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八条学園怪異譚

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第三十話 神社の巫女その二

「あの、今日は」
「神社の中の泉の候補地を探しに来ました」
「こんばんは、青木茉莉也よ」
 今度は少女の方から名乗った、右手を挙げながら言う。
「宜しくね」
「はい、青木先輩ですね」
「この神社の人ですよね」
「そうよ、巫女やってるわ」
 今の格好通りそうだというのだ。
「部活はトライアスロン部、毎日やってるわ」
「トライアスロンですか」
「それをですか」
「趣味はそれとこれよ」
 二人に左手に持っている一升瓶を見せての言葉だ。
「お酒よ」
「らしいですね」
「何かお酒大好きだって」
「毎日トライアスロンやって飲んでるわよ」
 そうしているというのだ。
「いや、人生はお酒よ」
「ですか」
「そうなんですね」
「そうよ、それでだけれど」 
 茉莉也の方から二人に言う言葉は。
「ちょっとこっちに来て」
「ちょっと?」
「ちょっとっていいますと」
「だから、酌して酌」
 こう二人に言うのだ。
「お酒に女の子だと当然の組み合わせでしょ」
「あの、それって何か」
「おっさんみたいなんですけれど」
「おっさん?いいじゃない」
 茉莉也はそう言われても平気だった、それどころか酒に酔った顔でにこにことしtげ相変わらず一升瓶ごと飲んでいる。
「別にね」
「別にって」
「それじゃあ」
「早く酌して」
 また二人に言う。
「こっちに来てね」
「どうする?ここは」
「どうするって言われてもね」
 二人は茉莉也の言葉に困った顔になり顔を見合わせる。
「先輩のお誘いだし」
「断る訳にもいかないしね」
「お酒もあても好きなだけ飲んで食べていいから」
 その赤ら顔での誘いだ。
「さあ、こっちに来て」
「わし等には気を使わなくていいからな」
「お嬢の相手だけを考えてくれ」
 うわばみと天狗はこう言う。
「とかく酒癖の悪い娘だがな」
「相手をしてやってくれるか」
「天狗さん達も言うのなら」
「それなら」
 二人も観念してそのうえでだった。
 顔を見合わせた状態で頷き合いそれから茉莉也のところに来る、すると茉莉也は二人をそれぞれ両手で囲い込んだ。
 聖花が右、愛実が左だった。小柄な身体で両脇に抱え込む様にして囲い込み言う言葉は。
「いやあ、両手に華ね」
「あの、先輩これじゃあ」
「お酌は」
「ああそうね、まあいいじゃない」
 自分で言ったことだが笑顔で打ち消す。
「それは後でね。じゃああんた達もね」
「お酒ですか?」
「それとおつまみも」
「何なら飲ませてあげるわよ」
 一升瓶をごくごくとラッパ飲みしながらの言葉だ、どうして飲ませるつもりなのかは二人にも想像がついた。
 それで愛実が強張った顔で言う、自分の顔と茉莉也の顔はすぐ近くにある。
「私そういう趣味は」
「あれ、キスはまだなの?」
「まだですし」
 それにだと、茉莉也の酒臭い息を嗅ぎながら返す。 
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