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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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出会い
  Trick02_まるで“時が止まった”ように動きませんの



「・たす・・て・・」

路地を進んでいる5人にかすかに声が聞こえた。
その声には恐怖が混ざり、今にも消えてしまいそうな泣き声だった。

「嘘から出た(まこと)、ってか。 笑えね傑作だ」

西折は今までの丁寧なしゃべり方でなく、感情をそのまま口に出して
知人の口癖を借りて悪態をつけた。

その言葉からは急がなければならないという焦りと、敵への怒りが染み出ている。

「御坂さん達は早く引き返してください。これは私の仕事です」

再び丁寧な口調に戻した西折は、後ろにいる4人に言った。

「いいえ、これは風紀委員の仕事ですわ! あなたこそ危ないですから下がった方が
 よろしいですわよ!!」

後ろから追ってくる4人。白井が風紀委員として目の前の事件に関わる気でいた。
他の4人も引き返す気はないと表情に出ている。

西折は4人を見て説得をするのを諦めたのか、前を向いて走り出した。



「いた。

 待ておまえら!! その子を離せ!!」

ようやく子供を連れた男たちが見えた。すぐに西折は叫び警告する。

3人いる不良と思われる男たち。その内の一人の腕に赤い髪の子供が抱えられて
子供は足を振り必死に抵抗している。

そして西折の声を聞いて男たちが振り向いた。

「ちっ! 変なのに見つかっちまったぜ! おまえら足止めしてもう一台の
 車で来い! 俺はガキと先に行く!」

「「おう!」」

先頭を子供を抱えて走っていた男が指示を出して、他の2人が西折たち5人に
振り向き、ナイフを取り出して戦闘態勢をとった。

「時間がないから、すぐに終わらせる」

静かに宣言した西折。

だが、その行動を邪魔したのは誘拐犯ではなく、西折の後ろにいたはずの白井黒子だった。

風紀委員(ジャッジメント)ですの! 児童誘拐の現行犯と銃刀法違反の罪で
 拘束しますわ。どうぞ大人しくお縄についてくださいまし」

白井はレベル4の空間移動(テレポート)の能力者。
その能力を使い西折の前へと“移動”したのだ。

風紀委員としては一般人の西折を戦わせないため、そして犯罪者と言えど説得して
自首をさせるために一番前へと移動したのだ。

空間移動者(テレポーター)だと! 
 くそ、よりにもよってこんな厄介な能力者が来ているんだよ!」

男たちは明らかに動揺した。説得を続ければ諦めて武器を捨てたかもしれない。
もしくは焦って攻撃、その結果は単調な動きで簡単に拘束できただろう。

そう、“時間を掛ければ”可能だったはずだ。

「さあ、大人しくしていただければ痛い目を「時間がないって言いましたよね」 !?」

白井を遮る声が出された。その声は白井の後ろからではなく“真上”から聞こえた。
普通ならばあり得ない位置からの声。白井は驚いて上を見た。

そこにいたのはインラインスケートを使って壁を滑るように移動する西折の姿があった。

さながら、その姿は“空を飛んでいるように”と表現できるほど自由で美しかった。

男たちも含めて、その場の全員が西折の“飛行”に見惚れていたのだが。

「風紀委員として立派かもしれませんが」

西折は男たちの2メートル前に着地し。

「即座に行動する方が優先する必要があることを」

話し終わる前には。

「覚えた方が良いですよ」

男たちの後ろに立っていた。

4人は西折の飛行も含めて瞬間移動に驚いたのだが、男たちの方は無反応だった。
無反応過ぎるくらいに反応が無かった。

「その2人は御坂さん達に任せます。動けないと思うので警備員(アンチスキル)
 通報してください」

そう言って西折は子供が消えた路地の先へと走って行った。
先程、男たちと遭遇するまではインラインスケートの滑りを使わずに走っていたので
御坂達4人は西折の後ろから追って付いてきていた。

だが、今度はインラインスケートを使い、“自転車よりも”速いスピードで走り去って行った。
人の足では追いつけない速度で疾走していった。

「今のはなんですの!?」

驚きの声を発した白井。その声で他の3人も我を取り戻して男たちに警戒した。

西折は“何もせずに”この場を立ち去ったのだ。自分たちでこの暴漢たちを
対処しなければならない。

「く、黒子! 驚くのも分かるけど、こいつらの武器をどうにかして追わないと!」

「そうですわ! あなた方、大人しく武器を! 武器を・・?」

白井は男たちの手に目を向けた。

そして気付いたのだ。先ほどから動かずに変化がない男たちの唯一の違い。

手に持っていたはずのナイフが握られていなかった。

(武器はどこに隠しましたの!?)

白井が男たちの体を見て、隠した武器がどこにあるか服装の変化を探した。
上半身。 下半身。 そして、足元。

足元にナイフが刺さっていた。

それでも男たちは拾う素振りもなく動かなかった。

男たちは先ほどから“全く動かない”でいた。

「どうゆうことですの・・ふざけているのでしたら、いい加減にして頂きたいですわ。
 痛い思いをすることになりますわよ!」

動かないことが白井の警戒心を強めた。

徐々に男たちに近づいたが、それでも男たちに反応の変化はない。

「白井さん、もしかしたら西折さんが何かしたんじゃないですか?
 立ち去るときに『動けないと思うので』とか言ってましたよ」

初春が白井の後ろの方から声を掛けた。

(確かに、そう言っていましたの。しかし・・)

「黒子! 私が確かめる!
 時間がないし、武器を持っていない。掴んできたら電気を浴びせるから大丈夫よ」

「お、お姉様! お待ちください!」

白井の横を抜けて駆け足で男たちに近づく御坂。
白井の停止を無視して男たちのナイフを持っていた、今は拳が握られているだけの
右手に触れた。

「やっぱり動かない。 掴んでも何も反応ないわよ」

「・・お姉様、その人は生きてますの?」

「手首を掴んだけど脈があるから大丈夫。でも、どうやったらこんなことが・・」

「そうですわね。まるで“時が止まった”ように動きませんの・・・。
 初春! 警備員に連絡を! わたくしはあの殿方と暴漢達を追いますわ!」

「はい、わかりました!」

「黒子! あの赤髪の子が心配だわ! 私も行くから急いで!」

「お姉様は止めても無駄ですわね。お手をお借りします。
 瞬間移動で路地を抜けますわ!」

御坂の手を握り白井は消えた。

残された初春は携帯電話を取り出して警備員に連絡をしている。

佐天は警戒心が和らいだからなのか、動かない誘拐犯の顔の前で手を振って遊んでいた。

「お~、本当に何も反応がないね。叩いたら動くかな?」

「佐天さん! 何かの能力で動かなくなったなら下手に触らない方がいいですよ!

 通報は終わりましたから私達も追ってみましょう。路地の出口はすぐそこですし」

「だね! 行ってみよう!」

そう言って走り出した。

直後



キキーーーーーッ!!!!


「何この音!」

「車のブレーキの音みたいですけど・・まさか!」

初春は思い出した。
子供を連れ去った男が言っていた“車”という言葉を。
もしその車の音なら乗っていた子供は・・

「急ぎましょう! 佐天さん!」

「わかった!」

2人は路地の出口へと再び走り出した。



つづく

 
 

 
後書き
作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。

皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。 
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