八条学園怪異譚
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第三十話 神社の巫女その五
「ちょっと歩くだけよ」
「では行くぞ」
うわばみが一同に声をかける、かくして。
一行は神社の中から一旦出てだった、そのうえで。
その裏に来た、そこには倉庫が三つあった。
そのうちの一つの蔵だった、茉莉也はその前に来てから二人に言った。
「ここよ」
「この藏の中ですね」
「そこが泉かも知れないんですね」
「そうよ、ここが十年以上開いていないのよ」
二人に話していく。
「中はどうなってるかしらね」
あの、それはいいんですけれど」
愛実が説明する茉莉也に言う。
「先輩、今も」
「今も?」
「何で私達まだ先輩に抱き寄せられてるんですか?」
「神社の中のままじゃないですか」
聖花も困った顔で言う。
「あの、出来れば今は」
「解放して欲しいかなって」
「いいじゃない、別に」
茉莉也はその二人に平然と返す、やはり二人を離しはしない。
「両手に花でね」
「けれど今から泉に入りますし」
「ですから」
「三人一緒に入ればいいのよ」
こう返すだけだった。
「それでね」
「まあ我慢してくれ」
天狗が二人に後ろから言う。
「お嬢は可愛い娘が大好きなのだ」
「百合じゃなくてもですか」
「それでもなんですね」
「別に肉体関係は求めない」
セクハラはしてもだというのだ。
「そうした趣味はないから安心してくれ」
「いえ、求めるわよ」
茉莉也は天狗の言葉にこう返した。
「浮気は駄目だけれどそれは相手が男の場合だから」
「えっ、じゃあ女の子は!?」
「女の子はいいんですか?」
「当たり前でしょ。女同士だと浮気にならないでしょ」
二人を交互に見ながら楽しげに告げる。
「だからいいのよ」
「あの、私キスもまだですから」
「私もそういうことは経験がないですから」
二人は茉莉也の好色そうな、酒のせいで余計にそうなっている目と顔、それに言葉に心底引いて返した。
「せめてそういうのはちょっと」
「経験してから」
「じゃあ彼氏見つけなさいよ、紹介してあげるわよ」
「ううん、今はそういうお話はちょっと」
「彼氏とかいうのは」
二人は恋愛自体にはまだこう言うのだった。
「ですから先輩とも」
「あの、今も解放して欲しいんで」
「つれないわね。無理強いはしないから」
それはしないというのだ。
「安心しなさい」
「全然安心出来ないです」
「私もです」
二人共すぐに返す。
「襲われそうですし」
「実際にセクハラ受け続けますから」
「全くつれないわね。とにかくね」
「おい、扉は開けたぞ」
うわばみが言って来た。
「早く入れ」
「あっ、有り難うございます」
「すいません」
「礼はいい。御主達には迷惑をかけているからな」
茉莉也を見ながらの言葉だ。目も顔もいい加減にしろと咎める感じだ。
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