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めだかボックス 〜From despair to hope 〜

作者:じーくw
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第19箱 壊れかけた心






























劉一が目が覚ますと……。

そこは、見知らぬ天井だった。

「あ…あれ…? ここ…は?」

どうやら、ベッドで寝かされていたようだ。

劉一はゆっくりと体を起こした。

そして、あたりを見渡す、

どうやら、そこは小さな部屋だった。

ベッドがあり…そして 頑丈そうな扉… 監視カメラが取り付けられていた。

そして豪華……と思える部屋の内装。

連想するにVIP用の病室?……な気がする。


「…ここは…一体… 僕は…どうなって… ッツ…」


劉一はズキリとなった頭を抑える…。

その痛みはまるで脳髄の奥から生まれてくるようだった。


「あっ……ああっ……」


そして…鮮明に記憶が戻ってきた。

見知らぬ男達に捕まり…

そして…その男達を…

「う…うあ…」

劉一はベッドから転がり落ちるとそのまま、膝をつき…

口元に手を押さえる…


「僕…僕は… 人を…コロ… うわあああああ!!!」


そして、完全にあの日の夜を思い出すと同時に、彼は叫んだ…。

自分がしてしまった取り返しのつかない出来事を…。

この手に、この感覚に残っているあの出来事を……思い出しながら。




“ガチャ…”





そんな時だ、扉がゆっくりと開いていく…。


「目が覚めましたか………。」


老人がゆっくりとした足取りで…劉一に近づいていった。


「うわああああああ!」


劉一はそれに気付かず、唯々…叫んでいた…

その悲鳴は絶望に彩られていた。

彼が……この世界に来る前のような……。


















そしてしばらくして…

叫ぶ声も、気力も無くなった時。


「落ち着いたかね…?」


その老人は…劉一に語りかけた。

劉一は目を真っ赤にし… まだ体が微かに震えていたが…頷いた。

「それは良かった。君を捕まえていた男達はね… 私の学園でいた関係者でね… 情報を持ち出し逃げ出した。」

そう言いながら劉一の肩を掴む。

「君が…止めてくれなかったら、君の様に何人も犠牲が出ていたんだよ… 彼らは過激派だったからな。君が…それを止めてくれたんだ。気に病むことは無い。」

そう言い肩を離す。

「そ……その…人たちは… どうなったんです……か…?」

聞きたくない。と内心では思ってしまう。

でも、受け止めなければならない事だったから。

何より、聞きたくないと言う気持ちと同じくらい強く、

聞か無ければならないと言う気持ちもあったんだ。


「現在緊急集中治療室だよ。命に別状は無いとはっきりとは、まだ言えないがね。」


まだ、命はある。…この言葉で多少は気が軽くなったかと、老人は思ったのだが。

まだ劉一の表情は暗いままだった。


「そう…ですか…」

生気の無い表情のままそう言っていた。

「あまり気にすることは無い、とはいっても今じゃ無理のようだね… これからどうするんだい? 彼らの処理は我々が執り行った。起こったことは世間には知られていないよ。唯…君が行方不明になっていることだけを除いてはだけどね。」

そう言うとすっと立ち上がる。

「行方…不明?」

劉一は首を傾げながら聞いた。

「うむ。悪いとは思ったが状況が状況… 君とあの男達は秘密裏に処理したんだ。まだ君の家族にも伝えてはいない。家に帰ることは可能だ。但し条件はあるがね。」



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どうやら条件とは、将来…箱庭学園へ入学して欲しいとの事だった。

そして、入学の手続きも問題ないと説明をしてくれた。

「どうかな?入学金などは全て免除の特待生として迎えよう、学園に入学してくれるのならば可能な限り君の要望にも答えるが…」

それは、元々身寄りの無い劉一にとっては最高の待遇だろう。

人吉家に世話になっていることは既に不知火は調査済みだった。

故にそういう待遇にすることで、入学を促す策だった。

だが…

「……僕は 人吉家にはもどりません。 お願いが……あります。僕を… 別の施設に…入れてください…その要望を…入れてくれませんか…?そしたら、僕……どこにだって……。」

劉一は暗い表情でそう話す。

「…それは容易い事です。 ですが、なぜ戻らないのですか?人吉家は君の家族同様なのでしょう?」

不知火は思っても無かったのか、少し驚きながらそう聞く…。

「…………。」

暫く劉一は涙を眼にためながら… 目を閉じていた。

そして、口を開く。

「…あの人たちは、僕に光をくれた… 毎日毎日… 暗闇を彷徨ってた僕に… いや… 暗闇から抜け出れるか出れないかの瀬戸際に…あの人たちが手を差し伸べてくれたんだ。…それなのに…僕は…闇に…心の闇(ブラックボックス)に囚われて…暴走してしまったんだ… あの人たちの…傍にいる資格なんか無いよ…僕は…」

涙が止まらない…

命を奪おうとした… その事に深く…傷ついているようだ。

例え、彼らが助かったとしても…もはや 関係ないだろう。

奪おうとした心には変わりは無いのだから…

この世界に来て… 毎日が幸せだった。

彼は…精神状態…で変化する異常性…

あの時は… そう言う精神状態だったのだろう。全てを壊したいっていう…

それは、異常性(アブノーマル)というより過負荷(マイナス)に近しいものなのかもしれなかった。













不知火は今はそっとしておくのが得策だと考えていた。

(彼の異常性は明らかに群を抜いていますが… それでも基本(ベース)は子供… 心が壊れてしまっては元も子もありませんね…)

「わかりました… 今の君に必要なのは心のケアです。本来ケアが必要な子に直接心に傷があると言うものではありませんが… 君は良く分かっているみたいですね。 心の傷は…直ぐには治りません。時間をかけるといいでしょう。施設の方は喜んで提供させてもらいますよ。」

そう言って微笑みかけた。

「…………ありがとうございます。

そう言って、ベッドの上に横になった…

不知火はその部屋を後にした。






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不知火 side






不知火は笑っていた…

「ふふふ… これで私の悲願達成に向けてまた前進しましたね…」

笑いが…止まらない様子だ。

不知火はある情報を耳にしていた。

その情報は、普通の人ならば何のことか分からない、相手にもしないような情報だ。

だが、情報の内容…は勿論、それより…その情報の提供者(・・・)… これが一番確信できるものだった

情報とは… 黒神めだかの情報。そして…それを上回る存在…

情報提供者の言い方によると、



『黒神めだかは勝てない存在だ。1000年に1度くらいは生まれてくる事が有る… まあ 分かりやすく言うと この世が週間少年ジャンプだと言う設定と考えたとして、彼女は所謂主人公なのさ。理屈とか抜きに勝者であることを決められている… 体質?って事かな? だから 考えなくちゃ。そういう絶対値の持ち主を倒す?方法をさ… いろいろ考えているんだけどね 不知火君 僕が悠久の彼方を見て回ったけど… 【彼】さ……。 この僕が痺れたんだぜ?それに惚れちゃった♪ 一目見てさ… 何だろうね?分かんないんだけど 異質…というか変則と言うか…この世のものじゃないって言うか… 大げさじゃないんだぜ?こんな感覚初めてなんだぜ?人外である僕が。 全てを平等と考える僕がさ。 でも、彼の心は…基本(ベース)は ありふれた人間なんだな、』

…黙って聞いていた。普通なら眉唾だ。

だが…彼女が言うのなら話は別。

多少は聞いておかなければ…

『多少は無いだろう?不知火君…』

「いえいえ、冗談ですよ。」

心を読むことなど造作も無い者、だと言うことを忘れていた様だ。



『彼を引き込む事が一番だね。万が一にもさ。もし…できなかったら…めだかちゃんより厄介なことになるからね? まあ 僕も計画はするけど、有る程度は頑張ってくれよ?不知火君。』



それを最後に…その人物は姿を消した。









「あの方が言われることだ。だが…私は私の理念を持ち教育というものを行います。…それを踏まえて…考えてみるとしますか。 プランは私の中では既に出来つつありますからね。彼に頼らずとも…」

そして老人はその場を後にした。



 
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