断念した。

 結局、『初期言語放棄(その世界の言語を転生時から理解するというデフォルトの特典の放棄)』というマイナスの特典を得ることによって(カルマ)を増やし、『他の転生者無し』『努力すれば結果がついてくる才能(小)』を購入した。





 そして、(カルマ)が0になった瞬間足下に穴が空き、飲み込まれた。



 最後もテンプレなのね………。 
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