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八条学園怪異譚

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第三十話 神社の巫女その七

「だからなのよ」
「塩水ですか」
「それも念入りにね」
 茉莉也は真剣そのものの顔だった、その顔で二人に話していく。
「そうしないと何があるかわからないわよ」
「ううん、何かシリアスけれど」
「鏡も怖いんですね」
「そうよ、鏡が泉の候補地だったことあったでしょ」
「はい、ありました」
「実際に」
 二人もこのことを話す、あの鏡のことをだ。
「あの鏡もそうなんですね」
「異世界との境目ってことがあるんですね」
「そうなの。それが泉ならいいわ」
 それなら、というのだ。だがなのだ。
「魔界とかだったらまずいわよ。魔界っていっても色々でね」
「地獄みたいなところもあるんですか」
「漫画みたいに」
「あるわよ。魔界はいい場所もあるけれどね」
「悪い場所もあるんですね」
「魔界もそうなんですか」
「こっちの世界でも桜の並木道みたいなところもあればアマゾンみたいな場所もあるでしょ」
 茉莉也は二人にこう例えて話す。
「そういうことなのよ」
「ああ、そういうことですか」
「同じ世界でもなんですね」
「そうよ、いい場所と悪い場所があるでしょ」
 納得した二人にさらに話す。
「その世界の何処につながっているかはわからないのよ。ましてこちらに引き摺り込もうなんてする奴が連れて行く場所なんてね」
「悪い場所に決まってますね」
「絶対にですよね」
「そうよ、それ以外に有り得ないから」
 悪意のある存在が連れて行く場所ならというのだ。
「そういうこともあるからね」
「鏡は危険なんですね」
「使う際にはちゃんと洗わないと」
 二人もその鏡を見て応える。丸い古風な鏡である。
 聖花はその鏡を見て言うのだった。
「この鏡って本来は神社の中に飾るものですか?」
「ええ、形を見たらね」
 それは間違いないというのだ。
「そうね」
「ですよね、これは」
「ただ、本当に古いわね」 
 茉莉也の今の言葉はある意味感心しているものだった。
「この鏡だと化けていても映せば正体が見えるかも知れないわね」
「ゲームでよくありますね」
 愛実は茉莉也の言葉を聞いてこう返した。
「モンスターの正体を暴くとか」
「ええ、さっきも言ったけれど吸血鬼た幽霊は鏡に姿が映らないのよ」
 実体がないからだ、これは日下部もである。
「あんた達も幽霊になったら映らなくなるわよ」
「そうなりますよね、やっぱり」
「死んだら」
「人間は絶対に死ぬわ」 
 このことは逃れられない、生ある者は必ず死ぬ。それこそ誰でもだ。
「何かうちの大学仙人みたいな教授いるけれどね」
「悪魔博士のことよね」
「絶対にそうよね」
 二人にはすぐにわかった、あの博士以外有り得なかった。
「百五十歳超えてるかも知れないし」
「それを考えたらね」
「本当に一体お幾つなのかしら」
「江戸時代生まれじゃないわよね」
「幾ら何でもそれはないでしょ」
「けれどあの博士だけはわからないわよ」
 二人で顔を見合わせて話す。
「丹薬だったわよね」
「ええ、仙人になれるお薬ね」
「それも飲んでおられるから」
 この時点で普通の人間ではなかった。 
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